未来から返ってきたその時。
「今日は城でゆっくり休んでいきたまえ」
「ありがとうございます!ウッドロウさん!!」
「あぁ、 君とジューダス君、といったかな…ちょっと話をしていかないか?」
ヤツはそう、2人だけを残して衛兵すらも下がらせた。
それは2度目の謁見。
VSウッドロウ−TOD2編
あからさまな采配にジューダスは仮面の下で舌打ちでもしそうな勢いだった。
いや、実際していたのだろうが彼まで聞えなかっただけの話だ。
既に彼らが誰であるか気づかれているのだとすればそんなことしたところで何も好転はすまい。
呼ばれた
は大人しく体ごとウッドロウ王に向き直る。
「何かご用ですか?ウッドロウ王」
「あぁ、昔話がしたくなってね。ウッドロウ王などと水臭い…君にならウッディと呼ばれても構わない」
さっそくこわれやがったよ、王様。
「いえ、面識が無い方を…それも名だたるファンダリア王を呼び捨てなど恐れ多い」
散々フィリアやマリーには「正体ばれても問題なし」路線だったのにウッドロウにはとことんシラを切るつもりらしい
。
そんな様子にジューダスは顰めていた顔を解いて、フッと嘲り笑うような笑みを仮面の下の口元にたたえた。
「いやいや…君たちとは会ったことがあっただろう?」
「気のせいじゃないですか」
「そうか、ではデジャヴと言うやつかな…それとも運命的なものなのか…」
ある意味、運命と言えば運命だ。
でもきっとそれは彼の言う意味とは大きく異なるに違いない。
よって、スルーすることにする。
「気のせいです」
彼のポジティブシンキングぶりは相変わらずでそんなことではもちろん引き下がらなかった。
「そうか。まぁそれもいいだろう」
その言い方。
すでに正体について確信を持っていると誇示していると見た。
「実は、君が昔の知り合いにそっくりでな。その人は私と添い遂げられずに亡くなってしまった。うりふたつな君が私の前に現れたそのことに全くもって運命を感じてな…」
すると今度は違う方面から攻めに転じるウッドロウ王。
さりげなく理解不能なことを言った事実にはスワヒリ語くらいの理解力でもって流してしまうことにする。
18年前もそうだった。
なんだかわからないが
は彼に気に入られて、無駄に意味の無い論争を繰り広げた経験がある。
それもその多くは超がつくほどポ ジティブシンキングな彼の妄想の元に。
一歩近づかれれば一歩退く。
そんな感じで油断も隙も無く人一倍のパーソナルスペースを保持する
に、結局彼はその距離を縮めることは叶わなかったが(むしろ離れたと言える)。
彼は彼らを隔てる深い断崖絶壁もなんのその。
そこにあるはずのない見えない橋を渡って侵攻しようとする。しかも、見えないと言うより、そこに道がないなら作らせるく らいの物凄パワーな王様っぷりで(ハイデルベルグの兵士は喜んで従うであろう。おそろしい国だ)。
さて、そんな彼はなぜかリオンとも相性が悪かった。
というか、これほどマイペースに人を振り回そうとする王様思考に、パーティ一の一般常識を誇る彼が忌避感を覚えない訳はないのだ。
つい、耐え兼ねず一言発してしまうとそこにまたウッドロウがいちいちからむからどうしようもない。
誰が誰を巻き込んでいるのかわからない構図がこの3人が揃うと、できあがってしまう。
此度の巡り合わせもそんな嫌な予感を覚えつつ先行きに暗雲が立ち込めるのを
は確かに見た。
「ほぅ?亡くなったと言うが、それをいいことに御都合主義にとらえるようでは語るに落ちるぞ」
できるだけ聞かない様にしていると代わりにジューダスが一矢報いてくれた。
のため、というよりはやはり個人的相性の不一致により馬鹿者が、といったように。
「ふっなんとでも言うといい。彼女はもうこの世にはいないのだから」
逆効果だった。
「奇遇だな。君もかつての知り合いにそっくりだ。
君はいくつか知らないが彼は年の割には成長不足と言った感じでな。剣の腕は良いが女性を任せるには不安なほど細腕だった。」
「…」
売られたケンカに無言で殺気立つジューダス。
しかし、「彼」が直接言われている訳ではないので怒る訳にも行かず。
つまり腹を立てると言うことは自分が誰であるかを認めてしまうと言うことで。
また始まったよ。
は傍観にまわっている。
「そうか。僕にもお前に似た知り合いがいてな。
何も知らないやつからは慕われていたようだが、事実は物事を勝手に誇大解釈して妄想に走るロクでも無い男だっ た。」
「それは気の毒に」
「あぁ、全くな。今頃は過去の記憶は封印してどこぞで英雄気取りでもしているんじゃないか?例えば自分の邸宅のエントランスにタペストリーを飾ってみたり」
このハイデルベルグ城のエントランスホールには四英雄の活躍を題材にしたタペストリーがある。
「お前も言いたいことがあるんだろう?この際だ、言ってやれ」
「え!?」
いきなりふられてふと考え、それでもせっかくの機会なので言わせてもらうことに決をとる。
「…あぁ、あったねそんなこと…
ジューダスの知り合いの話は置いておいて、あのろくでもない博物館何とかなりません?」
言うからには気を抜いていては太刀打ちなどできない。
は気持ちを切り替え確固とした意志の元に明瞭な声でそう言い放つ。
「ろくでもないとは…どの辺りがかね…はっ!!!
