「割破爆走撃ぃ!!」
ロニの豪快な奥義で戦闘は終わった。
彼の技は往々にして派手で大ぶり、ジューダスとは対照的である。
「見たか!オレの勇姿!!」
雑魚になんか奥義使ってその後は得意満面と来れば、はいはい、と呆れた仲間たちの返事が待っている。
にも増して。
ゴゴゴゴゴ…
「っ離れろ、崩れるぞ!!」
騒ぎすぎたツケまで回ってきた。
更新リクエスト 1位
**Hot-Pot**
「っ痛た…」
崩れたのは天井だった。
大量の土砂が頭から降り注ぐその瞬間にジューダスが手を引いてくれたおかげでなんとか生き埋めは免れた。
が、仲間たちは完全に散り散りにされてしまっていた。
「大丈夫か?」
「あ、うん。なんとか…」
が上半身を起こすのを確認してジューダスが積もり積もった土砂の方を振り返る。
道はふさがれてしまった。
「 ー!ジューダスーー!!」
土砂の向こうから聞えたカイルの声。
「こちらは大丈夫だ!そっちは揃っているのか!?」
「うん!3人とも無事だよ!!」
「一度外へ出ろ、僕らも別のルートで入り口へ向かう」
「わかった!」
お互い無事だとわかると一転してこんな状況でも元気な声。
明るく能天気な様子が目に浮かぶようだ。
やがてカイルたちが出口へ向けて遠ざかる気配がした。
「よし、僕らも行くぞ。」
「うん」
ジューダスが先に立って歩き出す。
彼はここに入った時に入り口付近の部屋にあった地図を目にしているので、大まかに現在地を掴んでいるようだった。
もっともその地図も階層の極浅い場所のものしかなかったのだが。
「どうした?」
黙々と歩いていると、ふいに の歩くペースがおちたことに気づいて、ジューダスは足をとめた。
即答はない。
と言うことは思わしくない事態が何か起きているということだ。
自分のこととなると自分からは主張しないので困るのだが、逆にいえばこういう時は何かが在るといっているようなもの。
しかし。
「眠い」
短く答えた は、確かにある意味抗いがたそうな生理現象に辛そうな顔をしていた。
いつになくぼんやりしてもみえる。
「眠いってお前…」
『何か話しながら歩いた方がいいんじゃないですか?』
呆れたジューダスの返事に、あはは、とそれまで努めて黙っていたシャルティエの苦笑が重なる。
しかし、ジューダスはその違和感にすぐに気が付いた。
反応が鈍い。
言われていることも耳に入っているのが精一杯のようだ。いくら眠かろうがそこまで彼女が意識を拡散させるなど今までにも無いことだ。
何か得体のしれないざわつきを覚えながらジューダスは鋭い顔つきで に歩みを寄せる。
「!怪我をしているのか!?」
思わず荒げた声は狭い坑道に反響した。
「あぁ、怪我っていっても…騒ぐ程度の…」
「見せてみろ!」
問題は怪我ではない。
強引に腕を取ると負った裂傷を食い入るように見るジューダス。
その口元から小さな舌打ちがもれた。
「…毒にやられたな」
「パナシーアボトルはリアラが持ってたから…早く外に出るか、乗り切るか…」
「わかってたなら何故言わない!」
解決方法もないから黙っていたのである。
結局のところ、脱出が早いならそれに越したことはない。
幸いと言うべきか、いや即効性だったら戦闘中に治していただろう遅効性の毒は緩やかに侵食している。
「とにかく一刻も早く脱出して、合流するぞ。」
ジューダスが舌打ちして怪我をしていない方の腕を引く。
毒の回りを早めることもあって動かすのは得策とはいえない。だが、動かさずに『乗り切る』のを期待するほど安穏ともしていられない。
かといって、ジューダスが運んでその間に意識を失われても困る。…とりあえず意識を保たせておくには自分で歩かせるのが一番だ。
が、やはりその分毒の回りは速くなるわけで…
いずれも嫌な選択肢だった。
それから5分ほど進んだところでついに の足はおぼつかなくなった。
「!?」
『 !』
眠りそうな を無理やり引っ張っているその手がふいに軽くなったと思えば次の瞬間、前のめりに倒れこんでくる。
