君ら何回同じことをすれば
気が済むんだい…………?
続・命の天秤
「だから手加減しろよ!あれじゃ皆死んじゃうだろ?」
「誰が死のうと僕には関係ない。第一、殺らなければ殺られるだけだ」
「だからどうしてわざわざそういう言い方するんだよ! 他にやり方だってあるだろう!?」
「だーーーー!!!いい加減にしろぉっ!!!」
ちょっと目を放した隙にまた問答を始めた2人。
こと、人の命に関しては譲らない(というかスタン、相手にされてない)ので白熱しがちだ。
でもリオンは先ほどの衝突からできる限り殺さないように気は使っているわけで。
気づけよ、スタン。
リオンも素直に弁解くらいしろよ。
さすがに同じやりとりを日に2度見せられたはとうとう切れた。
「でもっオレたちの目的は殺戮じゃなくて…っ」
「それはさっき聞いた」
「だって皆殺しがいいとは思わないだろう?」
…某有名シミュレーションゲームで、経験値稼ぎのために敵の増援囲って、
レベルを上げた最強の軍のモットーはきっと「皆殺し」だったろう、なんて口が裂けても言えない状況だ。
「だからスタンは、できるだけ傷つけないように戦え、と」
「うん。だって、傷つかないならそれに越したことがないだろう?」
険しい顔をしたまま沈黙したリオンを横目には溜息をつく。
だからね、リオンはもう殺さないように気をつけてるよ、って言えば済むことなのですが。
それでは私の気が済まぬ。
ここはひとつ、きちんと話しをつけるべきでしょう。
「でも、相手を傷つけないように戦うって言うのは難しいね」
「え?」
「相手より強くなければ出来ない。向こうは本気で狙ってくるんだから。
スタン、それ私に同じことを言われたらできない」
それはリオンがスタンの意見に反目するのとは違う意味。
けれど言わんとしていることにスタンはすぐに気付くはずだ。
気づく前に言うが。
「もし、相手を仕留められなかったら私は殺される。
それでもギリギリまで相手を思いやってなおかつ傷つけるなと…?」
「そ、それは…」
相手を傷つけずに退けるなど余裕のなせる技だ。
むしろ、技量如何では己の惨状が待っているだろう。
そこまで考えていなかった。
スタンは自らの底の浅さに気付くと今日何度目か口篭もる。
でもそれは、どこまでも素直で、まっすぐな証拠でもある。
言い方を変えると単に馬鹿で素朴で直情で田舎者の証明と もいえる。
まぁともかく一度気付けば、彼はそういう考え方もあるのだと素直に受け入れるだろう。
だから深追いはしないことにした。
その代わり、うやむやでもいいからそろそろ丸く収まってもらいたい。
「まぁ…
スタンはリオンを信用しているからそう言ったんだよね?」
「…え?」
そこまでもおそらく自分で突き詰めていないだろう。
の発言は唐突だ。
「最初から私が相手ならそうは言わなかったでしょ。
それはリオンにそれなりの技量があると認めていて、それをやっても危うくないから。
自分の背中を預けている人間が倒れたら話にならないし、なおかつ追撃も抑えられる自信があるから。それは、信用してる証拠じゃない」
スタンのみならずリオンも拍子が抜けたようにぱちくりと瞬きをする。
間抜けた瞬間。の1人勝ちだった。
「…馬鹿か。こいつがそこまで頭を回すわけがないだろ」
「そんなことない。スタンはリオンを信用している。親友といってもいいくらいに。」
嫌がるのが目に見えているのであえてそんな言葉を使って断定してみた。
「気色の悪いというな!」
「そうだよ、オレ、リオンなら大丈夫だって思うんだよ。やればできるよな!?」
自分の気持ちに気付いたのだが、上手く使われたのだか微妙なところで、にこやかに笑うスタン。
…しかもその子供に向けるような精神年齢の低そうな発言は一体…
こうなるともうリオンは呆れるしかない。
本日2回目というシチュエーションが更に追い討ちをかけてもいた。
ただの呆れは通り越して呆れ果てている境地だ。
…つきあいきれん…
「確かにリオンくらいの技量だったら腱を狙うくらいのこともできるよね。」
「…。」
それも何気に怖い発言だ。
スタンの発言に苦笑を落としかけたは気を取り直したようにリオンを振り返った。
の心中など知らないリオンは相変わらず弁解なしの知らんふりである。
「あんな未熟者どもに遅れをとるわけないだろう」
「というか、さっきから既に実践済みなんだけどね?」
「えっ?」
スタンの間抜けな顔がリオンを見て、それから来た道を見回して…
もう一度リオンを見たときには気味が悪いくらいの笑顔になっていた。
「リオン~」
「う、うるさい!足手まといが増えたんだ。雑魚の後始末まで構っていられない」
「…それって私のことですか」
のつっこみには触れずふいっとマントを翻して先に歩き出す。
その背中を見ながらこっそりとスタンはに耳打った。
「て凄いよね」
「何が」
「あの状況でリオンの機嫌直しちゃうんだからさ」
「…」
それ、何か違うんじゃないですか?
言うなれば。
「喧嘩両成敗ってとこかね」
3回目やったらどうしてくれよう。
ルーティたちとの合流を前に、余裕が出てきたのかそんなことも考えている自分が居る。
でも、まぁ…
双方が納得して理解できるならそれがいい。
平行線も角度を少しだけいじってやれば、いつか必ず交差するのだから。
それがほんのわずかでも、意味が無いわけではないだろう。
「何をしている、行くぞ」
リオンが振り返って待っている。
「待つようになっただけでも、大した進歩だよな?」
スタンとは密かに笑いあってその後を追った。
気が済むんだい…………?
