キャラと夢見る20のお題
-リオン単語編-
01 異世界 or 旅
私のいた世界を君たちは知らない。
それってフェアじゃないかもしれないけど私、最初に言ったよね。
「異世界から来たっていったらどうするよ」
真に受けてもらえなかっただけで何も嘘はついてない。
さて、この真実に君らが気づくのはいつだろう?
02 出逢い
それは瓦礫の街での出来事だった。
瓦解を免れた門の前。冷たい雨に打たれまいと身をちぢこませているあの時の猫。
「リオン、連れて帰っていい?」
「連れ帰るも何もここはもう敷地の一角だぞ」
それは肯定。
そうして私たちは連れて帰った。
あの時のように濡れている君を。
03 「リオン」
「リオンリオンリオーーン」
がいつにないテンションで…もとい、いつもどおりのテンションで呼んでいた。
特に緊急性もない声なのに何なのだ、その呼び方は。
「なんだ?」
「呼んでみただけ」
「……」
時々全くもってわからない。
後から来たのは軽い苛立ちだった。
「なぜ用もないのに呼ぶ#」
「楽しませようと思って」
「…?」
「自分を」
「#」
それが今となっては時折おこる日常。
04 瞳
船の中でも宿ででも、時間が余るとリオンは本を呼んでいることが多い。
同じ部屋のベッドの上で
はそんなリオンをひたすらにながめていた。
「…何を見ている」
「別に」
見られていると気づくと落ち着かないのかリオンは聞いてきたが、またすぐに読書に没頭するのだった。
彼の瞳の色は変化する。普段は深いアメジストの色なのに光が入ると驚くほどやさしいすみれ色。
そんなリオンを見るのが好きだった。
知っているだろうか?
好きなものを見るのに飽きるなんてことはないんだってこと。
05 キャラクター
キャラクターとは正しくは、「特徴」「性質」という意味を持つ。でも流布している意味はちょっと違うような気がしないでもない。
例えばキャラクターとして説明しやすいのは…シャル?
『ねぇねぇ聞いてよ、坊ちゃんてば酷いんだよ。僕がうるさいから少し静かにしてろって!』
うん、時々その気持ちはわかる。
『そんなことないよね、これくらい普通だよ。だいたい目の前に人が居るのに黙ってる方がなんだかきまずい感じもするし。あ、坊ちゃんの場合は違うんだけどね?もう慣れた関係っていうの?どこでしゃべればいいかそりゃもうしっかりわかってるよ』
じゃあなぜ彼は怒られたのだろうか。
『それに僕だってたまにはしゃべりたいんだよ。
、聞いてくれる?』
とりあえず、シャルはこんなキャラクター。
06 仲間
「リオンと同じ年齢のとき、私は旅に出たいと思った」
唐突だった。
「お告げがあって仲間たちと一緒にめくるめく世界の旅が始まるんだって16の誕生日の前日まで思ってた」
「ちょっと待て、今の話はどこまで本当なんだ」
つっこみどころが多彩で軽く混乱をただそうとするリオン。残念ながら
はそれには答えてくれなかった。
「お告げはともかく仲間っていいよね」
「誰をどう捉えてそういっているのかわからんが僕は馴れ合うつもりはない」
「連れないなぁ」
ちょっと落胆したように肩を落として見せる
。
「それでもリオンも仲間だよ。大切な、ね」
「……」
答えはどういう意味でか、返っては来なかった。
07 戦い
の剣の腕はなかなかなものだとリオンは思う。筋が良いといえばそれまでだが、打ち込まれるその瞬間の積み重ねが嫌いではなかった。
しかし、付け焼刃。まだまだ実戦に投入など考えられもしない。
それでも冴えるような剣戟は、リオンにとってさえ心躍る刹那をもたらしてくれる。
だが、そんなことをリオンが言うはずもなく。
「まだまだだな」
かろうじていえるのはそんな言葉だった。
08 笑顔
はあまり笑わない。否、人当たりが悪いかといえば(機嫌が悪いとき意外は)悪くはないだろう。ただ見せる涼やかな笑みは多分、心の底からの笑顔とは少しだけ性質を異にしている気はした。
いつからだろう。それが本当の笑顔にとって代わったのは。
例えば、コスモスを船上から散らす君
仲間にいたずらをしかける君
そんな姿を見られるのは「死んだ後」なんてまるで冗談のようだった。
09 剣
ソーディアンの声が聞こえるのは幸いだった。
でも、普段はあまりしゃべらない彼らのことが気になって、大抵船の中では机の上やらに放置されている彼らとは良くしゃべった。
しゃべるのが高じて、オセロまで始めてみたりしてなかなかソーディアンの面々には好評だった。
『そこじゃないっその隣のマスだ!』
「ここ?」
『違うっ右となりだ』
「…こっちかな」
ディムロスが一番熱くなっていた。
10 未来
未来ってどんなもの?
