楽しいクリスマスを(匿名さん)
「メリークリスマース!」
部屋中にカイルの声が響き、クリスマスパーティは始まった。
楽しいクリスマスを
ロニが途中抜け出すもフラれて帰ってきたり、それをナナリーが物理的に後悔させたり、ハロルドがケーキに試薬を投入したりと、騒ぎに騒いだパーティも夜が深くなるとともに終わりを告げる。
そうしてカイル達が寝静まった頃、
「どこへ行くつもりだ」
そろりと部屋から抜け出そうとした
は失敗を悟った。
反射に近い形で
は振り向くも、暗い部屋——それも月明かりが向こうから照らしてきているので、ジューダスの表情は伺えない。
「……散歩」
「こんな夜更けにか」
とはいえまだ日は変わっておらず、外にでればまだまだ人がいるだろう時間帯。
それでもカイル達が寝ているのは単に騒ぎ疲れたからだと思われる。
その点基本的に傍観者であった
やジューダスはまだ起きていたのだろう。
「眠れないしね」
「なら僕も行く。 寝付けなくて暇だったところだ」
その返答に対して
は思案顔になるが、程なくして口を開いた。
「まぁいいけど、……仮面は外してね」
「……何故だ」
「こんな日に怪しい仮面つけた人と歩く気持ちを考えて欲しい」
まだ普段なら色物ペアとしてとられる程度で済むだろうがこんな日にだと……、
なんていうか人として嫌だろう。
しかもここはノイシュタット——大都市である。 それだけ人も多い。
にとって奇異の視線程度はいくらでも受け流せるが、避けれるものなら避けたいのも本音だ。
勿論ただ単に仮面を外させたい、というのも理由の一つではあったが。
そこまでして着いていきたいかといえば正直微妙だが、一向に睡魔が訪れる気配もない。
数十秒間、その二つ秤にかけた結果、
「……解った」
どうやら同行の方に針が傾いたらしい。
渋々、と言った様子でジューダスは仮面を近くのテーブルに置いた。
偶然にもホワイトクリスマスとなったノイシュタットの街並みは、雪がイルミネーションの光で彩られ幻想的な景色を醸し出していた。
さすが大都市と言うべきだろうか、どこに行っても光だらけの街には二人組みの男女が多く見受けられる。
そんな中アテもなく、ふらふらと文字通り散歩する二人。
本人たちはそのテのことを全く持って意識していないのだが、<もしこの光景をシャルが見たら何かと騒ぎそうである。
——というか絶対騒ぐ。クリスマスの夜に二人きりでその上仮面もしていないのだから。
彼がそんなごちそうを前に黙っているわけがない。
まあ生憎と既にスリープモードへと移行しているので、目の前にどんなごちそうがあろうと堪能することはできないのだけれど。
しばらくして広場に出た二人は、十メートル程の大きなクリスマスツリーを目にした。
目を細めそうになる程に光る頂点の星、ただただ派手なイルミネーション、カラフルに光る大小様々の飾り。
見る人によってはただの極彩色の集合体にしか見えないそれ。
例によって
もその類に当てはまったらしく、
「こう、無駄に装飾華美なのも……」
ぽつり、と
はぼやいた。
そのままうーん、と悩む仕草を見せると、
「じゃあちょっと町出ようか」
「正気か」
間髪入れずに返された突っ込みの内容に
は少し顔を顰める。
「正気かって……、少し出るだけだし」
「こんな時間に町から出たら明らかにモンスターに襲われるだろうが」
「平気だって」
武器もあるし、ほんの少しだからと付け加えた。
恐らく一人でも行く気なのだろう彼女を見て、
呆れのため息とともに言葉を出す。
「好きにしろ」
そして結局こうなった。
比較的なだらかな雪道を歩いて辿り着いたのはその大都市を一望——、
とまではいかないがその大部分を視界に収めることができる小高い丘。
そこに二つの人影が静かに並んでいる。
「やっぱこういう景色の方が好きかな」
各所にて様々な色を主張する光。
それらは間近で見るよりも淡く、ちらつく雪が溢れる光を適度に遮っていた。
そんな景色を心なし嬉しそうな表情で見ている
に、
「……満足か?」
「ジューダスはこういうの嫌い?」
質問を質問で返されてしまう。
隣に立つジューダスは数瞬間を空けると、微かに首を横に振る。
「嫌いではない」
「じゃあ好き?」
そういう直接的な表現を嫌ったからジューダスは否定の形で返したのだが。
その上で聞いてくるから性質が悪い
ジューダスが眉を顰めつつ左へ視線を移せば、
こちらを伺うようにしている
の顔があった。
「……好きな部類には入る」
恐らく、できる限り妥協したのだろう。
その答えに
も満足したのか、もう一度街へと顔を向ける。
それを追うようにジューダスも視線を正面に戻すが、容赦ない寒気に身体が冷えてきたことに気づき、
「……そろそろ戻るぞ、これ以上は明日に響く」
「そうだね。 ——ジューダス」
「何だ」
「メリークリスマス」
言葉と共ににでた白い息が闇に溶ける。
その言葉の意図をジューダスは掴めず、訝しげに彼女の表情を見るが変化はない、
「……いきなりどうした」
「別に? ただ言ってみただけ。 だからジューダスも」
何が「だから」なのか意味が解らない。
もしかしたらそれにも意味はないのかもしれない。
結局ジューダスは答えは得られなかったが、仮面を外した影響か、それとも気分的なものか、ほんの少し今日の彼は素直だった。
「……メリークリスマス」
あとがき**
はじめまして、匿名希望です(笑
ここまで読み進めていただき(飛ばしてきた方はスルー推奨)ありがとうございます。
企画が少しでも盛り上げることができればと思い、全力を込めて書き上げたものですが、未熟な面も多々目に付くと思いますが、
一人でも面白いと思っていただけた方がいましたら嬉しいです。
では、ここらへんで失礼させていただきます。
改めてここまで読み進めていただいた方、ありがとうございました。
また10-wiseさん、企画に参加させていただきありがとうございました。
管理人コメント**
街はクリスマス色が強くなってきて、タイムリーな作品です。
そんな中、とても二人らしいなぁと違和感なく拝見しました。
バレンタインはない(と宣言されていた)けど、クリスマスは…
サンタクロースのイベントがあるから、
クリスマスも自然にあってもいいかな?と思えます。
そしてシャル、スリープモード。惜しい(笑)
暖かいお話、ありがとうございました。
