ジューダスが1人、ラディスロウの中を歩いていると後方から駆け寄る足音があった。
「ジューダス、ジューダスーっ!!」
聞き覚えはあるのだが、微妙に記憶の中とも違う声が切迫したように聞えた瞬間。彼の腕にからみつくものがあった。
「…っなっ!!」
名前を呼ばれたこともあって、突然の襲来にもうっかり降り飛ばさずには済んだ、それは───
「何だ、お前は?」
「何だって…わからないの?」
「…。」
幼い子供だった。
ラディスロウ顛末記
彼の手を捕まえたことに安堵してか切迫した声に反して、表情は固くない。
その瞬間に、名乗ればいいのに「彼女」の中ではいたずら心も思い起こされたらしい。
「ほんっと───にわからない?」
念を押すように訊いてきた。
地上軍拠点は一般人の避難所も兼ねているため女・子供の姿も少なくない。
それでもラディスロウの中は特別で、出入りできる人間は限られているし、子供に知り合いなど無論、覚えが無い。
しかし。
黒い髪、黒い瞳。
なかなか将来有望そうな面立ちだ。
そう言われば物言いといい、年にそぐわない不思議な雰囲気といい誰かをほうふつさせる。
その一方でありえないと思う気持ちがジューダスに沈黙を強いていた。
『可愛いですねぇ…迷子ですかね?』
「バカか…
だろ」
あまりにもな天然系のシャルティエの和んだ声に思わずつっこむジューダス。
うっかりその可能性を口にしてしまった。
シャルティエからは「ええぇええ!!?」と驚愕の声が発せられ、脳内を直撃されたジューダスは思わず顔を顰める。
「良かった、あっさり認めてくれたよ」
「認めたくないんだがな。なんだ、その有様は」
なんだか酷い言葉が飛び交わせる2人。
はかなり下の方からジューダスを見上げて口を開いた。
「ハロルドの実験に付き合ったら…」
「またあいつか」
ソーディアンの研究で余念が無いはずなのに、ちょこちょこどーでもよさそうな事件を巻き起こしては幹部連中を翻弄している。
最近は、新しい興味(もちろんカイルたち)を得たおかげで、矛先を変え、ついでにやりたい放題に磨きをかけているとは彼ら自身には知らされていない事実である。
「それで?ハロルドはどうした。」
「知らない。私もいきなりこうなったから困ってる。あんまりうろついてると兵士に目を付けられるし…既に捕まりそう。」
この格好では何を言っても信じてはもらえまい。
事実を述べるよりその時は大人しく迷子とでも言った方がまだ何とかなりそうなものである。
「だったら探せばいいだろう」
「探してたらジューダスがいたんだよ」
子供になっても頭の回転は変わらないらしい。受け答えはしっかりしている。
内面まで幼児になってしまわなかったのは幸いと言うべきか。
しかし眉をしかめて見上げている様は…
『いやぁ、可愛らしいですねぇ』
「「和むな、そこ#」」
1人でほんわか花を飛ばしそうなシャルティエの声にハモる2人。
しょうがないのでハロルドを一緒に探すことにした。
幸い彼女はあっさりみつかった。
「ハロルド!」
「あらら、これは見事にお子様ねぇ」
「お前が一服もったんだろうが」
他人事のように腰をかがめて
をのぞきこむハロルド。
次の彼女のセリフはジューダスの度肝をぬいた。
「いいじゃない。結構つりあいとれてるわよ?」
『いや、低すぎだから』
「何の話だ#」
支離滅裂な会話を繰り出そうとして話を逸らそうとする(?)がそうは問屋が卸さない。
「ハロルド、元に戻す方法は?」
「6日もたてば戻るわよ」
「長いよ!」
「即効性の薬があるんだけどねぇ…?さっき外門のところで落としちゃったみたいで。」
「…拾って来い」
「そんな犬じゃあるまいし」
話が飛ぶ飛ぶ。
しかし全て理にはかなっていたりする。外は雪。
探すのには必要以上の労力が要りそうだ。
「いいよ、自分で探しに行くから」
あきらめムードの
はさっさと部屋を出ようとする。
結果としてお子様1人、放って置くわけにも行かずジューダスが手伝うことになった。
* * *
「うーん…わらの中に落ちた針を探す気分だ」
目の前には雪原が広がっている。
「動ける範囲なんて決まっているだろ?いいから探…」
『坊ちゃん!後ろ!!』
そして、そんなときに限って現れる大量のモンスター。
「ちっ…!………」
「…………………」
『…………………』
更に、ジューダスが剣を抜いたところで気づく新事実。
「ごめん、今、剣とか使えないし」
「くっ、役立たずめ…っ」
「うわぁっ!!!」
庇いながらモンスターの相手するより、撤退のほうが早い。
ジューダスは
をかっさらうように担ぎ上げると拠点内に駆け戻った。
「ジ、ジューダス!!どうしたのその子!?」
結局、危険な探索は断念し、息を切らせつつそのまま部屋に戻ると【ジューダスが片腕に子供を抱え上げている】というありえないシチュエーションに仲間たちは騒然となった。
「かわいい〜」
「おい、犯罪は割りにあわねぇぞ?」
「お前と一緒にするな#」
仲間たちは珍しい生き物でも拾ってきたかのような勢いで寄ってきて
を眺め回している。
そういえばジューダスと
以外の…つまりは今取り巻いている面々は揃って子供が好きそうだ。
などとどーでもいいことを考えつつ言葉も無い
の様子にジューダスがため息をつく。
「どうしたの?」
「これは…」
だ、と言おうとしたジューダスより早く
が口を開いた。
「迷子なの」
「は?」
「ママとはぐれてるところをジューダスのお兄ちゃんに連れてきてもらって…」
「こ、こら
!!!いきなり何を言い出す!」
「
?」
何を思ったのかそうジューダスの首に手を回して困ってますを訴えた
の口元には、次の瞬間はにかむよう…にしか見えないが──ジューダスには妙にうれしそうに見える───な笑みが浮かんだ。
………遊ぶ側に回る気か。
それを認めたジューダスはすでに展開に乗り遅れていた。
「そう、お姉ちゃんとおんなじ名前なの」
「へぇ〜
ちゃんか〜。なんか顔も似てるね?」
天然なカイル。
もっとも気づけと言う方が無理か。
「ジューダス、珍しく親切だと思ったらそういう理由なのか?」
どーいう理由だ、ロニ。
「いいじゃない、いいところあるわよね」
「違っ…これは…」
「まぁまぁ照れなくてもいいじゃないか。子供嫌いだと思ってたけど、感心したよ」
総能天気・ポジティブなメンバーはこうなると収集がつかない。
…そして人の話など聞かないものだ。
頭を抱えたい気分のジューダスの横には、なんだかんだいいながらハロルドが薬を作って持ってくるまで必要以上に機嫌のよさそうな
(子供版)の姿があった。
子供に寛容(実は呆れて諦めムード)という珍しいジューダスの姿を、仲間たちにご披露させつつ─────
あとがき**
『それにより、
が幼児化。ジューダス、どうする?ア○フル〜♪(殴』
…というコメントから拍手用のIFシリーズとして作成したところ、長くなったので短編入りです。
更にこれくらいならIFでなくてもあり得そうだから(笑)。
投票&コメントくれた方々、ありがとうございました!