時々わからなくなる。
今の積み重ねには違いないのだろうけれど、決まっているとかいないとか。不安定であることも間違いないんだろう。
だから。
「安心しろグレバムに明日はない」
そんな君の明日がいつも更なる未来に向かえるように
今はただそれだけを願っています。
11 運命
「僕は、何度でも同じ道を選ぶ」
昏い洞窟に響く、悲痛な宣言。
誓いの剣は震えることなく私たちに向けられていた。
誰よりも聡明で、強くて、脆くて、けれどどこか誇らしい。
それは君が君であるための宣誓。
どうしようもない一途さが、いとおしくもあり…
けれどこちらの手は届かない。
いつになったら届くんだろうね。
届かないこともわかってる。
けれどいつの日か届くように。
そんな想いで私はここまでやってきました。
どうか、今でなくてもいい。
失われる未来の最中でもいい。
いつの日にか
届きますように
12 裏切り
君は裏切りと言うけれど、誰もが君を信じてた。
「僕は許されない」
君が裏切ったと思っている人たちはもう許している。
「一体誰に許されたいの?」
「……僕は…」
誰が許しても、きっと彼は自分を許さない。
ああ、なんて顔をしているんだろう、君は。
許されないことを知っていながら後悔しない道を選んでしまった君。
「私はあなたを許せない。
だって裏切られてなんかないから」
はじかれたように顔を上げる。
どうしたら君は自分を許す日が来るだろう。
私は裏切られてなんかいない。
だから安心して欲しい。
ずっとずっと私は君の味方だから。
13 涙
涙の数だけ強くなる、なんて言葉があるけれどじゃあ泣かない人はどうすればいい?
そう君に聞いたら
「そんなこと僕に聞くな」
と怒られた。
シャルティエが言うには「泣くのを我慢した分だけ幸せになれるよ、きっと」と
笑いながら答えてくれた。
だったら私もリオンも幸せになれるだろう。
いつか来るそんな日を信じたい。
14 想い人
「僕は甘いものなんて好きじゃない」
そうですか。
でも私は知ってます。
だからだろうか、余裕なのは。
「まぁいいから食べようよ」
目の前に置かれたのはアフタヌーンティーセット。
ケーキも付いた黄金のコラボにリオンは虫の居所が悪かったのか意固地になっていた。
知ってるよ。
甘いものが平気なことも君の想い人も。
これを作ってくれたのが彼女だと知れば断るすべもないだろう。
「……」
結果、それを言うと黙って彼は今日のおやつを興じることになる。
私ばかり知っているのが多いことはフェアじゃない気もするけどね。
15 真実
リオンにしては、かの天才科学者は割と尊敬する人物だったろう。
だからこそ、時折賛辞もあろうというものだが、その都度シャルティエからは複雑な気配が飛んでくる。
ある時ため息ですらも聞こえてきてリオンは眉をひそめることになった。
その時、たまたま一緒だった自分からは何も言うことが出来ない。
なんていうか、その、歴史は必ずしも事実ではないってこと。
伝えられているほど完璧な人間などいはしないし、
天才ではあるけれど凡才の方がいとおしくなりそうな時もあるだろう、なんて表現はどうだろうか。
ねぇシャルティエ少佐。少佐ならもっと的確に表現してくれるかな。
ハロルド・ベルセリオスがどんな人だったか、ってことを。
16 一緒に
桜を見上げるのはいつも一緒だね。
そういったのはシャルティエだった。
初めてこの町を訪れたときには別段見に来たつもりはなかった。
ただ、稽古に付き合ったのが夜桜の下だっただけ。