思わずシャルティエの上げた声がジューダスの意識に鋭く入り込んできた。
が目を開けるとそこは、相変わらず暗い廃鉱の中だった。
ただ、今までと違い天井は木枠で支えられており、四隅には角柱も見える。
古びたロッカーと、テーブルと…
ホコリっぽいが自分のいるのはベッドの上だと知った。黒い上質な生地が敷かれている。
それがジューダスのマントだと言うことはすぐにわかった。
「気が付いたか?」
闇の中に仄かなろうそくの明かりと白い竜の頭骨。
ただしそれはテーブルの上に載っていて声はそれとは違う方から聞えた。
「ジューダス」
「調子はどうだ」
悪くはない。まだ倦怠感は残るが既に自力で体も起こせた。
答えなくてもそれで十分に通じたのかジューダスは無言で水筒を
に渡す。
「ここは?」
「作業の詰所だな。役に立つものがいくつか残っていた」
『解毒剤もあったんだよ』
あぁ、それで。
自然回復とは思えなかったので体が軽い理由が納得できた。
「リオンが運んでくれたんだ?」
「他に誰がいると?」
「ありがとう」
「お前は無茶をするなと言っているだろうが。毒なら毒とすぐに言え。それから今後は救急セットを持て。自分用に。」
矢継早に言われて閉口する
。
言った所でどうにもならないから言わなかったのに…
と弁解したところで状況は変わるまい。
『それにしても坊ちゃんてば慌てもしないで淡々と処置しちゃうんだから…たまにはもう少し感情的になってみたらどうです?人間らしく』
「…。僕は人間だ」
こんなところでシャルティエが暴言を繰り出している。
「シャル…他に言いようはないのかな…」
『だって、ソツないのはいいんだけどさ…一段楽したらほっとしたようなつまらないような』
「それは単なるお前の我侭だろうが#」
『淡々と処置しちゃって…もうちょっと心配してください』
「言われてするとかしないとかそう言う問題か…?」
お小言というよりなんだかもうわけがわからない。
シャルティエもいつからこうもマイペースになったのか。
自分が目を覚ましたら開口一番、リオンの口調は怒気をはらんで見えた。
だから十分人間らしいんじゃないかと思う一方で、
は枕もとに置いてあった解毒剤のビンへと手を伸ばした。
何気にラベルにびっしりと書かれた説明書きを目視する。
「……………あっ!!」
「『?』」
「配置期限切れてるじゃないか!」
「細かいことを気にするな。効いただろう」
結果オーライなんですか。
「粒状ならともかく…液状で期限切れって…」
「仕方ないだろう。閉鎖されて何年経ってると思うんだ。1年や2年我慢しろ」
我慢も何ももう飲まされているのでどうしようもない。
「まぁ配置期限って消費期限じゃないしね…」
「そうだ。賞味期限のようなものだろう」
ちなみに消費期限は『この日までに使わにゃ危険』なもので、賞味期限は『この日までなら美味しく食べられます』と解する。
いずれも『その後、何があっても責任もてません』表示には違いないのだろうが。
「これも飲んでおけ」
「…」
差し出された小ビンをすかさず一周させてチェックする。オベロン社製品の強力な栄養ドリンクだ。
製造年月日は入っているが、期限はない。
「……」
製造年月日は当然、放棄される18年以前。
「大丈夫だ。非常用に18年くらいは保存も利く製品だから」
「それでももう過ぎるってば。」
「だから何だ」
ジューダスは
の手の中からオベロンGold(酷いネーミングセンスだ)を取り上げてふたを開ける。
「「………………」」
次に待っていたのは実力行使だった。
何気に彼の好きそうな言葉だと、どーでもいいことを想う。
「嫌っジューダスっ!そんな怪しげな商品飲まなくても大丈夫だからっ!!」
「怪しいとは何だ!仮にもオベロン社の供給品だぞ!?安全性は折り紙つきだ。わかったら飲め!」
「安全性とかそういう問題じゃないんだって!」
消費期限の問題なら安全性の問題なのだが、そんなことを細かく言っている場合ではない。
