彼女が僕たちソーディアンの声を聞くことが出来ると知って
嬉しかった────
ソーディアン-シャルティエの独白
記憶がないという
。
坊ちゃんは、彼女を必要以上に警戒しているようにも見えた。
もちろんそれもわからないでもないけれど。
坊ちゃんから彼女としゃべるなと言われた後は、なんだか釈然としない気分でもあった。
別に、会話に加わらないことは構わなかったんだ。
マスター同士が話している時でも、僕たちソーディアンは大抵傍観しているし。
だけど
はディムロスやアトワイトが会話に加わると必ず、僕のほうを気にかけていた。
マスターではなく、僕自身を。
むしろ、無視しててくれれば僕も「ただ黙って」れば良かったんだ。
ソーディアンなんて一般的には「剣(もの)」な訳だし。
ソーディアンの僕が言うのもなんだけど、普段は存在を意識しないことの方が多くて当然なんじゃないかと思う。
意味は違えどマスターにとっても一心同体というのは、そういうことでもあるのだと。
それなのに…目が合う、とでも言うんだろうか。
にはわからないかもしれないけれど僕から見るとそういう表現に間違いは無いと思う。
ちゃんとここにいることを理解してくれている。
そうするとやっぱり話したくなるもので。
どーしても話したくて話したくて、なぜかそれがわかっているのか
が坊ちゃんに「僕を貸せ」といってくれたときはうれしかったね。
でも、本当に嬉しいと思ったのは実はそれより少し前の話。
少しだけ、意味も違う。
「どうしてお前はあいつとしゃべりたがるんだ」
坊ちゃんはそう言うけど嬉しかったんだよ。
僕の声が聞こえる人がいてくれて。
マスターじゃない。
だけど坊ちゃんと同じように僕の声が聞ける誰かが居ること。
坊ちゃんと、何かを共有できる誰かがいるということが。
最近、少しだけ坊ちゃんの気持ちにも変化が出てきた気がする。
それはほんの少しだけの興味に過ぎないんだけど…
何気に
の背中を目で追ってるんだよね。
こんなこと言うと怒られるから僕が気づいていることは内緒。
多分本人も気づいてないし。
それは、ただの好奇心かもしれない。
それともなぜ、という疑問かもしれない。
人間関係としての興味が成り立っているのか正直疑問なんだけど
例えほんの少しの関心でも…
僕はやっぱり嬉しいよ。
まぁアレだけ色々やらかしてくれれば興味を持たないほうがおかしい気もするけど。
目立つことが嫌いなようなのに不思議と目につくというか…
元々坊ちゃんも好奇心がないわけじゃないからね。
特に知的分野に関しては。
だから触発されたところもあるのかもしれない。
なにしろ彼女自身も人以外のことにはかなり興味が深いようだから。
…反面、人に対する関心が薄い気がするのは…
多分気のせいじゃないだろう。
でも、それが坊ちゃんにとっては深入りされずに幸いなのかもしれない。
それでもって坊ちゃんのこともやりこんだりするし、結構見ていて楽しい。
一度、2人きりで話してみたいな、そりゃもう坊ちゃんのこととか(笑)
あ、これ、僕個人的な「嬉しい話」に戻ってるね。
まぁそれは当面の楽しみということで。
しばらくは、この先訪れるだろう未来図も、任務も忘れて
現状を見守っていこう─────