If-もしも
ヒューゴ=ジルクリストがご存命だったら。
−VSウッドロウ+FamilyGame−リターンズ
その日…リオンと
はハイデルベルグに居た。
「久しぶりじゃないか。戦友としては手紙のひとつもよこさないでは寂しかったぞ?」
「今日はそんな話で来たんじゃないだろう。大体、自分だとて出しなどしないくせに何様のつもりだ」
「セインガルド王なき今、世界最大国家ファンダリアの王様に決まっている」
「…#」
相変わらずなウッドロウ。
もはや年を追うごとに犬猿の中になっていくような彼らを眺めながら
は窓辺で黙っている。
「それに手紙なら出していたぞ?」
「知っている。
にだろう。あれだったら燃やして暖炉の燃料にしたぞ。
…レンズ技術が衰退すればまたそういう資源も必要になるから、貴重ではあるかもしれんがな」
物凄いこと言ってます。
例によって
はウッドロウからのわけのわからない(見ようによっては笑える)手紙を受け取ったことをリオンに話して聞かせると彼は前回同様握りつぶしてそれを放っ た。
放った先がゴミ箱ではなく暖炉だったというだけだ。
さすがにウッドロウも一瞬むっとした顔をしたが、リオンが来賓室のソファにかけるとその正面に座った。一連のやり取りは彼らの挨拶のようなものだった のだろうか。
「さて、今日の用件は…わかっているだろうな」
「勿論。君はオベロン社総帥の代行としてここへ来た。世界の復興に尽力していたオベロン社はその役割を終え、解体される。それに伴う地上軍跡地の管理 権限を我がファンダリアに委譲する、という件だろう」
「そうだ。もう話はついているのだから僕はさっさと調印して帰りたいのだが」
第三者がみていたら和解しているのか、けんかを売りあっているのか微妙なやりとりだ。
ともかく、あのイクシフォスラーの眠る地上軍跡地はこうしてファンダリア王国の管轄下に入る予定になっていた。
至極、まじめな話だった。
「さて、委譲されるに当たって条件があるのだが」
「そんな話は聞いていない」
「管理するのも大変なんだぞ?人件費・資材費・備品購入代。あらゆるものに手をかけねばならぬ」
「意外にせこい奴だな。金の都合ばかりじゃないか」
そう、人材とか立入の規制とか、もっと難しそうなことはたくさんあるはずだがまぁともかく彼はわかりやすいところでそう言った程度なのだろう。フフッ と
から見るとなんとなく悪寒が走りそうな笑い方をした。
「資金面でも当面の間、間に合うよう調達する。それでかまわんのだろう?」
「うむ。それから、あの場所に精通しそうな識のあるものを一人もらえるとありがたいのだが」
「「…」」
読めてきた。
「だったらオベロン社で担当していた者の中から選ぼう。こんな極寒の地に左遷希望するものなど居ないと思うが、解 体されたら行き場の無い人間もいるだろうからな」
手にしていた書類をテーブルの上に無造作に下ろし、さらりとまたけんかを売っているリオン。
どちらが先に手を出したのか分からない雲行きになってきた。
そもそも、
が一緒に来たのもこの二人だけにしておくと何を言われるか分からないからだ。
誰が何を言おうが気にしないが、このシチュエーションだけは例外だった。
「わざわざそんな手のかかることをしなくてもいい。今日の調印が済めば明日から地上軍跡地は我が管理下。明日に間に合いそうな人員といったらこのまま
…」
「それはいかん#」
果たして、予感の成就とともにリオンと
が同時に口を開こうとしたその時…扉がバンと開いて、威風堂々現れた者がいた。
「ヒューゴさん…」
だらだらと汗をかきそうな雰囲気が漂う中、オベロン社・現総帥は案内役をにっこりと覇王の微笑で労い部屋へ入ると後ろ手に扉を閉めた。
「どうしてお前がここにいる…?」
「実の父に向かって「お前」はないだろうリオン」
「貴様が死にかけているから僕がこんなところまで来なければならなかったんだろうが!持病はどうした!」
持病というか、彼は地上に帰還して以来、かなり虚弱体質になってしまっていた(色々、他の短編参照)。
だから殆どクレスタからは出ない。
取り仕切れるものが居ないので総帥職は続行していたが、実際は現場ではなく指示を飛ばすくらいの影の総帥状態だった。
「かわいい息子と、
君と最後の思い出に一緒に旅行をしたかったのだ」
「ほほぅ?それでこの極寒の地を一人でここまで着いてきたわけか」
ある意味、もの凄い人だ。
