お約束の時間 AM8:45
ロニがターゲットになった「お約束」からすぐのこと。
「なんで俺がいつもこんな目に合うんだ! これもお約束なのか!」
「お約束だろう」
「お約束だね」
「ふざけんな!」
そんなことを言っている間に、ハロルドがまたぽちりとボタンを押した音がした。
「!!」
「おい……!!」
「隙も何もあったものじゃないねぇ。……で、今度は何が起こるっていうんだい?」
悟りが早いナナリー。さすが肝っ玉だ。
「ん~……」
しばし。
ハロルドがボタンしかついていない見た目から性能が全く理解できない機器をひっくり返したり表にしてみたりしている。
これは……
「故障したかしら」
「良かったな、これで平和が訪れる」
「よくねーよ」
全員がロニを振り返った。
「よくねーんだよ。俺の存在感!アイデンティティ!どうなってんだ!」
「それは自分で見つけてくれるかな」
「もういい! 俺は巻き込まれる前に逃げる! ムードメーカーのいない一日をさみしく過ごせ!!! 戦闘だって壁になるやつもアイテム係もいないんだからな!」
……………自虐ネタなのだろうか。
ロニは本音と建前が入り混じる発言を残してものすごい勢いで、出て行ってしまった。
「どうしよう! ロニが家出しちゃった!」
「ほっときな。腹が減れば帰って来るさ」
「ムードメーカーはカイルいるけど、いじれる人がいないと困るね」
その頃ロニは……
ことのほか近くに潜伏していて、宿の外からその様子を見ていた。
「わかっている。俺の存在感はそれほど小さくない…! いなくなってはじめてさみしさに気づくものさ」
ふふふ、と笑いながら成り行きを見守る。
ここからロニ視点でお送りします。
「とりあえず、ハロルドの機械が壊れたのだから朝食をゆっくり採ったらどうだ」
「そ、そうだね。お腹もすいたし……」
あれ?
「だいぶ遅くなったし、お昼も遅らせる?」
「じゃあ普通に食べよ。オレ、オムライスで!」
カイルは鳥頭なので、割と幸せなことがあると前の不幸が吹っ飛ぶタイプだ。
残念ながら、ふわふわたまごのオムライスが来た時点で小さな花を飛ばしてスプーンを口に運んでいた。
カイルぅぅぅーーーーー!(泣)
「どうしてかしら。仕組みとしてはそんなに難しくないのに」
「これだけのことをしでかして、難しくないとは一体」
食べるより むぅ、と機器を前に腕組みしているハロルドと、興味を示している。
「ロニのことはどうするの?」
り、リアラ……!
奇跡が起こった。さすが聖女だ。
リアラがゆらいだロニの存在を声に出して呼んだ。
「どうするって……代わりでも見つける?」
え、ちょっと待って。
代わりとかみつけるほど長い間、俺、いないわけじゃないよな?
ていうか、、お前はそんなことを言う子か?
違うだろう! いなくなった俺をフォローしてくれる子だ!
俺は信じてる!!
「………お前にしては珍しい提案だな。真理だが」
ジューダス、おめーはブレねーな。
ほろりと泣きそうになるロニののぞく窓から見える光景は、通常運行だ。
「代わりっていったって、そんなに早く見つかるもんじゃないだろ?」
ナナリー……!
「あたしのサブミッション受けて平気なくらいバカで丈夫じゃないと」
違う意味でほろり。
「愛がある表現ねぇ。なんだかんだ言ってナナリーが一番ロニのこと心配してる?」
「な、なんでそうなるんだい! 違うよ! 大体今出て行ったばかりなんだからすぐ戻って来るだろ! 代わりとか……」
「つまり戻ってくるまで代わり見つけるなんてとんでもないとかそういう……」
ぐふふと、ハロルドはあおっている。
もちろんナナリーは何の疑問もなくあおられている。
天才様の思うつぼだ。
「違うってば! 代わりいるならいますぐ穴埋めて次に行っていいしね!」
………………。
ロニはそっと涙をぬぐった。
「私はたまにいじれる人ならそれでいいけど、問題はアイテム係」
そこなの!?
「壁も必要よ。私とリアラは術に徹したいし、仮にベルクラントが発射された時に二人くらいは下に隠れればなんとかなるじゃない」
俺の扱い……
「ベルクラントはこの歴史上では海の藻屑になっているぞ」
「じゃ、エンシェントノヴァが降ってきたら3人くらい行けるかしら。あれ、ピンポイントだから」
「今のロニの体力だとカイルとジューダスに立ってもらって、誰か二人しゃがめば4人は行ける」
おかしくねーか? どういう計算?