続・命の天秤
-鈍感と意地の張り合い-
「だから手加減しろよ!あれじゃ皆死んじゃうだろ?」
「誰が死のうと僕には関係ない。第一、殺らなければ殺られるだけだ」
「だからどうしてわざわざそういう言い方するんだよ! 他にやり方だってあるだろう!?」
「だーーーー!!!いい加減にしろぉっ!!!」
ちょっと目を放した隙にまた問答を始めた2人。
こと、人の命に関しては譲らない(というかスタン、相手にされてない)ので白熱しがちだ。
でもリオンは先ほどの衝突からできる限り殺さないように気は使っているわけで。
気づけよ、スタン。
リオンも素直に弁解くらいしろよ。
さすがに同じやりとりを日に2度見せられたはとうとう切れた。
「でもっオレたちの目的は殺戮じゃなくて…っ」
「それはさっき聞いた」
「だって皆殺しがいいとは思わないだろう?」
…某有名シミュレーションゲームで、経験値稼ぎのために敵の増援囲って、
レベルを上げた最強の軍のモットーはきっと「皆殺し」だったろう、なんて口が裂けても言えない状況だ。
「だからスタンは、できるだけ傷つけないように戦え、と」
「うん。だって、傷つかないならそれに越したことがないだろう?」
険しい顔をしたまま沈黙したリオンを横目には溜息をつく。
だからね、リオンはもう殺さないように気をつけてるよ、って言えば済むことなのですが。
それでは私の気が済まぬ。
ここはひとつ、きちんと話しをつけるべきでしょう。
「でも、相手を傷つけないように戦うって言うのは難しいね」
「え?」
「相手より強くなければ出来ない。向こうは本気で狙ってくるんだから。
スタン、それ私に同じことを言われたらできない」
それはリオンがスタンの意見に反目するのとは違う意味。
けれど言わんとしていることにスタンはすぐに気付くはずだ。
気づく前に言うが。
「もし、相手を仕留められなかったら私は殺される。
それでもギリギリまで相手を思いやってなおかつ傷つけるなと…?」
「そ、それは…」
相手を傷つけずに退けるなど余裕のなせる技だ。
むしろ、技量如何では己の惨状が待っているだろう。
そこまで考えていなかった。
スタンは自らの底の浅さに気付くと今日何度目か口篭もる。
でもそれは、どこまでも素直で、まっすぐな証拠でもある。
言い方を変えると単に馬鹿で素朴で直情で田舎者の証明と もいえる。
まぁともかく一度気付けば、彼はそういう考え方もあるのだと素直に受け入れるだろう。
だから深追いはしないことにした。
その代わり、うやむやでもいいからそろそろ丸く収まってもらいたい。
「まぁ…
スタンはリオンを信用しているからそう言ったんだよね?」
「…え?」
そこまでもおそらく自分で突き詰めていないだろう。
の発言は唐突だ。
「最初から私が相手ならそうは言わなかったでしょ。
それはリオンにそれなりの技量があると認めていて、それをやっても危うくないから。
自分の背中を預けている人間が倒れたら話にならないし、なおかつ追撃も抑えられる自信があるから。それは、信用してる証拠じゃない」
スタンのみならずリオンも拍子が抜けたようにぱちくりと瞬きをする。
間抜けた瞬間。の1人勝ちだった。
「…馬鹿か。こいつがそこまで頭を回すわけがないだろ」
「そんなことない。スタンはリオンを信用している。親友といってもいいくらいに。」
嫌がるのが目に見えているのであえてそんな言葉を使って断定してみた。
「気色の悪いというな!」
「そうだよ、オレ、リオンなら大丈夫だって思うんだよ。やればできるよな!?」
自分の気持ちに気付いたのだが、上手く使われたのだか微妙なところで、にこやかに笑うスタン。
…しかもその子供に向けるような精神年齢の低そうな発言は一体…
こうなるともうリオンは呆れるしかない。
本日2回目というシチュエーションが更に追い討ちをかけてもいた。
ただの呆れは通り越して呆れ果てている境地だ。
…つきあいきれん…
「確かにリオンくらいの技量だったら腱を狙うくらいのこともできるよね。」
「…。」
それも何気に怖い発言だ。
スタンの発言に苦笑を落としかけたは気を取り直したようにリオンを振り返った。
の心中など知らないリオンは相変わらず弁解なしの知らんふりである。
「あんな未熟者どもに遅れをとるわけないだろう」
「というか、さっきから既に実践済みなんだけどね?」
「えっ?」
スタンの間抜けな顔がリオンを見て、それから来た道を見回して…
もう一度リオンを見たときには気味が悪いくらいの笑顔になっていた。
「リオン~」
「う、うるさい!足手まといが増えたんだ。雑魚の後始末まで構っていられない」
「…それって私のことですか」
のつっこみには触れずふいっとマントを翻して先に歩き出す。
その背中を見ながらこっそりとスタンはに耳打った。
「て凄いよね」
「何が」
「あの状況でリオンの機嫌直しちゃうんだからさ」
「…」
それ、何か違うんじゃないですか?
言うなれば。
「喧嘩両成敗ってとこかね」
3回目やったらどうしてくれよう。
ルーティたちとの合流を前に、余裕が出てきたのかそんなことも考えている自分が居る。
でも、まぁ…
双方が納得して理解できるならそれがいい。
平行線も角度を少しだけいじってやれば、いつか必ず交差するのだから。
それがほんのわずかでも、意味が無いわけではないだろう。
「何をしている、行くぞ」
リオンが振り返って待っている。
「待つようになっただけでも、大した進歩だよな?」
スタンとは密かに笑いあってその後を追った。