--シンデレラ--
昔のお話です。
シンデレラと言うかわいらしい女の子がいました。
しかし、シンデレラはいじわるな継母に雑用を押し付けられたり義姉たちにいじめられたり。
まるで、召使のような日々を強いられています。
ある日、継母と3人の姉たちが美しいドレスを身にまとってシンデレラに言いました。
「シンデレラ。今日はお城で舞踏会があるのです。あなたは帰って来るまでに部屋のそうじをすませておきなさい」
「…なんで同じ聖女なのに、私がエルレインの部屋をそうじしなくちゃならないのかしら…?」
「貴様は、所詮は相容れぬ者でしかないからだ」
「あんたは黙ってなさい!!大体気味が悪いのよ、そのドレス姿!!!鏡が割れるわ!!」
一番上の姉、エルレインにシンデレラ(=リアラ)は、ほうきを持ったまま黒いオーラを身にまとって訊き返しました。
すると二女のバルバトス(…)がいつもどおり彼女を頭から叱り付けます。
しかし、シンデレラも負けていません。
すかさず切り返すシンデレラを見た一番下のお姉さんが言いました。
「確かにバルバトスが二女役って怖いよね。私、こんなお姉さん嫌。」
「まぁ、バルバトスのことは置いておいて…いいじゃないか、シンデレラ。ナレーターもかわいい、って言ってることだし」
まったく関係ないところからお母さんがシンデレラを宥めてくれました。
「カーレルよ…どこが意地悪な継母か?継母ならば意地の悪さを貫いてみよ!!笑止。」
「おや?バルバトス。私は役に徹しているつもりだよ。
さっさとシンデレラを置いて舞踏会へ行こうと言う私のさりげない心配りが理解できないのかな」
「…わかりづらいです、お母様…」
あはは、と笑いながら二女すら制する様はさすが継母です。
なるほど、エルレインとバルバトスをまとめられるのは彼以外考えられそうもありません。
シンデレラはそれでもすこぶる不機嫌そうな顔をしましたが、ようやく静かになりました。
「わかったわ…行ってくるといいわ。私を置いていくなんて…後で後悔しないでね。」
うふふふ…と笑うシンデレラ。
帰ってきたら家は憂さ晴らしのエンシェントノヴァでなくなっているかもしれません。
しかし、そんなことで動じないお母さんたちはようやくでかけていきました。
「…私を下女扱いするなんて、エルレイン…今度雑巾の絞り汁を紅茶にお見舞いしてやろうかしら」
シンデレラが1人でやさぐれていると扉が開いて、出かけたはずの3番目のお姉さんが入ってきました。
「あら?どうしたのお姉さん」
「シンデレラ…私の代わりに行ってきたら」
「えっ!?」
「舞踏会に興味はない。」
時々物凄くわかりやすいお姉さんです。
「…で、でも…私が行っていいの?」
「どうせ魔法でドレスアップしてハッピーエンドなら、普通に参加してもハッピーエンドに違いない」
お姉さんはものすごく道理なことを冷静に言ってのけます。
「ほら、ドレスも似合うでしょう?」
「ありがとう!お姉さん!!」
だからシンデレラはこのお姉さんが好きなのです。
かわいらしく着飾ったシンデレラは感極まってお姉さんに抱きついてからパーティに出かけていきました。
さて、残った3番目のお姉さん。
ようやく静かになったので自分の部屋に戻って寛ぐことにしました。
が。
「こら、待て」
誰もいないはずの部屋で呼び止める声がします。
振り返ると、いつのまにかそこには魔法使いが立っていました。
「なんだ、リオンが魔法使い役?」
「なんだじゃない。お前はやる気があるのか?」
「…これっぽっちも」
「ほほぅ?」
ドレス──舞踏会──王子様。
いずれも夢見がちなシンデレラは大好きなシチュエーションでしたが、お姉さんは全く興味がない様子。
魔法使いは、微笑みながらも血管マークを頬に浮かせて言いました。
「そうか、ならばお前がこれからシンデレラだ」
「嫌だ」
「お前に拒否権はない」
まぁ流れを乱したのですから当然の責任問題と言うべきでしょうか。
「シンデレラでもいいけど、舞踏会には行かないよ?」
「…お前、『シンデレラ』の話、知ってるか…?」
呆れた魔法使いはひとつ溜息をついてから魔法の杖を取り出しました。
途端に警戒している三女改めシンデレラ。
