−ブーケの行方
**期間限定TOP公開**
「ブーケトス」その後
式が終わると、リオンと
は再びスタンたちの元に向かった。
「スタン、ルーティ、おつかれさま」
「
!来てくれたのね」
式の前には顔を出しているが、いざ始まってしまうと話したりする暇はないものだ。
この日、ようやくまともに話を出来る状態になって二人は控え室で歓迎してくれた。
「お前、泣いたか?化粧が崩れてるぞ」
「うるさいわね、余計なお世話よ!#」
憎まれ口をたたきつつもルーティの反応にふっと笑みを浮かべるリオン。
ルーティはといえばそういうわけにもいかないらしく叫びついでに、その手に先ほど自分が投げたはずのブーケをみつけて眉を寄せた。
「なんであんたが持ってるのよ」
「「?」」
「それよそれ!私は
に渡したのよ!」
あぁ、とリオンの手の内のブーケにみんなの視線が落ちた。
その瞬間に ばさ、と軽く
の胸の前に裏手で渡す。
思わず受け取る
。
「戻せばいいってもんじゃないのよ」
ルーティは不満顔だ。
「ちょっと持ってもらってただけだよ。ありがとう、ルーティ」
に言われれば機嫌を直さざるを得ない。
そう?と笑顔に戻った彼女の前で
はブーケの中から一本だけ花を抜き取ってリオンに渡した。
持ってもらっていた御礼、ということだろう。
それを見たルーティ。
ちょっとだけ無表情になって…何か思いついたようににま、と花嫁らしくない笑みを浮かべた。
「
、ちょっと来て!」
「は?」
さらに花嫁らしからぬパワーでなんだかわからない
をひきずって奥のカーテンの向こうに消えていった。
スタンとリオンは疑問符を浮かべてそれを見送ってしまったが…
「どうしたの?」
「いいからいいから♪」
バタバタとルーティは服を脱いでいる気配はする。
は荷物もちにつきあわされているらしい。
…。
「はい」
「はい?」
間。
「あんたが着るのよ!」
「嫌あぁぁぁぁああ!!!」
どれほど嫌なのかそれともいきなり力づくなのか 絶・叫。
「ルーティ!ちょっとタイム!駄目だって…」
「何が駄目なの!せっかくの日なんだから、たまにはこういうのも見せてよ!!」
「いくらルーティの頼みでも嫌だー!」
「ちょっ、こら!待ちなさい!!そのかっこで出て行ったら、あんただって困るでしょー!?」
「困らない!」
「…///」
何が起こっているのかなんとなく想像できて赤面している新郎スタン。
結婚初日早々、赤面する相手が違う。
リオンにとっても想像に易いがこちらは溜息をついただけだった。
ただ、今
が出てきたらそんな反応では済まされない事態に陥るであろうが。
結局のところ
「はい、完成〜♪」
ルーティが圧勝したらしい。
カーテンオープンされるとそこには、憔悴した
の姿が。
予想どおり彼女は純白のウェディングドレスを着せられていたが、
いざその姿となると想像の範疇は超えていたらしい。
彼女のウェディング姿など誰がどう想像できるというのだろう。
あんぐりと口を開けて眺めるスタンに、思わず目を見張るリオン。
「どう?♪」
ルーティは無理やり着せ替えただけだが、自分の腕と言わんばかりに胸を反らしてふんぞりかえった。
「似合ってるよ、凄く!」
笑顔満面、近づくスタンだがうっかり並ぶと二人で新郎新婦になってしまうので勘弁して欲しい。
曲がりなりにも自分の相手だからか、それとも本当に近づけたくなかったのか
ルーティは近づいてきたスタンをしっしっと追い払った。
代わりにリオンにはその境界線の踏み入りを許可したわけだが。
「
…」
気まずさでもあるのか、うつむいていた視線だけ僅かに上げられると身長差もあって微妙な上目遣いでリオンを見る形になる。
意外と言っていいのか、なんといっていいのか…思わず口ごもるリオン。