それとも組体操か何かなの? 俺、その体勢だとつまり直立で真横に担がれてるってことだよな?
「それは必要だな」
「エンシェントノヴァなんてそんなに降ってくるものじゃないでしょ?」
いや、お前が一番発動率高いから。特に街中で。
ひゅっ パリン!!
(ぎゃあー!)
声なき悲鳴をあげる。窓を突き破って飛んできたフォークは、音を立てて道反対の店の看板に突き刺さった。
「リアラ、どうしたの?」
「どうしたのかしら。なんとなくあの窓のところに邪悪な気配を感じて……」
邪悪なのはどっちd…
ひゅっ ズドン!!
二本目はすでに割れている窓を通過して、フォークのすぐ隣に刺さった。ナイフのようだが、柄まで埋まっていて何が刺さっているのかわからないし、わかりたくもない。
俺、帰っていいかな……(どこに?)
「えっとね、代替はウッドロウなんてどうかな」
「お前、あいつを再びパーティに加えたいのか?」
「だって、アイテム係と壁なら十分じゃない?」
確かに俺と同い年で仲間だったかもしれないけどそれから18年経ってるから!
王様だから!
ブランクありすぎて、すぐに逝っちゃうだろ!
「壁としては薄くないか」
「リバースドールは割と貴重だから、ライフアボトルなら私が持って管理する」
再利用。
「いくらなんでもウッドロウさんに壁はダメだよ! ……あ、コングマンさんなんてどうかな。元チャンピオンだし、体力凄そう!」
ちょっと待てカイル。
問題はそこじゃねーよ。
俺の存在忘れてねーか?
これは単に目の前の問題に対する提案なので、ダメージはさほどなかった。
天然万歳。
「あの人は暑苦しいから嫌だな。年中大声でしゃべってそうだし」
「は静かな方が好きだもんねぇ……」
「うざいのは嫌だ」
あれ? おかしくないか?
今更にしてロニはその違和感に気づく。
最初にご無体とは思ったが、の言動が、妙にきつい。
しかもズバンと直球過ぎる気もする。
これはまさか……
「ハロルド、いい加減その装置を捨てろ」
「嫌よぅ。まだ3回しか実働してないじゃない。でもおっかしいわねー、どこも壊れてないみたいだし……」
……壊れてないっつーか発動してんじゃねーの? 何かのお約束みたいなのが。
「まぁあいつがくだらないことで出て行って、こんな感じってのもお約束と言えばお約束だけどねー」
「そうなのよ。だから私は思うわけ」
?
数人から疑問符が返ってきた。
「窓の外から覗いているロニが、おとなしく出てきたらこの『お約束』は終わるんじゃないか、って」
「わかってるんじゃねーか、てめーはぁ!!!」
「「ロニ!!」」
……。
ここでロニの登場に、名前を呼んだのはカイルとナナリーの二人だけだ。
つまり……
「お前らみんなグルか!」
「グルだなんて。どうでもいいっていうか」
リアラが指先を口元にあてて、さり気にとどめを刺している。
「おかえり。楽しかった?」
「楽しくねーよ! 何か使い道を間違った刃物が向かいの店に突き刺さったぞ!」
「窓ガラスの弁償しておけよ」
「俺!?」
ジューダスはそちらを見もしないで、遅めの朝食を口に運んでいる。
ロニは何か言いかけたが、無言でうふふと笑顔を浮かべるリアラを見て口をつぐんだ。
「え、じゃあ今までのって全部、その装置のせいってことかい?」
「そうね。……多分」
多分じゃねーよ。
「お約束すぎて判定微妙な部分もあるんだけど、全員に作用するわけじゃないのは前回と一緒。がみんなの代弁を全部してくれたから、今回一番作用されたのはかしら」
「……まぁ害はないから別にいいんだけど」
よくねーんだよ。
なんだよ、みんなの代弁って。
「いつも通りっていえばいつも通りだから、お約束ってことで♪」
「なんだかんだ言って割食ってんのはまた俺じゃねーか!」
今日も朝から、カミサマに愛されているロニだった。
2020.3.6筆(3.7UP)
まだ8時45分です。
リアルタイムにかかった時間を足してタイトルにしてる感じです。