そうか、すまない。君に良く似たあの人の紹介に言葉が足りなかったな。
今度、私の婚約者であった旨を一筆加えておこう!」
「へぇ…それは王様に翳のあるエピソードが出来てますますドラマモテしそうですね…」
なんだか早くも、どーでもよくなってきた瞬間だった。
それなのにジューダスが肘で突いてくる。
真面目に一泡吹かせろ、とばかりに。
やや冷めた頭のままとりあえずここへ来て思ったことを端から訴えてみることにした。
「…実は私、学者なんです。その博物館の、特に18年前の記述については真偽の程が怪しいんですけど何か隠されてません?」
「例えば何かね」
「…18年前の元凶とか」
「さぁ、言われていることが良くわからないな」
ここでヒューゴ親子。とでもしゃあしゃあと言うようなら本気で殺意が芽生えたに違いないだろうが残念ながらというべきかそれで良かったというべきか ウッドロウはとぼけただけだった。
いっそ切れたら楽そうだが、それについても残念ながら構えるべき銃は壊れて右手の壁のほうで残骸と化しているので微妙なところである。
「記憶障害ですか、お若いのに。」
ふ、と溜め息を吐いて伏し目がちになると隣でジューダスが仮面の下から見事な嘲笑を放っている。
半分本気だったのがまた彼にとっては面白かったに違いない。
「記憶障害といえば彼女も記憶が無かったな…
君はどこの生まれかな」
「…」
薮蛇だった。
「セインガルドだ」
「ほほぅ?君は知っているのかい?」
「あぁ、知っているも何もずっと一緒なのだから聞くだけ野暮という ものだろう」
「セインガルドといえば残念だったね。ダリルシェイドも今や廃都…実質このファンダリアこそが世界で最も住みやすい国だろう。君たちも永住してみないか」
明らかな皮肉。
個人的にはアクアヴェイルの方が馬が合いそうだが、仮にもリオンの生まれ育ったダリルシェイドに対する冒涜に隣で何かが切れる音がした。
「ふん、発展というより周りの衰退に便乗して台頭するような国などたかが知れている」
「ふっ真冬ともなれば雪の下で食物を貯蔵できる素晴らしい国を侮るなかれ!」
「バナナで釘が打てるから何だというんだ。いっそ絶滅危惧種の皇帝ペンギンを繁殖させるくらいのことはしてみたらどうだ」
「かまくらと鍋といえば冬の情緒、その味を知らんとは同情に値するぞ」
「吹雪に埋もれて出られなくなるのがオチだろう」
どんどん低レベルないい争いになっていっている気がするのは気のせいかな、2人とも。
御国自慢にことごとくメスを入れるあたり頭の回転が速くないと出来ないやりとりであることは認めよう。
「貴女のような人には美しい白銀の国こそが似合う、 これを機会にぜひ!この城に…私の傍に逗留して頂きたい」
「いきなり告白せんで下さい」
御国自慢に飽きたのか、再び矛先が
に向いた。
玉座から降りてきて手を握ろうとするとジューダスがそれをびしりと叩き落とす。
あ、何か前にも見た光景。
と思った瞬間には
はジューダスの腕に抱きかかえられていた。
「………………………」
滝汗─────
ふっと耳元で再び嘲笑の気配があった。
「身の程をわきまえろ」
それでもって、激しく視線がぶつかりあう気配。
…何だか恐くて顔を上げられません。
が硬直していると、その肩越しに見えたのは…
「ジューダス、
…?」
リアラだった。
思わぬ来訪者にジューダスの腕の力が緩む。
けれど彼はなぜか離してくれなかったのでそのままリアラに呼びかけた。
「リアラ〜!」
「2人が遅いから心配になったんだけど…何してるのかしら」
「リアラ君、大切な話をしているのだ。もう少し待っていてもらえないか」
「待つ必要はない。いますぐ戻るぞ」
「逃げるのかね、ジューダス君」
「逃げるも何も…状況を見てから物を言ったらどうだ?」
「あの…」
「状況というとあれかね。「愛があれば年の差なんて」と 彼女に言わせて大団円と?」
「言って欲しくばせめてそのむさ苦しい髭を落としてきたらどうだ?」
ジューダス、良い点、ついている。
男は威厳だとか渋さだとか、よかれと思って伸ばしても女から見ればむさ苦しいことこの上ないケースも…決 して否定できないのだから。
無精ひげが似合う男はナチュラルにかっこよくてもわざわざ伸ばして似合わないのは泣けそうだ、などと知らない誰かを思い浮かべながら思ってみたりす る。
そして、なげやりに思うその先に、
はリアラが困ったような…見様によっては「どうしてやろうか」といった顔をしているのを見た。
「あの、2人とも…」
おずおず。
「「 部外者は黙って{いろ/いたまえ}! 」」
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「エンシェント・ノヴァv」
ずどーん。
─終劇─
あとがき**
というわけで、書き始めたのはちゃんとハイデルベルグに入った頃なのになぜか今ごろ出来上がりました。
相変わらず、ひたすら会話を楽しんで頂ければ光栄です。もう、…なんていうかですね…
オチもなくてすみません(汗)
リオンは面と向かって真っ向勝負するけど、ジューダスは
一歩下がった感じがあるのでちょっと苦労しました(笑)
オマケ**その後。
リアラ「愛があれば年の差なんて…
に手を出そうなんて一千億年早いけどそのセリフには同意かしら…(うっとり)
「一千億年経っても嫌です。リアラさん。でもまぁ…年は気にしないかなぁ
シャル『年下でも可?
「それは…相手がそれで良いって言うなら。
ジューダス「…
シャル『気にしないですよねぇ、坊ちゃん。
ジューダス「なぜ僕にふる。
リアラ「……(99,999,999年早いわよ眼付け)
ジューダス「殺意と殺気と邪気の混ざった目で僕を見るな。