どうして同じ黒髪の女なのにここまで違って見えるのか、不思議なくらいだ(どう違うように見えるのかは割愛する)。
「リオン…」
切実な顔で は訴えた。
「後ろ、ファスナー降ろして!」
「はぁ!?」
「ほーほほほ!一人じゃ脱げないのよ!私は手伝わないからねぇ〜?」
「なっ、お前…何を馬鹿なことをしている!」
なるほど、
が拒絶していた割にいつまでも大人しくそのままの格好でいるわけだ。
一人では後ろのファスナーが降ろせないようになっているらしい。
「この際、スタンでもいい」
「ダメよ、本日の新郎に何やらせるのよ」
「じゃあリオン」
「諦めろ」
さすがに花嫁衣裳に手をかけることに抵抗があるのか、絶妙のタイミングでふいっとリオンはそっぽを向いてしまう。
孤立無援────
「あらあら、これじゃあしばらくそのままでいるしかないわねぇ?」
「いじめ?」
「で、あんた。想うところは無いの?」
結局のところ、リオンに見せたかったらしい。
ぐいっと背中を押して彼の前に
を突き出す形になる。
リオンは横を向いたまましばしそちらを見る気配は無かったが…
「…」
ふいに顔を正面に向けるとしげしげと の姿を眺めた。
「……」
気まずそうな 。
「そうだな」
リオンは
に一歩近づくと
の腰に手を回して器用にくるりとルーティの方へ向け返し、
ウエストの辺りのレース布地をつまんだ。
「このあたりが少し緩いようだが」
「「「……………」」」
それはつまり。
「悪かったわね、私の方がウェストが太くてー!!!!!#」
本日の花嫁、最大の墓穴だった。
* * *
「なぁなぁ、いっそリオンもそのまま式上げちゃえば?」
「な、何を急に」
よもやスタンに言われるとは思わなかった。
ルーティは相変わらずドレスを着せられたまま(誰も手を貸してやらないので脱げない)の
と窓辺で話をしている。
こうしてみるとどちらが花嫁だかわからないのは確かだと、遠くから眺めていたところ
着替え終わったスタンがやってきていきなりそう言ったので思わず言の端で狼狽してしまったリオン。
「だって、それ」
「?」
スタンの指さした先には、先ほど
が寄越した花が一輪、胸元にさしてあった。
「ブーケってさ、本当は男から女の人にプロポーズする時に渡すものなんだろ?
で、女の人がその中からひとつ返したら、OKだって──……」
「………………………」
今回新婦としてレクチャーを受けたらしく、知識の公開に笑顔満面なスタンの声はやや遠い。
知らなかった。
それくらい興味が無いのだから仕方ないだろうが。
と自分自身に言い聞かせる。
自分は仕方ないとしても…と、はたと
を見て…
やはり、向こうも天然の行動だな。
しばし考えた結果、何故だかひとりで完結してしまった。
普段あれこれ識豊かな割に………………この事態は全くもって抜けている。
人のことは言えないところが割合大きなポイントでもあるのだが。
「でさ、ブーケってのは永遠の愛の証なんだってさ!
だからオレもさっき胸に花、挿してただろ?」
「そうか」
「ついでに燕尾服ってのは夜会の服でさ、だから新郎はモーニングの方が………」
もうどうでもよさそうなリオンの横で
興奮冷めやらぬスタンの新郎雑学は、しばし続いた。
あとがき**
前回、「ブーケトス」(結婚式)を書いた後、狙ったわけではないですがジューンブライドだと後から気づきました。
なので突発企画で6月ネタ(拍手仕様につき後ほど格納庫入りをしたものを再録)
ついでに、ブーケについてもヒロインの行動が「花嫁の行動ですね」と言われ「???」と思ったことから調べてこうなりました管理人です。
リクエストを見ると糖度希望っぽいので目一杯、糖度盛り込む予定でしたが…
ウェストつまむネタを思いついたあたりから話が逸れた逸れた。
結局、リオン中心に落ち着き、少々の妄想の元を提供して終わりました(笑)