『シンデレラは、魔法できれいに着飾って馬車でお城に行くんだよ♪』 ←杖。
「この家はかぼちゃもなければネズミもいないよ」
「そんなファンシーな術が使えるか。…馬なら普通に用意したぞ」
「謹んで遠慮します」
「話が進まんだろ!」
魔法使いはピコハンを唱えましたが、用意周到。
シンデレラは耐気絶用にピヨハンを装備していたため無効でした。
「…シャル、実力行使で行くぞ」
『はい、坊ちゃん』
「いや、ピコハン唱えた時点で実力行使じゃ…ってちょっと、やめ…嫌だってばぁぁ…!!」
シンデレラは魔法使いに拉致られました。
* * *お城。
「シンデレラって…もっと平和的かつ夢のある話じゃなかったかな」
「お前がもっと静かにしていればな」
至極現実的な魔法使いは、シンデレラを拉致ったまま馬を飛ばして舞踏会の会場までやってきました。
「夜中の12時になったらここに戻って来い。家まで送ってやる」
「むしろ、今帰ってもいいですか」
「いいか、絶対12時に来い。言っておくが魔法はかけてないから来なかったらその格好のまま置いていくぞ」
魔法使いは人の話は全く聞かず、馬上からそう言い捨てて去っていきました。
いっそ魔法が解ける仕様の方がまだマシだ─────…
そんなこんなで時間は予想以上にかかったものの、
まだ約束までにはしばらくあります。
かと言って舞踏会に参加する気はありませんが、せめて姉たちの顔でも見ていくかとシンデレラはこっそり会場へ足を運んでみることにしました。
「ふふ、小娘が。いくら着飾っても子供じみて品と言うものがない」
「聖女は年増じゃダメなのよ!…やっぱり清楚でかわいらしいのが王道よねv」
…いつからバトルを始めているのでしょう。
姉たち(←配役の変更による)が黒いオーラを振りまいて微笑みあっているので人々は輪を描くように敬遠しています。
「見よ。あの人の輪を。このバルバトス様の気に圧倒されて愚民どもは寄ってこられまい」
「確かに寄りたくないだろうね」
こちらはこちらで別の輪が出来ています。
シンデレラは見なかったことにして帰ることにしました。
「…あ、貴女は…」
誰かに話しかけられた気もしますが、気のせいということにしてつかつかと会場を後にするシンデレラ。
「ちょっと待ってください!」
真っ直ぐに結構なスピードで歩いたつもりでしたが、ついに腕をつかまれシンデレラは振り返りました。
「私と踊っていただけませんか?」
「遠慮します、ウッドロウ王子」
「そんなことをおっしゃらず。この出会いには運命を感じます」
「いきなり初対面の人間に自己紹介もなしに踊れなどと言う上に、国税で夜中の12時まで踊り狂っているような非常識な王族に運命は感じません」
「ははは、これは手厳しい」
振り返ると、浅黒い精悍な顔の王子様が白い歯を見せて笑っていました。
「離してもらえません?」
「踊っていただけたなら」
「もう寝る時間なんで」
「眠りたいほど疲れたなら部屋を用意させます」
シンデレラ、歯の浮きそうな物言いに鳥肌を立てている模様。
一見静かにその場に留まっているようでも、シンデレラの退こうとする力に合わせて王子様も手をひいているのです。
動くに動けない状況に、ちょっと考えてからシンデレラはにこやかに微笑み返しました。
「お相手でしたら姉が3人いますのでご紹介します。────バルバトスお姉さま!!!」
「む?シンデレラ、来ていたのか」
これにはさすがにウッドロウ王子も驚いたようです。
力が弱まったスキをついてシンデレラは腕を引き抜きました。
「あっ!?」
「バルバトスお姉さま。どうぞ、王子様がお相手を探しているようです」
「ふぅむ…?────この様な男は趣味ではない(当たり前)」
「その言葉、そのまま返そう。まずは鏡を見てみたまえ」
む、と渋い眉が寄ったその瞬間です。
「あらvでは私はどうかしら、ウッドロウ様v」
リアラお姉さまが現れました。
「…残念ながら、子供に手を出すほどの趣味ではないのだよ」
ふと、真顔で呟いた王子様の感想は、リアラお姉さまの逆鱗に触れてしまったようです。
「バルバトスお姉さま、王子はお姉さまのお嫌いな英雄なんです。殺っちゃって下さい」
「英雄…!!!!!