「ジューダスだって、自分が飲めって言われたら飲まないでしょうが!?」
「あぁ、飲まんな。」
沈黙────
「じゃあ飲まそうとするなーーー!!!」
結局のところ、飲まされた。
無理やり。
最終的な論争は『僕はいいがお前はダメだ』というそりゃもうリオンらしい(?)理由で終わった。
『
、元気になったみたいでよかったね』
今日のシャルティエは、いつにも増してどうかしている。
そう言った彼は物凄く満足そうだ。
この2人は一体、私をどうしたいのだろうか。
──と思う
は一体誰に使うつもりなのか、まだ残っていたオベロンGoldを2本ほど詰所から拝借してきている。
廃鉱の中を再び、出口に向かって歩きながら
は考える。
「でもさ、リオン」
「なんだ」
「解毒剤なんか使わなくても…私『天使の微笑み』持ってるんだけど」
「『……』」
そう、それはソーディアン専用のディスク。装着すれば対応する晶術が使えるようになるという優れものだ。
天使の微笑みではアンチドートがもれなく使えるようになります。
「それを早く言え!!!」
「言ってあったでしょうが」
2人旅時代の遥か昔に。
「……………………………」
『坊ちゃん…よほど慌ててたんですねぇ…』
「うるさい。お前だって微塵も気づかなかっただろうが」
微妙に責任のなすりつけあいを始めた2人。
だってそれどころではなかったのだから…
しかし、敢えて口を挟んで自分に矛先を変える気にはならなかった。
2人の言い合いは坑道を出るまで続いていた。
あとがき**
途中までのシリアスさは一体何なのか。
更新アンケートのコメント(リオンに慌てて欲しい、連載の1回じゃ物足りない、心配してetc)思い出したら一気に方向性が変わりました。
仮面はずしてる理由や、エピソードがあったりなかったりしたのですがこれで落ち着きました。
シリアスギャグの境地ですね(?)
ちなみに、タイトルに意味はありません(笑)
投票時頂いたコメント**<ありがとうございました!>
*リオンがお姫様抱っこなんかしちゃうかも☆
*めちゃくちゃ読んでみたい!
*いつもクールな坊ちゃんが慌ててくれるとイイなぁ
*たまにはこんなのもいいかと。っというか見たいです!!
*リオンは手当てとか上手そうですよね!!
*リオンって心配性ですから♪
*っ・・・・リオン希望です!
*ここの二人はそういうことがあまりないから、珍しい光景
*トキメキです~vシャルが一番騒いでそうですよね。「女の子の体に痕残しちゃだめーー!」って。
*シャル日記みたいにシャル視点から、とか・・・。リオンが青ざめてくれたりしたら嬉しいですね♪
*是非!!こういうシチュエーションは新鮮で良いですね(>▽<)♪
*これはぜひ見てみたいです♪
* 平然としながらリオン君が大慌てしてそうですね♪
*ほのぼの・・・(*^▽^*)イイ・・・!!
*リオンは気を許した人には心配性になると思います!
*ほのぼのって大好きなんですよ~w
*ラブラブ希望!!!本来なら考えられないっていうか、ありえないシュチュエーションです。だからこそやってほしいっていうか ///
*本編では、血相を変えた、というだけで終わってしまったので、心残りでした。是非、短編でこのようなシチュエーションを!
*二人旅の時とかに怪我したら、回復晶術がないわけですから、凄い焦りそう・・・(^▽^)♪
*こういうアクシデントって滅多に無いから楽しみです~♪
*めったにないことで面白そうなので見てみたいです
*ほのぼの~っとしてて良いですね。怒りながらも看病するリオンがなんか良さそうv
*こういう話大好きです!想像するだけでドキドキです~v
*心配と言うよりも、背負ったりして治療とかもリオンが引き受けるのがいいと思います。。
*二人の関係が大好きなので。こういうのはファンダリアの騒ぎ以来ですしね。立場は逆でも面白そうv(リオンが怪我してヒロイン 心配)
*やっぱりそれなりに心配する関係でいて欲しいです☆