君に小さな、幸せを。
-Clover-
旅はまだ始ったばかり。
アイグレッテの港へ向かう途中、海を臨む淡い緑の草原に腰をかけ、カイルたち4人は休息をとっていた。
天気もいいしちょっと見はピクニックのようなのどかさだ。
「四葉のクローバーって」
が手をついた緑の感触におもむろに声を上げた。
「みつけると幸せになれるって言うよね」
「え!?本当!!?」
「あぁ、ちっこい頃よく探したっけなぁ」
ロニが改めて大きな手の下に敷き轢いていた柔らかな緑の群集から手を離して視線を落とす。辺り一面に広がっていたのはクローバーだった。
気にかけなければ気付かない。そんな雑草なのに、気付いてしまうと妙に存在感のある不思議な植物だ。
すると戸惑うようにリアラが周囲を見回して…四つんばいになるようにしてそれを探し始めた。
目が本気だ。
「あ、オレも手伝うよ!」
「しょーがねぇなぁ」
カイルは嬉々として、ロニは苦笑しながらも幼心の思い出をたどるように小さな草花を視線で掻き分けだす。…楽しそうだった。
「お前は探さないのか?」
「こういうのって探そうとするほど不思議とみつからないんだよね」
ジューダスがどこか呆れたように3人を眺めながら声をかけてくる。
隣に腰をかけたまま動く気配のないシンは興味はなくない、という顔をしながらも見回すだけだ。
が。
「はい」
少々視界の悪い仮面の下から左手に視線だけ流すとしなやかな指先につまむようにして差し出されているクローバー。
改めて顔を向け、よくよく見ると四つ葉だった。
場当たり的ながら思わず同じように親指と人差し指でつまんで受け取ってみたところで何がどうというわけでもない。
しかし、探している3人にとってはそうでもないらしかった。
「あーーー!!」
「ジューダス、すごい!みつけたの!?」
「いや、僕は…」
カイルがひょっこりと肩口から覗き込んで目ざとく声を上げるとわらわらとジューダスの周りに集まってくる3人。
さりげなくカイルとリアラから羨望のまなざしが注がれている。
複雑な顔で言ってみたところで誰も聞いてはくれなかった。
「…お前がみつけたんだろうが」
「じゃあ幸せのおすそわけ、ってとこでどう?」
クローバーはそのままリアラに手渡して、足取りも軽く先を歩き出した仲間たちの後ろでジューダスと
。
はジューダスが3人に取り巻かれている間、何も言わずに、笑いながらそれを眺めていただけだった。
ジューダスも複雑そうな顔をしながらも、素直に喜ぶ仲間たちを前に居心地は悪くなかったのに違いない。
幸せの四葉。
たった1つみつけただけで、幸せな気分になれる幸せの素。
それはほんのささやかな、
けれど、確かな幸せ。
台風接近中の日曜日、運動会のスタッフとして狩り出され、
テントから離れて座っていた草地で
四つ葉のクローバーをみつけました。