リオンの日記
×月○日 晴れ
が窓の外で何かをしている。よく見ると花を摘んでいるようだ。といっても庭の影に群生している白い花の首から先だけを小さなカゴに入れている。花を摘むというより作業的だ。またあいつは何をはじめるつもりなのか。
×月△日 晴れ
今日もよく晴れた。昨日が採ってきたものは、ビンにつめられホワイトリカー漬けになった。ドクダミという植物で薬液を作るつもりらしい。どういう興味の曲がり方だ。今日は朝から茎ごと刈り取りに行った。よく陰干しするとノンカフェインの薬茶ができるらしいが僕も飲まされるのか?……気は進まない。
×月×○日 晴れ(夕立あり)
夕立のおかげか涼しい。帰ってくるなり、が妙に笑顔でおかえりと言う。違和感から聞いてみる。門前のアジサイが咲き始めたから一緒に見に行かないかと言われた。そういえば昨年、「どちらが先に気づくか」という話をしていたのを思い出す。…………くそっ、先を越された。
×月×△日 くもり
執務中にまたパストがくだらない話を始める。「一緒にいる10年、20年後のビジョンが浮かばない」という理由で彼女にフラれたらしい。だから何なのだ。そんな話を聞かされるのはここ数年で結構な回数に及ぶので第二のふられマンの称号を送ってやりたい。
×月×□日 雨
休日。は朝食と掃除が済むとなぜかベッドに入って昼寝をしている。雨の日はよく眠れるらしい。頭痛がするから嫌いというやつも多いが、雨音は嫌いじゃない。読書に興じることにする。静かな一日だ。
△月×日 曇り
花の薬液が完成したらしい。小瓶のスプレーに入れると意外なほどにきれいな琥珀色だった。抗菌性があって皮膚炎などはもちろん、虫さされなどにも効くらしい。これから夏本番なので使われる予感がひしひしする。その前には自分で試していたが。
△月#日 曇りのち小雨
久々に、知らない女から手紙をもらった。もらったというか最近は受け取らない主義で通していたのにそれを言う前に押し付けられた。しばらく体感していなかったが、強引な女はどうしようもないものだ。封は切ってないが放置していたところに「ラブレターじゃなくて呪いの手紙だったらどうする?」などと構われた。心当たりはともかく、なぜか嫌な予感しかしない。
△月○日 晴れ 時々 曇り
珍しく昼時に自室へ戻るとが、出張中のスタッフから預かった小鳥と遊んでいた。見られていないと思ったのかかわいいにゃ~などと口走っていたが、僕の聞き違いか? というか、なぜ鳥に猫語を使う。人間と動物の前で見せる顔が違いすぎるだろう。つっこみどころが多いが、何事も無かったかのように話しかけられたので幻聴だったのかと本気で思う。
△月△日 小雨
数日前の嫌な予感が当たった。手紙を置き逃げする輩が増えた。パストはうらやましがるが、そんなに欲しいなら全部くれてやる。とりあえず同部署の二人には、留守中に誰か手紙を置いていくようなことがあったら突き返せと言っておいた。
しかし、昔の自分ならその場でゴミ箱行きにしただろうに、どうしたものかと思うようになったのは何かが少し変わったということだろうか。どの道、開ける気はないが。
△月%日 晴れ
梅雨が明けたらしい。ゴミが日増しに増えていく。
△月×○日 晴れ
個人情報が含まれていると困るので、焼くことにする。
「バレンタインの季節だったらよかったのにね」とは言うが、どうでもいい。梅雨明けらしく、セミが急にけたたましく鳴きだして、妙に暑く感じる一日だ。
△月××日 晴れ
暑さからか、パストが現実逃避を始めた。最近、セクションによく出入りしている初老の学者がいるがが書類を届けにきて度々見かけるようになったためか、帰宅後「あのおっさん誰?」と聞いてきた。直球だな。
お前の好きな学者だぞ。ぞれもえらい方の。と返したら「知らない人にとっては偉い人もただのおっさん」と返ってきて納得してしまった自分がいる。
△月×△日 晴れ
パストが暑い暑いと連呼して鬱陶しいので、室内での暑いという言葉を禁止した。それでもうだっているので、一回言うごとに手元にある文具を投げつけることにする。うっかりエクセルの方が外から帰ってきて暑いと言ったがこちらは見逃す。実際暑い日が続いている。
△月○%日 曇り
今日は少し涼しい。天気が良かろうが、雨が降ろうが、はしれっとした顔をしている。本人的には暑いと思っているようだが、伝わってこない。いきなり熱射病とかにならないだろうな。……そういえば前科持ちだ。まぁ室内の仕事だからさすがにそれはないだろうが。むしろ明日は自分が外回りなので水分補給は欠かさずした方がいいだろう。
△月○△日 晴れ
忘れていたが中央ストリートのユニオンが主催する花火が開催される日だった。は見に行くかと聞いてきたが人ごみに出てまで見るものだろうかと腰が重くなってしまう。察したのか館の上から見ようと誘われた。テラスは同じことを考えた輩で満員だ。が、は作業口から屋根に出ようと言うのでさすがにそれは止め、ブーイングを受ける。一応、街中だからな? 逆に目立つからな?
△月○#日 晴れ時々曇り
結局昨日の花火は、少し遠出をして外壁の上から見た。職権乱用だ。が、まぁ街と花火が一望できて悪くは無かった。どうでも良いがパストに新しい恋人ができたらしい。回転が速いな。同じふられマンでもそこまではこぎつけるタイプなのか。どうでも良い故に上げ幅が激しいテンションが鬱陶しい。なぜこいつが僕の部下なのだろうか。今日の僕は割と物静かなエクセルとパスト、同室者である年上二人を遠い目で眺めやっていたことだろう。
○月×日 晴れ
月が変わった。がルーチンワークに飽きてきているらしい。今日は仕事をしなかったと帰宅後に公言している。では何をしていたのか。書類を広げたままルーティに手紙を書いていたらしい。暑さで同室者もだれているので問題ない。みんな今日は昔話とスイカときゅうりの話ししかしていなかったと言う。……どんなセクションだ、お前の部署は。
○月△日 くもり
蝉時雨がやまない一日だ。なんとなく資料室へ足を運ぶとがいた。資料室と言うか、元々図書室なのでほぼ誰も来ない場所だ。さぼっているのかと聞くとじゅうたんの上に座って(おそらく座りなおした)、本を開くと書架整理と言い切った。
いや、さぼってるだろ。それは。
しかし、様子を聞けばなかなか部屋からは出ないので相当体が固まっているようだ。暑さはともかく缶詰なのが辛いらしい。「たまには外回りしたいなー モンスター討伐隊に助っ人でも行こうかな」などと言うので一発、手近な本で叩いてやった。こいつは学者肌でもフィールドワークも面白がるタイプだな。………わかってはいたが。
○月○日 晴れ
日記を読み返してみる。自分もルーチンワークが多くなっているので特記すべきことが無い日が多いのが、微妙なところだ。平和な証拠と言いたいところだが、の観察日記のようになっている。書くことが無くなったらむしろそうしてみるのが良いかもしれない。本人は嫌がるだろうが。
パストの言われた20年後のビジョン、そこまで考える人間はあまりいない気もするが自分はどうしているだろうか。正直、あまり変わらない気がする。もう時間も遅いので熟考に入る前に今日は寝ることにしよう。
--リオンの日記より抜粋
2017.8.4**
夢小説の割に、短編は視点でないことが多いので、いっそリオンの日記とか。などと思い書いてみました。あくまで抜粋です。
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