病人と付添い人
が体調を崩した。
ものすごくつらそうというふうにも見えなかったが、
「さんざん調べたけどお手上げ」
という
の言葉にリオンは眉をしかめつつ
「いつからだ」
「7カ月くらい前?」
時々こいつは、本当に馬鹿だと思う。
それが内臓から来ているのか、整形外科的なものなのか試行を交えつつ調べれば調べるほどわからなくなり、もはや手におえない。
そこまでの結論が出て、ようやく医者にかかろうとか。
普通じゃない。
「病院って混むし、逆に具合悪くなりそうだから好きじゃないんだよね…」
そこそこ健常者である人間の言い分であろう。その点では安心してもよさそうだ。
「どこが痛むんだ」
「腰のあたりとか片方だけ」
それなりにストレッチなどの自助努力もしているようだが、確かに外部の肉体的に問題がない場合、内臓から来ている可能性もある。
その場合は、本当にどうしようもない状態で本人が思っているより深刻な状況になっているケースは否めない。
「僕も一緒に行く」
「行ってくれるの?」
「買いたいものがあるから、ついでだ」
そして二人は普段はあまり縁のない病院に行くことになる。
ダリルシェイドは大きな町だから、小さな個人医院から入院患者対応の施療院まで点在している。
実は館内にもスタッフ専用の医務室のようなものはあるが
のことだからそこでの情報収集は済んでいるだろう。
ということで検査が必要そうなので、大きな施療院に行くことになった次第だ。
「リオン、本持ったほうがいいよ」
「病院に行くのにか」
「私はともかく待ち時間が暇じゃない? それともその間に買い物済ませとく?」
「いや、一応待っていくことにする」
というわけでリオンは本をもって。
その施療院は、復興の際にまっさきに需要のある場所だった。なのでしばらくは患者が多かったが、落ちついたころあいで補修を進めたため、今は比較的きれいだ。
「診療所はそうでもないけど、病院って待ち時間長いよね…」
ファストパスがほしい、などと意味の分からないことを言ってため息をつく
。
「確かに時間にもよるだろうが混雑するな」
「何か解消策とか考え……あ、リモートで呼べるようにしたらどうかな」
名案が閃いたらしい。
「リモートで?」
「通信機、ってほどじゃないけどたとえば何か対になる発信送受のものを持たせて、番が近づいたら鳴らせるとか」
音を鳴らす程度なら仕組み的には難しくないだろう。だが。
「それまでの間、患者は自由行動か?」
「時間が有意義に使える」
「お前はいったい何のためにここへ来たんだ」
………。
「具合が悪い奴がうろうろしてどうする」
「そっか」
納得したらしい。本当に具合が悪い人間はいずれ動けないだろうが、多少の怪我なら精神的には元気な人間もいるので、確かに着眼点は悪くないとは思う。
「フードコート式は不採用か」
「は?」
「いや、言ってみただけ」
などと話している間に
の診察の順が回ってきて…
結果。
「血液検査は異常なしでした」
「よかったじゃないか」
「そうするとやっぱり体力不足とかかなぁ…地道に運動するか……」
自分なりに方向性を絞っている模様。
そして、そのまま帰宅した二人。
「……リオン」
「なんだ」
それに気づいたのは
だった。
「買い物は?」
背中越しに言われて、はっとするリオン。
そのままその顔が苦虫をつぶしたようになるが、
からはそれは見えなかった。
「お前がくだらないことを言うから、忘れただろうが」
「そう、じゃあおつかいしてこようか?」
心遣いが、若干痛い。
むろん忘れていたわけでは…まぁ彼なりの気遣いであったことは、お察しください。
FIN
閃いたとき、すっごい名案だと思いました。
割と本気で。