ロニとジューダスと、3人の日々が続いています。
-- 砂漠の水 -
ホープタウンへ流れ着いて数日…
は相変わらずベッドの上での生活を余儀なくされている。
歩いたりはできるけれど利き手が潰れているので何かを手伝うことなどはできない。
ジューダスとロニはナナリーに連れられ子供たちの面倒を見て(…いるのだろうか)いる間、もっぱらシャルティエを相手に「休養中」であった。
「シャルがいてくれて良かった…さすがに暇で死ぬかも」
『あはは、外出すら禁止されてるもんねぇ…でもこの炎天下じゃ体力だってすぐ尽きちゃうよ。それで正解』
アイグレッテなどと違って室内でじっとしながらできることは少ない。むしろ働くことで日々過ごしているような村なのでそんなことを想定した趣味になりそうなこともなさそうだった。
逆に外に出れば色々と見たり聞いたりできそうだが。
「剣の手入れは昨日やっちゃったしー…木っ端微塵になった銃でもあれば何かできそうだけど」
『例えば?』
「パズルにするとか」
『なるほどね』
破片から形でも再現する気なのだろうか。
気が遠くなりそうだが、まったく平和的な使い道でもある。
それ以前に物騒な物を相手になぜそんな平和的発想がでるのかとシャルティエは思わず笑ってしまう。
「…ジューダスは」
『何?』
「…大丈夫かな。子供の相手とか子供のお守りとか子供の…まぁ色々。」
『うーん、僕も最近
の方についてるから何とも言えないねぇ…でも毎日、もうまっぴらごめんみたいな感じで帰ってくるよね』
そして毎日連れ出されるのだからたまったものではないであろう。
「じゃあその前はどうだった?」
『その前って?』
「…シャルが私に貸し出される前。ここのところ全然仮面取れるような機会もないし、どうかなって」
『そうだねぇ』
僅かに石壁を通した涼しい風が吹き込んでくる。
シャルティエ自身にはそれを感じとる術はないはずなのだが、なぜか感じられた。
の感覚だろうか。
リオンほどではないが、意志の疎通ができる…つまり素質があると言うことは、ある程度リンクもできるということなのかもしれない。
マスターがソーディアンを使うには同調が必要なのだから。
それともコアクリスタルに触れる風を感じているのか。なぜかいままで考えたことのなかったことを心のどこかにかすめながらシャルティエは記憶を探っ た。
『うーん、少し疲れてる…かも』
「…」
の顔から微かな笑みが消える。
心配させるようなことは言いたくないが、事無かれも問題だ。
は
で、一見いつもと変わらないジューダスを気遣っているのだから素直に教えるべきだろう。
沈黙は「やっぱり」という意味と「そうなのか」という雰囲気の交じり合ったもののようだった。
『ハイデルベルグで損な役回りも買っちゃったしねぇ…ま、カイルのことだからすっきりさっぱりしてたみたいだけど、それに続いてエルレインの強襲だのなんだの。
は怪我するし。』
「…シャル、今現在のことじゃなくてちょっと前のことを聞いてたはずなんだけどね…」
途中からすっかり自分の心情を吐露に走っているシャルティエ。
客観というより主観的である。
自分のことにまで話題が及んで
は方向を再び変えようと試みる。
それともただのつっこみなのか、正直謎だ。
『…やっぱり痛いのは、何も言えないことかなぁ。仮面については1人部屋か
と2人ならいいんだけどさ…ここのところずっと別だしね』
別に一緒じゃないと落ち着かないといってるわけじゃないんだが、なんだか不自然さを感じて
は頭の中で文章を変換して整理しなおしてみる。
…確かに、5人だと必然的に男女に別れることになる。
思えば何も知らない相手に素顔を隠し続ける苦労は並大抵なものではあるまい。
いや、正体はともかく…何も知らない相手を前に、考える間が与えられれば苦痛は伴うだろう。一歩間違えれば「リオン」について話題が及ぶ可能性もないわけではない。
それも痛烈な方向性で、だ。
もっともそんな真面目話になる確率自体があの2人では低い上、最近はどうにかこうにかロニとも折り合いがついているようだからその点でも以前よりは遥かにマシだ。
「ジューダスって…傍若無人な口ぶりの時でもぱっと見、本当に何もはばからない時と、気を使っている時の見分けがつかないよね」
その発言に思わず笑う2人。
なんだかんだいって一番気を使っているのはジューダスであることも理解している。
が、反面本当にズバリと本人は歯牙にもかけずに物を言うことが多いのも彼だろう。
見分けのつく
にとってはそれは気のおけない一面だ。
「まぁいい加減ロニたちも慣れてきた頃合でしょう」
『でも相変わらず1人の時間は欲しがってるみたいだよ』
「性分じゃない?私だっていくら皆が好きでも1人になりたいことはあるし…そういうの無理矢理変えてもいいこと無い──というか変える必要もないよね」
はあくまで本人の在り方を尊重している。
もっと仲間と馴れ合った方がいいとか、せめて一緒に居るべきだとか、そういうことを言わない分「リオン」にとっては楽なのだろう。
ただでさえああいう性格だからむしろそんなことを言われても聞くはずが無い。
理解されないことの方が多ければ理解させようともしないのに、言われれば無駄に追いつめられることもあるのでまた複雑である。
心配からシャルティエも内心はつい「仲良くしましょうよ」派になってしまうのだが、そういわれれば全くそのとおりでちょっと考え直した方がいいと思っ てしまう。
