天地戦争時代です。
毎日白灰一色の空を見上げています。
--乙女心と冬の空--
「 、リアラを何とかしろ」
なんで私が。
ぼんやりと外を見ていると背後の喧騒のまっただ中からジューダスの声が呼びかけてきた。
ディムロスを巡って英雄の談義が盛り上がったところで、カイルがうっかり「聖女もいらない」発言をしてしまったため既にパーティは壊滅の危機にあった。
振り返ると惨状が待っている。
無事なのは、傍観に徹しているハロルド、手の出せないナナリー、そして自分となぜか女性陣ばかりであった。
なぜ黒リアラ(言い切った!)は男性陣に辛く当たるのか。
…何か、トラウマでもあるんだろうか。
「 !!」
いつものごとく明後日な方向へ思考を飛ばし始めると、ジューダスがもう一度呼んだ。
かつてないほど切迫して聞こえる。
「リアラ…その辺にしておいたら?」
「…しょうがないわね、 がそういうなら止めてあげるわ」
にっこり。
ねぇ本当に今まで機嫌悪かった?
聞いてみようと思ったがやめた。
誰も手当てをしてくれないのでロニたちは大人しく自分でヒールをかけている。…何だか寂しい光景である。
けれどここのところ、これが日常となりつつもあった。恐ろしいことに。
「大丈夫?ジューダ…すぅう!?」
「 、散歩に行きましょ♪」
伸ばしかけた腕はリアラによって引っ張られた。
物凄い力だ。細腕に見えるくせに拳で戦闘に参加しているだけある。
諦めて引きずられていくと外へ出て、2人きりになった。
「リアラ?」
向こうを向いたきりじっと考え込むそぶりを見せたので呼んでみる。
うっかり声の掛け方を間違えると大変なことになるからなかなかスリリングである。
しかし、いつもと違う様子に、先ほど言われたことがショックだったのだろう気づいた。
いくらロニをグランバニッシュで壁に激突させようが、ジューダスに向かってエンシェントノヴァで狙いを定めようが、カイルをウィンドスラッシュ十連発で窓ガラスの向こうの雪原に沈ませようがリアラなりに傷ついているんである。
…………まぁその前に仲間を死の淵に追いやるのはどうかと思うのだが(自分が何度でも復活するから死という概念がないのだろうか)。
「カイルに言われたこと、気にしてる?」
「…」
「何と言われようがリアラはリアラだよ」
むしろ、自分に小石を投げたものを殲滅させる聖女様っぷりこそリアラだと思うのだが、それはそれで困るので自覚させるのはやめておいた。
代わりに都合よく解釈してくれていいです。
「うん、ありがとう。だから って好きよv」
「……………………ありがとう………」
超複雑。
「でもね、カイルの言ってることもわかるの。…ただ、そんなこと言われたら…
じゃあ私の立場はどうなると思ってんだ、ゴラァ! お前を英雄にしてやったのは一体どこの誰様だと思ってるんだ、ちっ とは自分の身の程をわきまえやがれ!!
…なんて思い悩んでしまったり……」
「そう、それは悩ましいね…」
「でもね、そんなことで喧嘩をする自分も哀しいの。」
「あぁ、(一応)仲直りしたいんだ」
例えそれが一方的な攻撃、一般的には「鬱憤晴らし」で あったとしても。
彼女は繊細な乙女であった(迷惑)。
「まぁ、カイルなんて3分空ければケロリと忘れてるから扱いやすいことこの上ないんだけどねv」
「ねぇ…英雄って聖女にとって…何?」
「え?…そうね…犬vかしら」
「わぁ、カイルにぴったり」
あはは、うふふ、と全く意味の違う笑みが飛び交う。
そんなことをしているうちに3分なんてあっという間に過ぎてしまった。
「冷えるよ。そろそろ戻ろう?」
「そうね。あ、あのね」
ふいの提案。
「仲直りの印に…その…おかしでも作っていってあげようかな、なんて」
それはやめておけ。
曲がりなりにも彼女の料理の腕は良いとは言えない。
なぜこんなところばかり恥じらいの花の乙女なのだろ う。
もじもじしているリアラを相手に、 は先行きを見通しながらも止めることはできなかった。
──────みんな、ごめん。
なんとか無事にクッキーなんて作って部屋へ戻る途中。
は素朴な疑問をぶつけてみた。
「ねぇ、前から聞きたかったんだけどなんでジューダスのこと目の敵にしてるの?」
