潜入!ハイデルベルグ城
「ふーむこんな仕掛けがあるとは、忘れていたな」
この天然系めっ!!
ハイデルベルグ城にて、眼下に見える装置を前に足止めをくらってしまった一同。
あれを動かしてゴンドラを作動させなければ時計塔へはいけない。
自分の城じゃないのか?ここは。
城の主がいるというのにさっきから散々迷ったり遠回りしたり。
挙句、神の眼を目前にして足止めとは全くやる気をなくさせてくれる出来事である。
「じゃあ戻ろうか」
はぁ、とスタンが溜息をついて今来た道を戻ろうとする。それをリオンがとめた。
「わざわざ全員で戻る必要はない。」
とはいえここへきてモンスターの攻撃も苛烈になってきている。
誰を組ませて行かせようかと考え始めた矢先に が唐突に役を買って出た。
「じゃあ私が行く。後で回収してくれればいいから、待ってて」
とはいえかなり遠回りだ。目の前に見えているのに。
「もうっ世界を放蕩する前に自分の城くらい探索しとけっ!!」
ぶっちゃけ一言言い放って、珍しく短気を起こした様子で はばっと元来た道を駆けていった。
「 、ウッドロウさんには厳しくないか…?」
「はは、いいのだよ。彼女のようにはっきりいってくれる人間は希少だからね」
グレバムはもうすぐだというのにのほほんと言葉を交わす2人の前で呆気にその背中を見送ってしまったルーティとリオン。
「ちょっと…いいの?1人で行かせちゃって」
「いいわけないだろう!お前たちはここに居ていい、見える範囲でモンスターが出たら晶術でフォローしろ!」
あわててリオンがそれを追う。
一度階下へ降りて角を曲がると案の定 はクレーゴーレム複数体とクレリックに足止めされていた。
遠距離から先手がとれなかったのか剣で立ち回っている。
リオンは、晶術で に狙いを定めるクレリックを切り捨ててその隣に駆けつけた。
「リオン!」
とどこか嬉しそうに笑みを向ける と入れ替わり様、前衛に踊りでる。
敵はあと2体。
リオンは後方のクレイデーモンにターゲットを絞った。
がすばやくホルスターから銃を取り出して単発弾でその前に立ちはだかるクレイデーモンの翼を打ち抜いた。
「虎牙破斬!!」
通路に落ちたクレイデーモンの手前で跳躍して残りの一体に斬撃を加える。
モンスターは悲鳴を上げてそのまま下の通路に落ちていった。
「…。何回目だ…?」
銃撃にもがくデーモンにとどめをさしてその場で呟くリオン。
「え?」
その背中に怒気を感じて思わず はなぜか口元に笑いを貼りつかせて後ずさった。
無造作にシャルティエを突き刺した様に静かなやつあたりを感じないでもない。
「…何回めだといったんだ。
お 前 は 自 分 が 抜 け 出 し た 回 数 も 覚 え て い な い の か。」
「…」
いつにない責めように はさっと顔を逸らす。
いつから立場が逆転してしまったんだろう。
それ以前に、確かにこんなところで単独行動は浅はかの極みだった。
いくらあの天然王太子(今は王様)の マイペースさに短気を起こしたとは言え。
今頃気づいた。
「で、でも今回は別に興味本位ではなく---」
「うるさい。もう僕から離れるな」
へ?
一瞬意味を図りかねる発言に は呆気にとられるとリオンは背中をむけてさっさと先へ進んでしまう。
『坊ちゃん、離れるなといいながらさっさと1人で進んじゃうのはどうかと』
「黙れ」
自分でも深く意味を考えず発した一言を撤回もできずリオンはシャルティエを短く一喝する。
『もうっ素直じゃないんだから』
「…おかしな意味にとるな。語弊のある発言をしたことは認める。
だがな…
いいか?ここは敵地なんだぞ?ここを上りきればグレバムがいるんだぞ?
そんなところであの天然放蕩王子に短気起こして単独行動する馬鹿がいるか?
こんなところまできてガキのお守りをすることになろうとは…
今からティアラをつけて行動を規制してやりたいくらいだ!」
本人がいることを忘れているかの如く、すごい言われようだ。
『でも坊ちゃん。それやっぱり心配でしょうがないです、って言ってるようなものだから』
「どうしてそうなるんだ!」
『しゃべりすぎです』
シャルティエにしゃべりすぎなどといわれたリオンは絶句 している。
相当ショックだろうな、うん。
そういうことは本人いないときに話してください、と思いつつ は後ろから2人(?)を観察していた。
『坊ちゃん?』と何度か呼ばれても返答なし。
それからすっかり沈黙してしまったリオンの肩に はそっと手を置いて微笑んだ。
半分哀れみの表情を浮かべて。
「元気だしなよ?」
「…誰のせいだと思ってるんだ…?」
わずかな間ののち思わず笑い。
耐えられませんでした、ごめんなさい。
「お前ら、いい加減にしろっ!」
腹を抱えて笑う とリオンの様子を、会話の聞こえないルーティたちは首をかしげながら見下ろしていた。