メーター
- 突発リクエスト -暇つぶし計量ゲームとか(永華さんより)
「暇だ……」
ぽつ、とそう口にしたのはロニだった。
当然、聞きとがめたメンバーから半眼に近い視線が流れてきたが、特に気にはしていない。
ので、それ以上の発言が主にかいるとかだとかの耳に入らない内に釘を刺したのはジューダスだった。
「お前は状況を理解しているのか。暇だとかそういう場合ではないだろうが」
「そうだよ、こんな世界で暇だなんて……!」
時は改変された現代。
ドームの中は平和以外の何者でもない。
風もない、何の香りもしないそんな中では感覚が鈍りそうな事態であることは認めるが、ナナリーだとて事の深刻さは理解しているつもりだ。
しかし、珍しくロニの言い分は正論だった。
「だってよ~何にもすることないんだぜ? おいしい料理の店もないし、きれいなウェイトレスのお姉さんもいな……あ、いやいや、とにかくだな」
ナナリーから矢を射るような視線が飛んできたので、慌てて訂正する。
「何にもないんだぜ? 今日はもうここで休むんだろ? それにしたって、時間はあるし、せっかく街なのに見て回るものも、遊ぶ場所もないなんてよ」
「それは確かに……そうかもしれないけど」
物品も無人配給なので、食材ですら買う必要はおろか、選ぶ必要もない。
ナナリーにしてみてもその物足りなさに至ってしまえば確かに、としかいいようがない。
日々の営みそのものがなくなってしまっているようなものなのだから。
「散歩くらいはできるだろう。人間観察でもしてきたらどうだ?」
なげやりなジューダスの発言。
「俺はお前と違って、ストイックにできていないんだよ! 文明人なんだ!!」
「……」
どちらかというと、ジューダスの方がかつてオベロン者の技術に触れていたという意味でも、文明人なのだが。
「じゃあ、ひたすらそこに生えているクローバーを数えてみるとか」
「……それ、拷問か?」
ドーム内にも緑や自然はあるわけで、広がるクローバーの絨毯を指さしたにロニは一言だけ正直な感想を返す。
「わかったよ。付加価値をつけてあげる」
そういって適当に片手で束にしてクローバーを摘んだ。
「この葉っぱを一枚ずつ抜きながら『俺はモテる 俺はモテない 俺は一生モテない 俺の戦績百戦鈍磨』と占いをするんだ」
ジューダスとナナリーから同時に「ふっ」「ぷっ」と笑いが返ってきた。
「当たりの確率が低すぎるだろ! せめて俺はモテる、俺はすごくモテる、俺はモテモテマン、俺は……」
ぽいっ。
は自ら摘んだクローバーの束を大地に返した。
「ロニにとっておもしろいことってなんだろうね」
今まさに、割とジューダスたちにとっては面白いことが目の前で起こっていたわけなので、こんなふうに過ごしていれば就寝時間なんてさっさと訪れるのではないかと思うジューダスとナナリー。
とりあえず、は一人遊びが得意なので時間を持て余している風はない。
あっ、という哀しい声を思わず漏らしたロニはため息とともにに言った。
「お前はあんまり考えてくれなくていいから」
「いや、もっと考えてやれ」
「そうだね、名案が浮かぶかもしれないし」
「柄にもなく親切なこと言って、お前らの暇つぶしになりそうだからだろ」
一応見抜かれていたが、そこはさして問題ではない。
「どうしたの?」
デート(?)にでかけていたリアラたちが戻ってきた。
「いや、何か面白いことないかなーって……」
そして、会す一同。
全員を一通り見渡したロニから思考の間が流れ、またろくでもないことを思いつきそうな気配をジューダスは事前に察知している。
そしてふと。
ロニは、いきなりを肩口に担ぎ上げた。
「うわぁぁ!!!」
戦闘中でさえ、滅多に聞くことができない本気モードの叫びが上がる。
全員、何が起きたのか全く理解できずに呆然。
「ちょ、何するの!ロニ!! 下ろして!」
だけは速攻その事態から脱すべく荷の入った麻袋のような担がれかたをしたまま、暴れている。
が、担ぎ方はもちろんロニの馬鹿力もあってちょっとやそっとでは揺るがない。
「あんた! 何してるのさ!」
「要するに、ここにあるもんで遊べばいいんだよな♪ 全員担いでみて体重を当てる。名付けて、目方でド……」
バキっ
ロニが言い切る前に、の拳が後頭部方面から、ナナリーの拳は正面から見事にヒットした。
「ぐぉぉぉぉ…」
ナナリーの方が痛かったらしい。
出遅れたジューダスはボディーブローとして入る予定だった握りかけの拳をほどいて、顔面を両手で覆ってうずくまる阿呆を見下ろした。
「馬鹿が…」
ある意味、トドメ。
「大体、なんで私なんだ。もっと担ぎやすい人は他にいるでしょう!?」
珍しくが本気でご立腹だが、問題はそこではない。
「女の体重を計ろうなんて……サイテーだね!あんた!!」
まぁそちらの方が、的を射ている。
というか、もそれで珍しく拳で反撃が出たのだろうし(多少意味は違うのであろうが)……カイルとリアラは意味が分からないとばかりに目を点にしている。
