バティスタを尋問した部屋って
一見ごくごく普通の一般部屋だよねぇ?
イレーヌさん家のナゾ
はレンブラント邸の2階でじっと目の前の扉をみつめていた。
端の部屋へ向かうための廊下の途中なので人通りは無い。
「あら?
さん。どうしたの?」
静かな空気の中やがて声をかけられて振り向くとそこには邸宅の主がにこやかに立っていた。
「あ、イレーヌさん。この部屋…」
バティスタが尋問されていた部屋である。
今は発信機をつけたまま泳がせているのでもちろん空き部屋である。
が。
「あぁ、そこは衣裳部屋なのよ。入ってみたら?」
え?つい昨日入ったばかりだから中は知ってるんだけど…
それを知っているはずなのに、そういうイレーヌの言葉に
は一瞬違和感を覚えたがそれより早くイレーヌはドアを開けた。
「ほら、服がたくさんあるでしょう?」
大きなドレッサーに、壁沿いにかけられた色とりどりの服。
「でも、そんな部屋を尋問になんて使っちゃって…すみません」
「あら、いいのよ。そんなこと。
あ、あなた!ちょっといつものお願いね」
の背中を押しながらイレーヌは視界に入ったメイドにそう告げた。
?いつもの?
パタン、ガチャっ
「!?」
「ほら、この服なんかオーダーメイドの一品なのよ♪」
後ろ手に扉を閉めたイレーヌは うふふ、と何事も無いかのように壁際へ歩み寄る。
っていうか…
今、カギかけられませんでしたか-----!!!?
そうなのである。
この部屋、「外から鍵がかかるけど中からは開けられない」一般邸宅の一室にしては世にも不思議な つくりなのである。
バティスタの尋問後に気づいた事実だ。
なんでそんな部屋があるのか
は不思議でならなかったわけだが。
「
ちゃん、これなんかどうかしら?」
ちょっと待て。
ちゃんって言った?今。
ついさっきまで
「さん」だったよね?
イレーヌさん、どーいう風の吹き回し!!?
正体不明の不安に襲われつつ
は曖昧な笑みを返すしかない。
「どうと言われても…」
「あら、お姉さんがせっかく服を見立ててあげようって言うのに感想のひとつももらえないのかしら?」
うっわ!これって黒ってヤツ!!?
はじめて遭遇しちゃったよ!!!
微妙に仮面のはがれてきたイレーヌの微笑みに恐怖を覚えて
は思わず後ずさった。
「そ、そんなことはないんですけどホラ私、あまり女の子らしいカッコしないんで…!!」
「あらあら、そーいう子に限って着飾らせるとメチャク チャかわいかったりするのよね♪
ホントははじめて見た時からかわいいわぁ、なんてお姉さんトキメいちゃってたのよ。
だって、リオン君たちのパーティではちょっと異色な感じだったからv
なんていうかこう…私の想像力をかきたてて止まないのよっ
もう、この罪なお・ん・な・の・子vv」
「し、失礼しますっ!!」
あわててドアノブに手をかけるが当然と言うべきか
開かない。
助けてマリオっ(誰)
「もうっダメよ?
リオン君は 顔出せっつってんのに来やがらないし、皆 コ忙しそうだし
お姉さんちょーっとストレス貯まっちゃってるのよ。
ね、少しだけつきあってvv」
マッハスピードで詰め寄ってきて両手を握られた。
そんな華を背をいつつ、その言葉遣いで笑顔でせまられても。
「勘弁してくださいっ」
「まだ言うか、この子猫ちゃんv
これ以上拒否すると一生この部屋から出してやらないんだからね♪」
人、それを監禁と呼びます。
「さぁ、時間はたっぷりあるわよぅvv」
「や、止めてください~!!!」
おまけに完全防音処理の施された部屋からは、世にも珍しい の悲鳴が仲間たちに聞こえることは無かった。
* * *
1階の客間の前を通りかかったリオンはそこに見慣れない少女の姿をみつけて足を止めた。
黒い髪に白い清楚なワンピース。
胸元を飾る黒いリボンにブラックオキニスとモノトーンな装飾が白い肌とあいまってコントラストをひきたてている。
いかにもいいところのお嬢様といった風情の華奢な少女を前にリオンの足は動かない。
つい、と少女がリオンを振返った。
どこか物憂げな黒い瞳。その瞳がリオンの姿を捉えて微かに驚きに見開かれる。
それが
あぁあああぁあ!!!頼む。
こっち来ないでくれ!!!
などと思っている
だとリオンが気づく由は無い。
それくらい完璧な「女装」だった。
話しかけないでっ!!早く去れ!!
間が持たずに首をめぐらせて外の方を見る。
背中を向けている。
それはそれで彼が次にどう出るのかがわからずなにやら怖いものを感じないでもないが。
が長い黒髪のウィッグをつけているせいでお互い表情をうかがい知ることはできない。
「あら?リオン君」
ふいに遊ぶだけ遊んでこの部屋に
を放置していたイレーヌの声がした。
「どうしたの…とあらあら。あの子に見ほれていたのね?」
「なっイレーヌ、僕はっ!!」
「照れなくてもいいのよ。
そりゃもうかわいい子でしょう。否、むしろかわいいと 思わなければおかしいのよ?
私もそう思うわ」
にっこり。
言ってる言葉が支離滅裂です。イレーヌさん。
現れた当初は白い感じにも思えたが彼女はまだ、先ほどのお楽しみで感情が高ぶっているかのようだった。
見事にリオンがだまされているのを見てそれはもう満足そうに笑みを湛えている。
うろたえるリオンを遠い目で見ながら
は生ぬるい笑みを浮かべた。
それがどうやらリオンには「儚い微笑」に見えているらしい。
ちらと見てから戸惑うように視線をはずすその様が…なんと珍しい光景か。
ただ単につかれちゃってるだけなんだけどね、私は。
もうなんとでもしてください。
なんて半ば投げやりに心の中でイレーヌに行く末を任せたのがまた間違いだった。
「リオンにイレーヌさん。こんなところでどうしたんですか?」
「スタン君。…あっ!!!vv」
相変わらずお気楽そうなスタンを見て何か思いついてしまったようです。
「ねぇ、ちょっと手を貸して欲しいことがあるの。いいかしら?」
「え?あ、はい!オレでよければ」
やめとけスタン!!
「じゃあ…一緒に行きましょ。
あなたもよvv」
私もか。
おびえの表情を走らせた瞬間、
の身柄はイレーヌの小脇にがっちり確保されていた。
「ちょっ…イレーヌさんっ!!」
「リオン君は待っててね~v後で目に物をみせてあげるわ!!」
顔出せってのに来やがらないことを根に持っているのか ナチュラルにいい間違えていた。
その後、長く美しい髪を活かしてスタンは金髪美女に、
は世のお姉さま方のツボをつきそうな少年剣士の姿に着替えさせられ
例の部屋で日が暮れるまでナゾの撮影会が開催されていたとかいな いとか------------