ふ、まさかこのようなところで出会えるとは…我が渇きを満たせるかな…?」
ドレスの下から巨大なオノを取り出して、にやりと笑う二女・バルバトス。
これこそ正に宿命の出会いというものなのかもしれません。
「殺っちゃっていいの?一応、リアラお姉さまは英雄を探してたんだよね?」
「だって私の英雄じゃないんだものv」
「ふふふ…バルバトスよ…手並み、拝見させてもらうとしましょう」
英雄抹殺を目論んでいたエルレインお姉様もご満悦です。
ステキなショーが始ろうとしていましたが、その時…
ボーン。
時計塔から12時の鐘が鳴り響きました。
「夜中の12時に鐘を鳴らすとは、なんて非常識な…」
呆れながらもシンデレラは踵を返します。
「あっ…待って、待ってください!!」
「王子様…さよなら!!!!!!!!!」
ダッシュでシンデレラは舞踏会の会場を後にしました。
「は、走りにくい〜」
更にその先では慣れないドレスに、地獄のような長い階段が待ち受けています。
「あっ」
あまりに長い階段にガラスのクツが脱げてしまいました。
クツが脱げるほど走って、よく階段から転げ落ちないものです。
シンデレラはなかなか素晴しいバランス感覚の持ち主でした。
「待ってください!!!」
「…」
物証が残らないようにシンデレラは隠し持っていた銃でガラスのクツを撃ち砕いて城から脱出を図り抜け出しました。
もっとも、姉がいる時点で身元なんてバレまくりな訳ですが。
それでも自分のものをこの場に残しておきたくなかったのでしょう。
「来たな」
「リオン!早く馬出して!!」
「あと3回鐘が残ってるぞ」
魔法使いの乗っている馬の後ろにひらりと飛び乗ると魔法使いの冷静な声が時を告げました。
「ねぇ、ここって律儀に待つ所じゃないよね…?」
『じゃあ、帰ろうっか』
「むしろ、二度と家にも城にも帰ってはいけない気もする」
城の中で巻き起こり始めた喧騒を背に、魔法使いは馬を走らせました。
そして、王子様はといえば。
「ぶるぁああああぁぁぁぁ!!!」
「誰だ、このような者に招待状を出したのは!!」
「お姉さま、おおはしゃぎねv」
ドレス姿のご令嬢を相手に大忙しでした。
朝が来るまでお城では、賑やかなパーティが続いたといいます。
おしまい。
あとがき**
今回は、ナレーションが雰囲気を無視して進行していないですね(だから?)
童話パロにしてキリ番リクエスト永月花音さんによる「バルバトスが出てくるギャグ話」です。
いまいちバルバトスとエルレインの口調がつかめていないようですが、楽しんでいただければ幸いです。
ちなみにどんなにミスキャストでも、リク頂いた永月さん以外からの苦情は受け付けられませんのであしからず(笑)
永月さんリクありがとうございました!