「な・ぜ わたしを最初に担ぎ上げた?」
真理の追及が始まっている。
しかし、答えはロニが持っているわけで簡単だ。
「だってよ、こいつ持ち上げたらその場で暴れてサブミッションだろ?」
……それ、ナナリーの暴れる力がロニのパワーを上回っているってことだよね。
「かといって、男を持ち上げる趣味はねーし」
「僕にも男に担がれる趣味はない」
ジューダスは幼いころから剣士として訓練をしていたため、一撃でロニを気絶させるくらいの力も実はあるわけで。知らないとはいえ賢明な判断だ。
「リアラは見るからに軽そうだし、体型的にもが中間地点っていうか、目安になりそうだしよ」
「するな、そんな目安に#」
お怒りが再発しかけている。
「何より、いきなり持ち上げても一番痛い目に合わなそうかなーとか」
残念だったな。そこは一番持ち上げてはいけない人間を持ち上げてしまったんだ、お前は。
一瞬遅れて射貫くような無感情なの視線に気づいたロニは、びくりと身を固くしている。
ジューダスは遠い目でロニを見やってため息をついた。
「ロニ……私は人に触られるのが嫌いなんだ。知ってるよね?」
「し、しししし知らねーよ?」
ある意味、ジューダス以上の他人に触られたくない境界を持っている人間である。
「じゃあ聞こう。仮に私を中間地点として計測したとして、あとはどんな順番で?」
興味の方向もあるのか、質問がロニの思っていた遊び方に戻った。
「あ? 順番つーか、俺の予想だとジューダスと体型的にも近いだろ? だからそこは大体同じと推測して……」
「ふざけるな」
シャキン。
ジューダスの剣が抜かれた。
座ったままのロニからだと、異様な圧迫感で見下ろされている形になる。怒りのオーラもあいまって、本気で待て待て待てと座ったまま後ずさっているロニ。
仮にも男性が、女と同じくらいの体型とか重さとか言われて、不名誉には違いない。
先を促す。
「次は?」
「リアラはどう見ても一番軽いよな。だからふつーにカイルは身長から言ってよりはその上だろ? で、わからないのがナナリーとカイルの上下関係か?」
ふーむ、と考えかけたところに
ズドドドドドド!!
と、弾丸のような弓矢がロニをおかしな形で背後の木に縫い留めた。
「あたしが……なんだって……?」
このパーティにおいて、明らかにダントツで体型的に大きい・重いのはロニであろう。
ので、自分は除外して順番付けを行った結果。
……そうなる。
ジューダスが考えても、が考えても、たぶん、大まかな推測は一緒だ。
何分、ナナリーは身長がそれなりにあり、カイルは身長が低いわけでもないが童顔のせいか、小さく見える。
故に。
ここを比べてしまうのは、地雷原のど真ん中に立つようなものである。
「おっおちつけって! お前、身長はあるだろう!? だからその分を差し引いても……胸もそんなにあるわけじゃな…」
ここは、まず。
ロニが落ち着くべきだっただろう。
が体重について触れられたくないのは、身軽さが取り柄だと思っているからであるが、世間一般的に体重だとか、胸の大きさだとかは……女性に云々いうものではない。
言葉とは不思議なものだ。
身長があって、スレンダーに見えるからその分わかりづらい。とでも言っておけば十分、ナナリーの立つ瀬もあったろうに。
「ロニ…サイテー」
「えっ、俺が悪いのか!?」
ついにリアラからも白い目で見られる事態に。
「仕方ないだろ!? ほんとにカイルとナナリーは体重どっちが重いかよくわからねーんだから!」
「胸がなくて悪かったねー!!!!」
ワイルドギース発動。
「風のないドームの中に、やっと空気の流れができたね」
「随分、荒風のようだが」
いつのまにか一歩引いて眺めているとジューダス。
ジューダスは思う。
すべての発端は、仲間を計量などというよくわからない暇つぶしを考えたロニ本人に違いないが、完全に計量1人目を誤った。
そんなに暇ならカイルでも持ち上げて童心にでもかえってふり回して遊んでいればよかったのだ。
デュナミス兄弟にとって、ふつうに楽しい時間が送れたことだろう。
「ど、どうしよう!?」
「いつものことだろう。放っておけ」
「そんなことをしているうちに、そろそろ夕飯の準備をする時間かな」
空を見上げる。ドームの中から見える光は斜陽になっていた。
「今日の料理当番はロニです」
聞こえていないが、のアナウンスが非情にも告げられた。
「オレ、オムライスがいいー!」
「作る気力が残っていたら、できるんじゃないか?」
とばっちりにあって、自分がねだられる羽目にならないことを、ジューダスは祈るばかりだった。
2019.10.27筆・UP
なんと!昨日リクエスト募集したら早速リク来たので、早速早速…
書けたー!(嬉)
考えるより書いたほうが早いよ、と実感できました。自信もつくね。
ありがとう、永華さん。
……内容的に永華さんの思っているのとは明後日の方向行ってる感じですが、楽しんでいただければ幸いです。
モチベーション上がったー
