-- 時間に対する考察 --
ねぇ、ハロルド。時間って何だと思う?
何よ唐突に。
時間に流れ、って本当に存在するのかな?
…。あんたはそう考えるの?
だって誰も証明してないし。それって単なる例えじゃなくて?
そんなこと言って…あんたたち、実際に体験済みじゃない。時間の逆行、ってものを。
ん~でも何か腑に落ちないんだよねぇ
ぷっ、いい度胸だわ。既に実証されかけているものを覆そうとするなんて。あんた科学者向きよ。
そう?ありがと。天才科学者さん。
それであんたはどんなふうに考えてるの。聞かせてみなさいよ。
時間は流れてない。現在・過去・未来、それぞれ別の次元でそこに「在る」だけ。
どうしてそう思うの。
だって行ったり来たりできたから。
その結果、今一本の正史とやらが出来てるんじゃないの?
そう、かなぁ…本当に?今まで流れたものがいきなり変わる、なんてことあるのかな。
分かりづらいわね。
へぇ、ハロルドでもそんなこと言うんだ?
あら、迅速に論理を進ませるためには軌道修正も必要よ。
じゃあ、こうしよう。たとえば、私がいまここでハロルドの試験管を割ったとして…5分前に戻ったとするでしょ。
まぁ流れがあると仮定して、よね。「戻る」って表現は。
うん。で、割らないように気をつける。5分後、つまり今。気をつけた結果、割れてない。
一般的に考えたらそうなるわね。
じゃあ割れたはずの「今」はどこへ行くの?
そんなこと私が知るわけないじゃない。
言うと思った。
ほかに言いたいことは?
そうだねぇ…そもそも5分前に「戻った」時点で私に5分後の今の記憶があるっていうのがおかしくない?
そうね、時間が戻れば私たちの記憶だって5分の間に起こったことは消えるはずだもの。
それなのにどうして私たちは時間を前後した記憶を持っているんだろう?
世界の時間と個人の時間に相違が生じてるんじゃないの。
だとしたら、私たちはどの時代にいても「今」に立っていることになる。
じゃあ修正された歴史についてはどう語るつもり?
改変があって修正があった。今ここにある歴史は、元にあったものと似て非なるもの、ってとこかな。
それ、カイルたちに話してみなさいよ。絶対混乱するわよ。
だからハロルドに話してるんじゃない。
それもそうね。じゃあまとめると『歴史の改変も修正もひとつの時間の流れの出来事』でOK?
そうそう、ただその時間、ていうのは史実上の時間じゃなくて…世界の時間?とでもいうのかな。
それこそ流れがめちゃくちゃね。
だからそもそも「時間に流れはあるのか」ってこと。流れって概念を取り払ったら…実は簡単かも。
じゃあ流れたはずの時間はどこへ行くのよ。
あっ、ずるい。それさっき私がした質問だよ。
いいじゃない。聞かせなさいよ。
…。どこへも行かない。そこに「在る」。
それもまた事実、ってわけね。
座標から座標を眺めると思えばわかりやすいかな。もしくはそこから分岐した時間が「流れて」る、とか。
また流れに戻ったわよ。
うーん?こういう話って必ず最初に戻るよね。
そうね、運命だとか時間だとか?まぁいいんじゃないの1周するとわかることもあるし。
なんとなくだけどね。
なんとなくでもいいのよ。「わからない」ってことがわかっただけでも大収穫よ。
ねぇ、ハロルド。もしもこの旅が終わって歴史が三度修正される、なんてことがあったら…
どうかしら。けど、「再構築」はありでしょうね。今までのあんたたちの話を聞いてきたら当然の流れだわ。
修復される時間…世界の記憶、か
世界の記憶?
なんとなく時間って言うと固定観念があるからそっちの方がしっくり来ない?
なるほどね。まぁ、その理論だと誰が忘れても世界とやらが記憶してるわよ、きっと。
神をも超越するハロルドは?
それは私に対する挑戦かしら?
あはは。何なら勝負しよっか。
勝負?
私も覚えてるよ、きっと。忘れ去られるものを覚えているのは、得意。
…いい度胸ね、私の記憶力に挑戦とは。
いいわ、────受けて立ってあげる。天才の名にかけて、ね。
スクチャ**そして日常
■世界クラスの実験場。
「おかしい…」
ロニ「何が?」
「歴史を直したら、直された歴史はどこへ行くの?」
カイル「え?だからそれは解けた氷を戻すような物だってジューダスが…」
「でもさ、氷になる前提として「凍ってた」事実があるんだよ?」
歴史で言うなら史実上で消えてもその事実は消えないってことで…」
ハロルド「あら、そんな例えをしたの。でもそれ、質量保存の法則上的な見地よね」
ロニ「質りょ…何?」
ハロルド「平たく言えば、水も氷も同じ量の同じ物質からできてる、ってことよ。だから、作り変えられても戻しましょ、ってこと」
カイル「そうやって歴史を修正してしてきたんだよね!」
「しかし、水を氷にするには変化が伴う=エントロピーの増大=時間の経過」
ハロルド「そうなると視点は変わってくるわ。熱力学第2法則と時間の概念そのものを見直さないと」
「とりあえず、手始めに時間航行してエントロピーを計測してみる」
ハロルド「そうね、時間転移中の計測なんて未だかつて成功例なしだもの。
ぐふふ~俄然やる気出てきたわ~vv」
・ハロルド「ってことで、リアラ。時間転移してみて」
ジューダス「実験のためだけに、そんなこと口走るな!」
■謎と科学者
「過去にさかのぼるときもエントロピーは増大している…
カイル「?
ハロルド「エントロピーって言うのは何かをするときに必ず増大するものなの、「変化」の値な訳よ。
ロニ「だから何だ?
ハロルド「リアラがペンダントを使うときもエントロピーは変動しているってことね。
「ってことは私たち、時間逆行してるつもりで逆行なんかしてないってことになるんだけど。
カイル「それって…どういうこと?
ハロルド「時間と称するものはいわばエントロピーの増大。つまり、歴史を修正するっていうあんたたちの行為は「最初の歴史がありました。誰かが変えま した。直しました」って軌跡の一部に過ぎないってことよ。
ロニ「でも実際、歴史はきちんと修正されてるぜ???
「今見ているのは前の歴史じゃなくて『歴史が修正された後の歴史』じゃないか、ってこと。
カイル「????どこが違うの?
「んあ゛ーーーーー!!
ジューダス「言わんとしている事はわかった。だから暴れるな(*暴れてません)。
ハロルド「ん~私は過去へ逆行したことがないからなんともいえないわね。データがないもの。それが判れば時間の謎も解けるかもしれないのに…残念だ わ~
「納得できない───────────!!!
カイル・ロニ・ナナリー・リアラ「?????
たぶん、こんな感じ。
時間について論じるとキリがない(苦笑)