それなのに何の因果かまた、桜を見上げている自分がいる。
この町は、人々は、そして桜は強かった。
騒乱を経てなお咲き誇るその姿は
今となっては会いに来てもいいかと思えるほどに。
17 敵
敵といわれて思い浮かんだのはなぜか一人の人間だった。
浅黒い肌に銀髪の貴公子。
いや、私からすると奇行子って感じなのだが。
「
君、私も一緒に桜を見上げたかったな……」
いまからノイシュタットに行ってもきっと散ってますよ王様。
「
君、今年の雪祭りは盛大に行いたいと思うがゲストとしてぜひ参加してくれないか」
寒いの苦手なので遠慮します。
そもそもどうして私はこの人にターゲッティングされてるんだろう。
「リオン、雪祭りのゲストだってよ」
「謹んで遠慮する」
話をふっても3秒と経たずにぶったぎられる。
「誰も君など呼んでいないが」
「よばれても誰が行くか」
彼もまた、敵を同じくしているらしかった。
いつからこうなったのだろう?
18 大好き
それはシャルティエの放った言葉だった。
唐突に腰に下げたシャルティエがそんなことを言い出すものだから危うくバランスを崩すところだった。
いつもシャルティエの言うことは唐突だ。
かの相棒は大好きと言う言葉が大好きだという。
『坊ちゃん、いいと思いません?なんか和むって言うか』
「聞く相手を間違っている」
誰がそんなことを言うものか。
すると懲りずにシャルティエは「愛」などという言葉を持ちかけてくる。
なんとなくむずむずする心地で聞き流しているとやってきたのは
だった。
「そうだね、リオンは大好きって感じより愛してるの方がフレーズ的に似合いそうだけど…」
「勝手なことを言うな」
『でもそうですよね~』
余計な同意を示すシャルティエ。
「私は好きって言う言葉は好きだな。ねぇ、リオン大好きだよ」
どうして臆面もなくそんな言葉が言えるものか。
理性に反してかっと顔に上るものを感じた。
「シャルも」
『え~僕はあとからとってつけ~?』
そんなことないといいながら笑う
。
あぁもうどうしてこの二人はこうなんだ。
つきあいきれん!
19 最後
どうしてだろう。
こんな結末なのになぜか誇らしくもあった。
私は私の道を
そして君は君の道をまっすぐに進むことが出来たんだね。
手をつなぐのはこれが最初。
そして多分最後。
少しだけ怖いかも。
でも、きっと大丈夫。
「一人じゃないから」
呟いたその言葉は、きっと届いているだろう。
だって私自身にも届いた言葉だから。
一人じゃないから、何も怖がる必要なんてない。
きっとーーー
20 「エミリオ」
その名前を呼ぶことが許されたのは、この広い世界でたった一人だった。
彼がそれをどれだけ大事にしていたのかは知っている。
だから知っていてなお、敢えて呼びかけることを避けていた。
「エミリオ」
私には彼をそう呼ぶ権利はない。
けれど私にとって彼の今の名前はそれよりもなお大事なもの。
だって、彼は彼として…「リオン・マグナス」として世界を渡ってきた。
その名前は確かに彼の一部でもあるから。
願わくば、リオンにもそのことに気づいて欲しい。
ほら、沢山の人が君の事をリオンと呼んでいる。
そうして過ごした時間は、君の本当に大事な時間の一部でもあるのだから。
その時君は、エミリオと呼ばれたいと思うだろうか。
あまのじゃくな君がリオンで通そうとする姿が目に浮かぶよ。
マリアンにとっての君がエミリオなら私にとっての君はリオン。
いまではそれでいいと思ってる。
どちらも「本当の」君の名前だから。