良かれと思って言う言葉は発した人間基準、あるいは誰だかわからない誰かの「世間一般」基準でしかないこともある。
だから、
のような人間はむしろ希少だ。
きっと彼女ならシャルティエのそれも、性分だから、とでも言うのだろう。
しかしそのように言われたらふと、場違いな方向性でシャルティエには聞きたいことができてしまう訳で。
『
も1人になりたい?』
「…まぁ、楽だよね」
ということは、いかに人と居る時に気をまわしているかがわかるということだ。
『……』
「シャルは平気だよ。こうやって話せる機会も滅多に無いし、ジューダスも大丈夫」
言葉を選んでいると、先回りして言われてしまう。
それがまた気を使っているのでは、などと思うとキリがないので素直に受け取ることにする。
大体、特別のお墨付きが出ること自体嬉しいことではないか。
『へぇ、坊ちゃんも?』
「うん、平気だね」
『なんで?』
「なんでってシャル…」
方向性が変わったことに気づいたのか
はちょっと困った顔をした。
…そうなるとぜひ続きを聞きたい。
しかし
「…なんとなく?」
彼女自身つきつめてはいなかった。
「ジューダスがシャルのこと邪魔にしないのと一緒かなぁ」
『…………………………………………』
今度はシャルティエが考え込む番だった。
今の発言もフィーリングだろうが、色々可能性がありすぎて絞れないやら、思い付かないやら。
『…ちょっと違うんじゃない?』
「ちょっと違うかもね」
苦渋の果てにそう言うとあっさり肯定が返ってきた。
「しかし、…この熱波にあの仮面じゃやっぱりどーでもいいところでストレス貯まりそうだよね」
『言えてるけどそればかりはどうにも。』
「…仮にも王都出身者なのに、ホープタウンってちょっとサバイバル系だしさ…滞在するのも静かなリゾートって言うより「騒がしい」って感じで…」
『あぁ、坊ちゃん賑やかなの苦手だからね』
「僕がなんだって?」
「『!!』」
入り口の方を見るとちょうどジューダスが部屋を仕切るカーテンを片手で邪魔そうに払いのけている姿があった。
その表情は今しも何か問いただしたそうな雰囲気をまとわせている。
…自分の知らないところで自分のことが話されるのははっきりいって嫌なものだ。
それがわかるのか妙にシャルティエはおどおどした声を上げた。
『い、いえっ何でも…!』
何も如何わしいこと無いのに、うろたえ過ぎです。
ほら見ろ、ジューダスがますます勘ぐった顔してるじゃないか。
「ジューダス、子供相手に疲れてないかなって話してたんだよ」
かなり中間をはしょりまくってみたが全くウソは言っていない。「子供相手に」と「疲れてないかな」の間にこれまですべての会話を入れてみても成り立つ という見事な説明である。
「あぁ。全くなぜ僕が子供の相手など…」
思い出して嫌になったらしい。
大きな溜め息と共に彼は視線を落とした。
『それよりこんな早くにどうしたんです?ロニはまだ外なんでしょう?』
時間は彼らがでかけてから1時間ちょっとといったはずだ。こんなに早く終わる訳が無い。
その後ろに誰もいないことを確かめてシャルティエは聞いた。
ジューダスが会話に加わった時点で「誰もいない」ことは察せられることだったが。
「あぁ、
。医者に行くぞ」
「…今から?」
医者といってもこの村では兼業がてら、といった程度のものだ。人のよさそうなその人は、連日往診に来てくれていた。
行けと言われれば異論はないがこの唐突さは一体。
「今日は本業が忙しくて来られないと言っていただろう」
「ていうか、私をエサに逃げてきませんでしたか。」
「…………………来てない」
ピンと来て言うと図星らしい。まぁ
にとってはどちらでも良いことだ。
むしろ外に出られるならそれがいい(ジューダスが来なくても出るつもりだったけど)。
表情を緩めてベッドから出るのを見てジューダスが背中を向ける。
はシャルティエを片手にとった。
「ジューダス」
「なんだ」
「シャル、ありがとう」
『えっ!?』
もう返されるとは思っていなかったのだろう。
ジューダスも同じなのか驚いたように目を丸くしている。
シャルティエにしてみればどうせしゃべれないんだからこんな時は
に預けられていた方が楽だ。
なんとなく寂しさを感じていると
はにこやかにこう言った。
「とりあえず返しとく。ジューダスも背中が寂しいでしょ?」
「…軽くなっていいんだが」
「そんなこといわずに、また2日もしたら貸してもらうから」
2日もしたら。
その言葉になぜか納得したシャルティエ。
2日ジューダスの様子を見てまた話そうというところか。
『…そうですね、僕、
も心配だけど坊ちゃんも心配です』
「…心配される覚えはない」
とかなんとかいいつつ受け取っていつも通り背中へまわすジューダス。
その背後で
がふっと笑ったことには気づかない。
「じゃ、行こうか」
「北の広場は通らんぞ」
そんなことを話しながら2人と1本はカルバレイスの炎天下へと出ていった。
話の続きはまた明後日。
あとがき**
173371HITみつきさんによるキリリク「シャルティエと、ジューダスについて語る」。
シリアス半分ほのぼの半分ということで…きっちり前後半で分けようと思ったら混ざっている模様です。リク受けた当初は「2人きりで話が成り立つのか」と思っていたら、意外にすんなり進みました。
シャルのおしゃべりに感謝です。
ジューダスについてはヒロインの口から必要以上に語らせるのはどうかと思っていたのですが、できてみたらいつも通りだ…安心した…(何に)
みつきさん、お待たせしました!
