アイテム整理。それは旅人なら必ず行うものだ。勿論カイル達も行う。
ただ、今回はいつもと少し違う事になりそうだ
ウエディングドレスと乙女
クレスタのカイルの部屋。そこが今回のアイテム整理会場だった。
「じゃあ、武器はこれだけ売ってくればいいんだな?」
「ああ、頼むよ」
ロニとカイル、ジューダスの三人は複数ある、またはいらない武器の入った箱を手に部屋を出て行った。
今度は女性人だけで、装備品の確認を行う。複数あるもの、ステータスが低い物はのけていく。作業は十分も経たずに終わった。
しかし、今日はそれでは終わらない。彼女達は今度は『いらないもの』から『着れるもの』を選び始めた。
ナナリーはまずカクテルドレスを除外した。それを箱に畳んで入れる。
「ドレス系はさすがにいらないよね」
は長袖の上着とズボンを広げた。サイズは問題なさそうだ。
「チュニックとキュロットは大丈夫そうだよ。あとは、リボンとか?」
リアラとハロルドは何故か結構ある服を見ていた。
「ウィンドブレーカーとフレアスカートは人数分以上ありそうよ」
「エアロスとフレイミーズが落とすからね〜」
コンコン、と控えめに扉がノックされた。作業を中断してナナリーが扉を開けると、何人かの少女が興味津々な顔やおどおどしながら立っていた。
「どうしたんだい?」
「あ、あのね」
ナナリーに尋ねられた少女は恥ずかしそうに言った。
「えっとね、髪飾り・・・・」
「ああ、髪留めが欲しいんだね。リボンはたくさんあるから大丈夫だよ」
ナナリーがそう答えると少女達の中で最も小さい子、ユニーは首を横に振った。ナナリーが小首を傾げると、ユニーはリアラを指差した。
突然指名されたリアラは驚いた顔で自分を自分で指差す。
「え?わたし?」
「お姉ちゃんの紫のみたいな、髪飾りが欲しいの」
ユニーはそう言うと、恥ずかしいのか俯いてしまった。紫の、とはリアラがつけているレンズのような丸い髪留めだろう。たしかに、髪飾りという言い方が近いかもしれない。
は冠を羽の飾りがついたクレストやコマチ、ティアラなどを出して少女に見せた。
「こういうの?」
「・・・・多分。でも、つけ方がよく分からないの」
「ああ、君みたいに髪を結ってる子ならこうやって挿せばいいよ、こういうのかな?」
そう言って
がクレストを耳の近くの髪に挿すと、少女は嬉しそうにそれを見た。
「わあ、ありがとう!!」
何人かの少女がいいな、と言ったので、
は冠系の物を全て箱に入れて渡した。
「皆で決めていいよ。いらない奴は返してね」
そう言うと、少女達は口々にお礼を言いながら、すぐにそれを持って階段を下りて行った。
「ふふふ、小さくてもやっぱり女の子ね」
「そうだね」
「ついでに何人かに、服を着てもらった方が良かったかも。サイズがまちまちだし」
「大丈夫でしょ」
ハロルドはそう言って何故か回復系アイテムを見ていた。何する気だ。
以外の女性人がハロルドを見ていると、再びノックがして、黒髪の女性が入ってきた。ルーティだ。
「どう、子ども達が着れそうな服ありそう?」
そう、実は今回のアイテム整理は、孤児院に寄付する物を選ぶために行われたのだ。
「はい。こんなに」
「わあ、本当にたくさんあるわね。何よこれ、ウィンドブレーカー?何でこんなのが装備にあるのよ」
ルーティが、本来防寒防風のためのジャケットを持ち上げ、不思議そうに言ったが、確かに彼女の言う通りだ。彼女の時代、あったのはクロークやローブ、スーツくらいの物だったのだから。
「時代の変化?」
と言うしかない。
と、ルーティは売られる運命にあるドレス系の服に眼をとめた。
「あらは・・・?」
「この後売りに行くんだよ」
いらない物は売った方が良い。そうしないと荷物になるだけなのだから。しかし、昔はそういう考えを持っていたルーティは信じられない、という表情で
「はあ!?」
と言って『あるもの』を素早く広げた。
「花盛りの乙女が揃って『これ』をいらないってどういうことよ!!」
そこにあったのは、白い純白のドレス。
ウエディングドレスだった。
のいた世界では、白いウエディングドレスが誕生したのは十六世紀のイギリスだった。しかし、最初の頃はあまり流行らなかったらしい(純潔な花嫁には白を、という宣伝がされたらしいが、花嫁が純潔なのは当たり前だという突っ込みがあったとかなかったとか)。
その後三世紀を経て復活した白のウエディングドレス。それは庶民にとって高嶺の花だった白のドレスを、一生に一度だけ着るという夢を与えるようになったという。
この世界ではどういう経緯で生まれたか分からないが、とりあえずここでもウエディングドレスというのは女の夢らしい。
「えっと、確かに欲しいですけど、・・・・・・それを持って旅は出来ないんで」
