あかずきん
「あかずきんちゃん、ちょっといいかい?」
ある日のこと、あかずきんちゃんが庭で遊んでいるとお母さんに呼ばれました。
「何ですか、カーレルさん」
「…仮にもお母さんに向かって他人行儀な敬語、さんづけはどうなのかな」
「その前になぜカーレルさんがお母さん役なのか謎なんですが。」
にこやかにお母さんは、あかずきんちゃんにおつかいを頼みます。
「ちょっと散歩がてらおばあさんのところへ様子を見に行ってくれるかい?…これ、さしいれ」
「はい。じゃあすぐにでかけます」
あかずきんちゃんは素直におつかいを受けるとおばあさんのところへでかけることになりました。
おばあさんの家は森を抜けた先にあります。
「あ、そうだ。あかずきんちゃん」
「はい?」
「道々物騒だから。はい、これ。貸して上げるよ」
「物騒なのに1人で行かせるのってどうなんでしょう?」
「大丈夫だよ。あかずきんちゃん、しっかりしてるしね」
『僕が一緒に行ってあげるよ♪』
出がけにお母さんは、寄り道を心配する代わりに珍しい護身用の剣を持たせてくれました。
『おばあさんは病気なの?』
「みたいだね。1人暮らしだし…だからたまに様子見に行かないと?」
『へぇ〜』
ぽかぽかと暖かい日差しの中を足取りも軽く、歩いていきます。
森に入ると木漏れ日の中、とても心地の良い風が吹いています。
「…あ、狼さん」
「なんだ。───使いか?」
「うん。おばあさんのところへ(多分)お見舞いに。」
「何だその、多分というのは…」
「詳しく聞いてないからわからない。」
森には紫の瞳の狼がいるから気をつけろ、とよく村人が噂しています。
しかし、見た目は鋭く近寄りがたい感じでもあかずきんちゃんは気にしていない様子。
そんなあかずきんちゃんを見て狼はちょっと考えてから、小道の左の方を指し示しました。
「この先はモンスターが出て危ないから、そっちの花畑でも通っていけ。見舞いなら花でも摘んでいけばいいだろう」
「そう、じゃあそうする。時間もあるし」
『坊ちゃん…危ないなら一緒に来てくれません?』
「なぜ僕が」
『いいじゃないですか。警告するくらいなら護衛をしてくださいよ。…どうせヒマなんでしょ?』
「失礼な」
狼は何だかんだといいながら着いて来ます。
せっかくだから荷物=珍しい剣を持ってもらうことにしました。
「…ついでだから花も持ってください」
「僕が持ってどうする。」
「意外と似合うよ」
『狼、って配役結構合ってますよね』
お母さんは寄り道を禁じませんでしたので、あかずきんちゃんは狼と一緒に花を摘んでおばあさんの家へと向かいました。
何事もなく、たどり着いたようです。
「おばあさーん!」
「うおおおぉぉぉ」
コンコン、と玄関の扉をたたくと奥からごついうなり声が聞こえてきました。
「…何か、開けたくない」
「話が進まないだろうが」
『坊ちゃんが一緒についてきている時点で既に大きく筋を逸脱しているんですが…?』
おばあさんは病気なのです。きっと起きてこられないのでしょう。
あらかじめ受け取っていた鍵で扉を開けるとあかずきんちゃんは、中へと入ります。
「おばあさん?」
「我が名はバルバトス…決しておばあさんなどではない!!」
部屋までいくと青い髪のごついおっさん────もとい、おばあさんがものすごい形相でこちらをにらんでいました。
きっと病気で苦しいのでしょう。
「役をもらっておいて、何を言う?」
『そうだよ!ソーディアンチームにすら選ばれなかった悪役なのに!!』
「何を!!?この若造が#」
おばあさんが(シャルティエの余計な一言で)ついに暴れだしました。
相当図星だったのでしょうか。
グサリ。
襲い掛かってきたのでついうっかり狼は、おばあさんに一撃食らわせてしまいました。
「ぐおっ」
「あぁ。すまんな。醜いものには近づいて欲しくないんだ」
「貴様…っ」
「それ以上こちらに近づいたら命はないと思え」
じりじりと狼とおばあさんは睨みあっています。
あかずきんちゃんは狼の後ろで、はらはらとその様子を伺うしかありません。
「なんでもいいから、早くおつかい済まして帰ろうよ?」
その時です。
「あかずきん〜!もう来てる〜?」
玄関先からあかずきんちゃんの双子のお姉さんの声がしました。
『えっ!?何それ。そんなの聞いてないよ?!』
「ハロルドか…何しに来た?」
「あら、ご挨拶ね。あかずきんが危ない目にあってないかと思って来たのに」
「今のところ私は何も困ってません。でもおばあさんがある意味危険。」
「だから兄貴…じゃなくて母さんも物騒だからってシャルティエ持たせたんじゃないの?」
『…モンスターとかじゃなくて「これ」相手に使えって言う意味だったんだ?』
お姉さんは、今日は湖に、何かの薬の材料を取りにいっているはずでした。
いきなり現れたので、みんな驚きましたがすぐ和やかに話をはずませました。
「何をごちゃごちゃ言っているか。我が渇きを潤すために豆ども、まとめてかかって来るがいい!」
「…確かに、ちっこい人ばっかだね」
「ちっこい言うな#」
ちょっぴり疎外感を持ったおばあさんは、怒り狂って斧を振り上げましたがお姉さんはまったく相手にしていません。
「おばあさん、認知症でねぇ。あ、認知症っていうのは昔の「痴呆」のことよ?要するにボケてるのね。
しかもすぐ武器振り回して暴れだすからタチ悪くて」
「ほぉ?末期症状だな。」
「そ、だからお母さんが調べて私が作った薬で定期的に落ち着かせてあげるってわけ☆」
どうやらおつかいというのは今日の薬のレシピと残りの材料をお姉さんに届けるということだったようです。
お姉さんは、天才的な素早さで薬を調合すると、おばあさんに優しく微笑みかけました。
「はい、ちょっと寝てなさい♪」
「うぐっ…」
おばあさんはお姉さんがそっと(注射器を仕込んだ手で)撫でてあげると大人しくなりました。
まるで即・気を失ったかのように見えましたが、きっと気のせいでしょう。
「さ、これで大丈夫。帰りましょ」
「人騒がせな…きっちり封印しておけ」
「わかってるわよ。だから鍵もきちんとかけてあったでしょ?…ところであんた、狼役なのにあかずきんを狙わないわけ?」
「僕は菜食主義だ」
「…あぁ、だから大きくなれないのね」
「23にもなって140cmにも満たないお前に言われる筋合いはない#」
おつかいを無事に済ませたあかずきんちゃんは、
お姉さんと狼と一緒に、お母さんの待つ家へ戻ってお茶にすることにしました。
おしまい。
あとがき**
とりあえず。私の中ではいのまたさんの描いたハロルドは148cmではなく138cmに見えています。そして、狼の配役はジューダスではなく「リオ
ン」に尽きる(なぜ)。