きっぱり。
仲間がいたら、次に来る惨状を予期して訊かせなかっただろうことも2人きりでは誰もはばからない。しかし、リアラもなんのことはなくあっさり答えてく れた。
「だって私のヒロインとしての座が危ないんだもの」
─────どーいう理由だ(滝汗)
答えるのに否定も迷いもない辺り、ジューダスの今後が心配だ。
というか、ナナリーもハロルドも眼中に入ってないってことですか…?(それはそれで怖い)
がちゃり。
彼女は上機嫌にみんなの待つ(待ってない)部屋の扉を開けた。
リアラの顔を見て、ぎくりと身を強張らせるロニ。ジューダスの顔色も一瞬引けた気がしたのは気のせいではあるまい。
カイルだけがにこやかに笑って「リアラ!」と声をかけてきた。
ホントだ、3分たったらどこ吹く風だよ…。
「カイル…ごめんね。私…」
「ううん!オレこそ。オレ、リアラのことを否定したかったわけじゃないんだ。その、オレはリアラが聖女でも聖女でなくても…傍にいるから」
バカっプルめ。
2人の世界は何者かに怯える仲間たちと隔絶されたところにできあがっているようだった。
「おい、リアラは落ち着いたのか?」
「落ち着けたかったら大人しくクッキーを食べてあげることだね」
「クッキー?」
ひそひそとロニが訊いてきたので答えるとジューダスも身を寄せてくる。
彼らの視線はリアラの手の中のかわいらしい包み紙に集まった。
「リアラが…作ったのか?」
「仲直りの印だって」
「ロニ、失言に気をつけろ」
「お前こそ、うっかり本音をもらすなよ!!」
…それって不味いこと前提の会話だよね。
そう考えるとリアラもちょっと可哀想だと思ったが、にこやかに微笑む様を見るとどうでもよくなった。
「あ、リアラが焼いたのかい?」
「うん、形はよくないけど…」
「形なんていいんだよ、ほら言うだろ?料理は愛情って!」
と言いながらつまんだナナリーの顔は苦笑に変わっていた。
味も気持ちの二の次であるとしても食べられないほどでもないのである。
はお茶を入れようとひとり、表面上ほのぼのした輪に背を向ける。
手伝うと言うありえない名目でジューダスがちゃっかり避難してきた。
逃げそびれたロニがクッキーを口に運び、カイルが手を伸ばし…
「うん、うまい。リアラはいい嫁さんになるぞ〜」
ロニ、誉めすぎて痛々しい。
しかし、ふいに渋い顔をしたカイル。
「…リアラ、塩と砂糖間違えてない?」
カイルはどこまでも素直だった。
「「「「「………………………」」」」」
いや、塩は入ってないんだよ?塩は。
バターの加減だと思うのだが。
皆がぎくりとした瞬間にはカイルの爆弾投下スイッチが押されていたので全てが後の祭りだった。
リアラの壮絶な微笑みと詠唱開始の声を背中に、
とジューダスは正面の窓枠を蹴って部屋から脱出する。
用意しかけていたポットとカップを手にしたまま。
窓枠の下に避難した直後、開き放たれた窓から部屋の中へ吹きすさんだ寒風は逆流して、熱波と共に外へ放出された。
もちろん、誰ともつかない悲鳴も巻き込んで。
「…その茶を入れてくれないか」
「うん」
騒ぎから1枚壁を隔てて隔絶された場所で、ジューダスが手にしたままだった空のカップを差し出す。
は同じく手にしたままのポットから入れたばかりの紅茶を注いだ。
寒空に湯気が暖かい。
背中を壁に預けて雪見としゃれこんだ2人のすぐ上を、ガラスを突き破って何かが正面の雪の上に放り出されたが見なかったことにした。
とりあえず…
命がけで痴話げんかするの止めてもらえないかな…
現実逃避気味のジューダスを横に、ふぅ、と溜息をついて空を見上げるともう一度何かが視界を横切っていった。
──喧騒は、終わりそうに無い。
終。
あとがき**
ジューダス、狙われてるっぽいけどヒロインがいるときはこんな感じでちゃっかり避難できそうな気がします(笑)
リンさんによるキリ番リクエスト989898HIT「D2でオールキャラギャグ・リアラの暴走」
どこらへんがオールキャラなのか謎ですが、リンさんへ捧げます。
この後は外に放り出された2つの物体を追ってリアラが登場することでしょう(もうひと騒動?)
ジューダス、逃げないと殺られる………!!