「それで、ヒューゴ総帥。あなたが来たということは、交渉相手はあなたで良いということなのかな?」
にっこり。さすがに唖然としていたウッドロウも王者の笑みで微笑み返した。
「交渉、か…言っておくがリオンと
君は渡せないぞ」
「僕ははじめから頭数になど入っていない」
「しかし、
君がもらえなければファンダリアは地上軍跡地を管理しない」
「聞いていないな、この親父どもは」
ウッドロウに関しては親父という年でもないのだが、それすら耳に入っていないようだった。
…竜虎相打つ。
というか、あなたたち、私情入りまくりの交渉に入ってませんか。
「ではオベロン社も解体しない。解体を惜しむ声は今や世界規模であるからな。ダリルシェイドを脅威にしたくなければ本来条項に無い条件など提示しない ことだ」
さすがに何をしにきたのか分からなくなってリオンはヒューゴを止めた。
「お前ら、私情で戦争起こす気か」
止めるというより単なるつっこみだったことはご愛嬌。
「お前たちのためなら父は戦争もいとわない…!」
「真の愛とは奪い取ってこそ成就するというもの…!!」
「偏見は捨てろ。僕はお前らをイクシフォスラーの代わりに地上軍跡 地に封印したいのだが」
変なところで対立しているが、変なところで気の合いそうな二人の間でリオンはげんなりとしている。
「…そういえばさ、恋愛は男の人が追う方がうまくいくらしいよ?狩猟本能があるからなんだって」
「
、今そんなことを他人事に言っているが、お前が渦のど真ん中なんだからな?」
「台風って目に入ると被害は無いんだよね」
巧みに話をかわしている
。それとも目の前のバトルに現実逃避がしたくなったのか。
ともあれ彼らを眺める彼女の目はどこか遠かった。
「とにかく
君はやらん!」
「どうして
をどこかにやるのにお前の許可が必要なんだ」
いちいちつっこんでしまうリオンもリオンだが、全く聞いていないヒューゴもヒューゴだ。
「ほほぅ?では私では何が足りないのか聞かせてもらおうか」
ふと
が動いた。すたすたと彼女は白熱しているウッドロウの脇に行き、テーブルの上にあったファンダリア国王の印を手に取って印面を見る。
「まず本人が嫌がっているではないか」
ヒューゴの第一声は驚くほどにまともだった。むろん、そんなことは何度も繰り返したことでウッドロウは気にも留めないわけだが。
は上下を確認した王印を用意されていた朱肉にぽんぽんと叩いた。
「それに、これほど白い肌、黒い髪なのに子が生まれたらどうなるのだ!失礼ながら王と
君ではあまりにも見目相反する!」
「見目なら麗しいという点で一致しているだろう!」
…どうでもよさげな論点だが、ヒューゴにも何らかのこだわりが合ったらしい。
そういえばミクトラン時代は見た目が良くて、有能な人間が好きだったきらいがあった。
は既に刻まれていたウッドロウのサインの後ろにぎゅっと王印を押し…
「だったらリオンはどうだ。失礼ながら親の贔屓目を除外しても貴公に劣りはしないぞ!」
事実だが、今までの行いからやはり親馬鹿に聞こえるのが悲壮でもある。
無視して、リオンは
から手渡された調印文書にサインを入れた。
「リオン君は私の趣味ではない」
当たり前だ。
そう言いたいのをぐっとこらえてリオンは胸のポケットから豪奢な装丁の小箱を取り出し…
「私はリオンも
君も趣味だぞ!」
どういう意味で?(おもちゃ?)
明らかにぐっとリオンの眉間の皺が増えたが彼は努力の結果黙ったまま、オベロン社の社印をついた。
調印完了。
「よし帰るぞ」
さっさとこんな場所からはおさらば、とばかりに白熱している二人を置いて調印書を持って部屋を出る。
これは複写して後でファンダリアに送ればいい。そういうことになっていた。
「ヒューゴさんは?」
「放っておけ」
そして彼らは無事に秘密の調印式を済ませたのだった。
ヒューゴVSウッドロウの勝負の行方…
それは要として知れないが、後の彼のいつもどーりの晴れやかそうな顔を見るからに、どうやらオベロン社総帥に勝敗が上がったようではあった。
しかしおかげでこの後、泊まるはずの宿にヒューゴが押しかけて、彼らはダリルシェイドに着くまでその相手に手一杯になる。
…これをUPしたいがために、シリアスな未来と予感とを先にUPしたとかしなかったとか。このヒューゴさんは殺しても死ななそうです。
吐血(←でも病弱)して相打ち説もあったのですが、勝ったみたいです。
ヒューゴ総帥に乾杯。
