「…っクシュン!」
「…夏風邪はなんとかがひく、という言葉を知ってるか?」
その日の午後の会話はリオンのそんな一言から始まった。
-夏の温度差-
午前中から
が頻繁にくしゃみをしている。
アレルギーでもなければこの時期には珍しいことだ。夏真っ盛り。
晴れともなれば誰もが暑いと手うちわで外を歩く時期だった。
「知ってるよ。昨日、朝寒くて目が覚めたからその時に寒気に当たったかなぁ」
「は?」
思わず聞き返すリオン。
ダリルシェイドは冬は海風の影響で雪が少ないが、夏はそれなりに堪能できる暑さになる。
特に最近は梅雨明けが遅かったと思ったらいきなりの酷暑だった。
夕方になれば涼気も出るが、寒気などという言葉がどこから来るのか理解できない故の一言だ。
「夜暑かったから窓開けて寝た」
「それは僕もやっている」
ここで気づく、彼女からはあまり想像できない可能性。少しだけ考え込んでからつい、言ってしまった。
「腹でも出して寝たのか」
「寝るわけ無いでしょ# でも毛布1枚だった」
「…」
珍しく怒られた。
けれどその発言は更にリオンの謎を深めることになる。
「だから目が覚めて羽毛布団かけなおして寝た」
「お前、この時期に一体何枚かけて寝てるんだ」
夏用毛布1枚だったらまぁわかる。タオルケットというのもありだろう。
しかし彼女から帰ってきたのは更に驚愕の一言だった。
「ほぼ1年中、起毛の毛布と羽毛。冬はもう一枚加算」
「───なんのために窓を開けて寝た」
起毛の毛布というのは冬用の厚手のものだ。
この時期にそんなものをかけて寝たら暑いことこの上ないだろうに、その上に羽毛布団。
「だから夏でもちゃんとかかってないと嫌なの!」
「…だったらせめて夏用にしろ」
「重みが無いから嫌だ」
よくわからない理屈である。
「きちんと上に乗ってないと何か落ち着かないんだよ」
包まれていないと安心感がない、ということなのだろうか。
そう考えると性格上は合致してないこともない気もする。
「男の人は暑がりな人も多いよね。夏だとフローリングの上に何もかけないで下着で寝てたりさぁ…」
「僕はそんなことしない」
嫌そうにリオン。
それはさきほど彼が
に言ったこと同類の意味である。
「ともかくお前は変だ。医者にでも行って来い」
「なんでいきなりそうなる…」
「おかしいだろう!夏にそんなに寒さを感じるのは…」
「そんなに感じるわけじゃない。たまたまいつもよりかける枚数が少なかったから寒かっただけで」
「だからそれがおかしいといっているんだ」
堂々巡り。
「医者に行っても治らないよ」
「…」
しめくくりは
の極論だった。
「お前…よくそれで旅が出来たな…?」
「うーん、気合?」
「最も欠けていそうなものをまっさきに挙げるな」
ため息をつくリオン。
気力というには違いないだろうが…
それにしても。
謎といえば謎な一面が増えてしまった一件だった。
あとがき**
お盆中の出来事。
自分の場合はクーラー効き過ぎ!(><;)というのもありますが…
あやうくもう一歩で夏風邪はなんとやらになるところでした(汗)
いつものごとく布団については実話。羽毛布団を導入する昨年までは重い綿布団でした。
どうでもいいですが、お題は日常のことなのでD3その後が書きやすいのだと気づいた一作でした。