で、あれはミクトランなのだろうか、ヒューゴなのだろうか。
気になって気になってしょうがない。
なぜか
は今日もヒューゴとお茶をしていた。
続・FAMILY GAME
「お前、よくこうつきあえるな」
その後ろに控えたリオンが口を開く。
朝からもう開き直りモード全開だ。
数日前に一度
の前で切れた上に、本当に不本意だが仮にも父親が
に暴露話をした現場に居合わせたせいかもしれない。
それ以来、3人揃うとこんな調子だった。
「じゃあリオンはどういうつもりでここにいると?」
「…命令だ」
どんな。
一瞬図りかねたが、明らかに不本意そうな彼の顔を見ると本当に「命令」なのだろう。
…マリアン人質にとってお茶につき合わせるとはなかなか豪気な人である。
「君は家族のようなものだと言ったろう?
…エミリオ。お前がこの間出て行った後、彼女は私を慰めてくれたんだぞ?」
「…」
なんだかわからないが必要以上に気に入られてしまっているようだ。
リオンからは物凄く嫌そうな顔を向けられたので
は静かに首を振った。
それで「あぁ、ただの妄想解釈か」と言うことになる。
同時に漏れる溜息。
「ところで…」
は訊いてみることにした。
「もし天上王ミクトランがいたら、リオンて部下に欲しがると思います?」
ブハッっ
さすがのヒューゴ様も紅茶を噴出した。
何も知らないリオンの方がずっと冷静な反応だった。
「なぜそこで僕が出てくるんだ」
「だって有能だからさ」
「は、ははそういう意味か。1000年も前の人間のことなんて急に言うから驚いたよ」
といいつつ思い切り動揺をしているあたり、微妙だ。
だからどっちなんだこの人は。
じっ、と
にみつめられヒューゴはコホン、と咳払いをした。
「ミクトラン…か。そうだな、彼だったらリオンも欲しがるだろう」
「なぜ僕が」
「だから言ってるだろう?有能な上に見栄えも良くて使い勝手がいいのだから文句はないだろう!」
「…反抗的なのは?」
「それもまた一興だ。当面マリアンがいるから問題ない」
ぶちり。
リオンが切れる。
2人はまたどーでもよさそうな言い合いを始めてしまった。
ところで最後のセリフ、どう考えてもミクトラン側の発言だよね。
「やっぱり男手一つで育てると…愛着が湧くものですか」
「そうだな。それもあるが…やはり家族と言うのは良いものだ。…特に見栄えが良くて有能な────」
「ボキャブラリが貧困すぎるぞ。それで本当に大企業の総帥か?」
つまりミクトランは面食いで、ついでにリオンも育ての親としてそれなりにかわいがっている(つもりらしい)と。
愛着が湧くなんて普通家族には使わないものだが、その齟齬に気づいていないあたりやっぱり彼はミクトランらしい。
それ以前に、どんなにがんばって愛情表現しても「駒」としての認識が必ず伴うところも天上王かな、なんては思っていたのだけれど。
とりあえず天然系ジャイアニズムの持ち主だということは解った。(いや、そんなこと解っても)
ジャイアニズム:
タケシ・ゴーダを祖として称される「お前のものはオレのもの、オレのものはオレのもの」的考え方をモットーとする人生を最も楽しんでいけそうな考え方。
唯我独尊な王様思考と言う意味ではまさしく天上王にぴったり。
「大体貴様に育てられた覚えなどないぞ」
「そうだな、確かに世話は従者やメイドに任せたかもしれんが、私は影でひっそりこっそりお前の成長を楽しみにしていたんだ」
「ウソをつくな!」
「ウソではない!!…きちんと成長記録のアルバムもとってあるぞ!!」
「……………#」
スチャリ、とヒューゴがどこからか手に取った分厚いゴシック調な冊子をすかさずリオンは無言で切り捨てた。
「あぁっ!なんてことを!!」
それ、巻の17って書いてあったから、最低あと16回シャルティエを振るうことになると思うよ…?
ミクトラン、現世でしっかり家族ごっこも楽しんでるんだね…
ヒューゴをのっとった、というよりも(ヒューゴ+ミクトラン)÷2の構図が見え始めた日であった。
『ミクトランは面食い。有能な人間が好き。』
故に、自分もその一員に加えられているとは気づかずに────…
了