リアラが顔を赤らめながらそう言うと、ナナリーも腕を組んで考え込んでいた。
「どうせなら、相手と選びたいしね・・・・・」
乙女だ。どこまでも乙女の意見だ。
「あんた達はどうなの?」
ルーティは二人の意見にある程度納得したのか、今度は
とハロルドを見た。ハロルドは珍しく問い掛けるような眼で聞いてきた。
「あれって、確か結婚式に着るのよね?」
おそらく、天地戦争時代はなかったのか、そんなことやる暇はなかったのだろう。
「知らないの!?」
ハロルドの言葉にルーティは驚きも露わに叫んだ。
「普通女の子は結婚式に憧れるものよ!あたしでさえ着たのよ!」
「そのルーティのは?」
「ちゃんとしまってあるわ。ここの子達が大きくなった時か、カイルやロニのお嫁さんが着るかもしれないでしょ」
その言葉を受けて興味を示したのはやっぱりリアラとナナリーだ。特にリアラは、「後で見せてもらってもいいですか?」などと言っている。と、ルーティは
にウエディングドレスを押し付けた。
「・・・・・着れそうね」
「着ないよ」
キッパリと
が答えるが、しかしルーティは押し付けたままだ。
は退路を確保しようとするが、すぐに壁にあたる。
と、カイル達が戻ってきた。三人は目の前で起きている白いドレスの押し付け合いを不思議そうに見た。
「何やってるの、母さん?」
「あ、カイル!この子達ウエディングドレスいらないって言うのよ!!」
そう言われて、乙女達は戦闘ではいらないのだという主張をした。
「そもそも戦闘で着る方が問題があるだろう」
ジューダスがそう言ってる間に
は男性陣の後ろに逃げる。
「でも、確かに見てみたいかもな」
ロニはぽつりとそう言った。それに反応したのはカイルだ。
「え?でも、ロニは父さんと母さんの結婚式見たんでしょ?」
「まあ、見たけどよ。あん時俺だってまだガキだぜ。ルーティさんが綺麗だなって思ったことしか覚えてねえよ」
「着ないから」
キッパリと
が答えると、ルーティが舌打ちした。そして自分の持っているドレスを見下ろす。
「あんまり汚れてないから、今すぐ着れるのに・・・・」
「リアラかナナリーに頼んで」
「あんたが一番背丈あいそうなのよ。こういう服って、調整が難しいのよ」
「着ないから」
がそう言うと、ルーティは今日着せる事は諦めたようだ。悔しそうに畳み始める。
「そういえば、母さんのドレスは?」
「勿論ちゃんとしまってあるわよ」
「着たのか?お前が」
「当たり前でしょ」
そう言って、ルーティはドレスを持って部屋を出ようとした。
「待った。なんでそっちに持ってくの?」
「明日着せるから」
「着ないから」
「なんでよ!」
「脱ぐのが面倒だから」
そう言うと、ルーティは忌々しそうに、
「ああもう!男達の装備はこれ!?」
男性用装備品をあさり始めた。
「か、母さん。何やってんだよ!?」
「カイル、あんたも手伝いなさい!」
「・・・・・・・何を探してるんだ?」
「タキシードよ!ウェディングドレスがあるならタキシードがあってもおかしくないでしょ。どうせならセットで高く売るべきよ!!」
言い分はごもっともだが、勿論そんなものはない。というか、
と誰かに着させたいのではないだろうか。
こうして、
にウエディングドレスを着せるというのは『この時代』では無理だった。しかし、ルーティの強引さは
達にとっては『後に』実る事になる。
(以上、実況は天国にいるシャルティエから)
おまけ
ジューダス「・・・・冠系がないな」
「女の子達にあげたから」
ロニ「ああ、それであいつら下で騒いでたのか」
カイル「・・・・・・あのさ」
ロニ「どうした、カイル?」
カイル「・・・・
もさ、リボンって装備できるの?」
・ジューダス「・・・・・ハ?」
カイル「だってさ、ハロルドも装備できたよね?」
ロニ「まあ、そうだったな」
「つけないから」(キッパリ)
ロニ「まあそう言わずに。試すだけ試したらどうだ?」
「つけない」
リアラ「むしろ、ジューダスなら出来るんじゃないかしら?」
ジューダス「は?」
カイル「あ、ホントだ!仮面につけれそう!!」
ジューダス「おい」
ロニ「よし、カイル!下からリボン取って来るぞ!!」
カイル「うん!」
ジューダス「待て貴様ら!!」
(男達去る)
「ごめんね、ジューダス」
リアラ「でも
。アクセサリーはつけるのね」
「え?」
リアラ「服の下の。ちょっとだけ見えてるもの」
イルさん あとがき**
今回は一時期掲載されていた「
がウエディングドレスを着る」というのを自分なりに膨らませたものです。どうせなら装備が実際にあるD2でもドレスの話を、と思いまして。ドレスもリボンも、私では彼女に装備させる事は出来ませんでした。
さんは凄く強いです。ドレスを着せれた10-wiseさんを本気で尊敬します。
楽しんでいただけたらいただけたら幸いです。
