未来の仲間との再会
クレスタはもうすぐ日が暮れようとしていた。
先日8才になったロニは、買い物袋を抱えてクレスタを走っていた。今日は彼が買い物当番の日だったのだが、仲の良い友人2人と遊んでいるうちに、こんな時間になってしまったのだ。
(早く帰らないと!)
本当ならこの時間、彼の住む孤児院は料理のいい匂いで満ちている筈なのだ。なのに、自分のせいでそれが遅れているということに、ロニは少し罪悪感を感じていた。
そういった心理状態で、彼は走るときの基本である『前を見る』という行為を失念していた。結果、
「うわ!」
「あ!」
彼は前にいた人物に、(不本意にも)タックルをかましてしまった。相手は倒れなかったが、ロニはバランスを崩し、ドテッ!という派手な音と共に転倒した。同時に、買い物袋の中身が転がっていく。
「やば」
ロニは慌てて近くの物から拾っていく。幸い、潰れてはいないようだが、なにぶん数が多い。孤児院にはロニを含め二十人以上の育ち盛りの子どもがいるからだ。
と、先ほどぶつかった人物が——拾ってくれたらしい——キュウリやらトマトやらを買い物袋に入れてくれた。ロニは顔を上げ、相手に礼を言った。
「ありがとう!!」
相手を見ると、最初に目に付いたのは綺麗な黒髪だった。中性的な顔の、しかし美人だとロニは思う、女性だ。そして、何故か相手は驚いているようだった。
「・・・君、名前は?」
「ロニ!!」
ロニが元気よく答えると、相手は嬉しそうな顔をした。
「ロニ、前を向いて走らないと危ないよ」
あ、とロニは思い出した。ぶつかってまだ謝っていないことに。
ロニは立ち上がり(買い物袋は地面に置いた)、頭を下げた。
「ごめん。ぶつかって」
気にしなくて良いよ、と相手は言ってくれたので、ロニは顔を上げる。すると、ロニは奇妙な感覚に陥った。彼女のことを、自分は知っているような気がする。
「お姉さん、名前…「
!」
ロニが相手の名前を聞こうとすると、それを遮るように声がした。声のした方を向くと、孤児院の方から黒髪の青年がやってくるのが見えた。
「あ、リオン」
呼ばれた女性、
は青年の名前を呼んだ。
「宿、とれたよ。やっぱり客はあんまりいないみたい」
「そうか。まあ、こんな田舎なら、宿を利用するのは旅人くらいだろうな」
(恋人なのかな?)
そう思ったが、それはなぜか否定された。二人の関係はパートナーの方があってる。
(あれ?)
ロニは自分の考えに疑問を持った。
(なんで、初めて会ったはずなのに)
まるで以前から二人の様子を知ってるかのようだ。
「ところで、お前」
リオンが
からロニの方に顔を向けた。
「お前じゃない!ロニだ!」
ロニはリオンに向かって怒鳴った。そして、怒鳴った後に、またも奇妙な感じがした。彼に向かって怒鳴るのはこれで何度目だろう、と。
リオンはロニの言葉を受け、一瞬だけ
を見ていたが、ロニは気づかなかった。リオンはロニ、と言い直して言った。
「ルーティが怒っているぞ」
「あ!!」
——そうだ、夕飯の材料!
ロニは、買い物袋を持ち、孤児院に向かって駆け出した。ルーティを怒らせればどうなるか。それを彼女の夫、スタンが自身の身をもって教えてくれるので、ロニはよく知っているのだ。その上、彼女は子どもを産んだ後で、怒りやすくなっている。
ロニは旋風のロニ、と呼ばれる自慢の脚力を使いながら、ふと思った。
とリオン、二人を見たときに感じた奇妙な感覚のことを。彼女らを知っている、という妙な確信を。
(これが、運命の出会いってやつなのかな?)
のような美人なら大歓迎だが、リオンは余計だな、と思った。
二人はロニが走っていくのを黙って見送った。そして彼の姿が見えなくなると、
は荷物を持ち直しながら言った。
「ロニ、元気そうで良かった」
「ああ。まあ、あいつが暗い姿など想像できんがな」
の言葉に、リオンは同意した。
「で、夕飯はどうする?ルーティが、『夕飯くらいは食べていけ』と言っていたが」
「じゃあ、お言葉に甘えようよ。もう少し二人と話したいし」
宿を取ってから一人町を探索していた
は、あっさりと言った。
リオンも異論はないらしく、二人は並んで歩き始めた。
あとがき**
とうとうD3も連載終了し、絵の創作イベントを行うというのを知り、ちょっと寂しく思ってたときに文章もオーケイと知り、いても立ってもいられずにロニ視点の話を書いた所存です。
孤児院に泊まらないのは子どもが多くて静かな二人は嫌がるだろうな、なんて思いながら書いたんです。最初は孤児院に行って喧しさに苦しむかな、とも思ったんですが、二人とも賢いから回避するなと思って止めました。遠慮も知ってる方々ですし。
いまさらですがDシリーズお疲れ様でした。私は物語は一つの世界、2次創作はパラレルワールドと考えています。でも、10ーwiseさんのD世界は本物に近いと思っています。というか私のD世界そのものです。
素晴らしい世界をありがとうございます。これからも応援してます。
管理人コメント**
連載その後でそのまま読めそうな自然なお話です。
オリジナルの作者であるにもかかわらず、再会はとても嬉しい気持ちで拝見できました。
視点を変えたお話というのも新鮮でよいですね。
「リオンは余計だな」って…あらゆる意味ですごくロニらしいと思います。
そして、時間軸的には3年後になるかと思いますが、変わらぬ二人に乾杯(笑)
とてもステキなお話、ありがとうございました。
