叶われ事
「…そっか。今日、七夕なんだ」
すでに日も落ち、辺りが暗くなり始めた頃。唐突に
が呟く。
その途端、好奇心旺盛なロイドやジーニアスが食いついてきた。
「七夕? なんだよソレ」
「ボク聞いたことあるよ。笹の葉に、願い事を書いた短冊を吊るす行事でしょ」
「ミズホの里でも毎年やるけどサ…
の住んでたところにもあったのかい?」
しいなが興味深げに訊ねた。
は頷き、会話の外にいたジューダスへと視線を向ける。
……ついでに言うと、アクアヴェイルでも行われてます。この世界では2人のみぞ知る事実。
じゃあ早速、願い事を書こう!と盛り上がるお子様組。
笹は周辺を散策して、何とかそれらしく見える植物で代用するらしい。
「俺様はリフィルせんせ〜のハートをお願いしちゃおっかな〜」
「そんな願い事をされたら、星空も私もいい迷惑だわ」
「でっひゃっひゃ、俺様ショック〜。コレットちゃんとプレセアちゃんは?」
リフィルに一蹴され、ゼロスはターゲットを変えたようだ。
「私は……この旅が、みんな無事で終わりますようにって」
さすが神子、というべきか。コレットの願いはひたむきで純粋だ。
プレセアはしばし考え込んでいたが、何か思いついたのか、おもむろに口を開く。
「……私は……肉球が欲しいです」
「「「……。」」」
どう突っ込んでいいのやら。
そういえば彼女は無類の肉球好きなのだ。コリンやノイシュの肉球を触っていた光景も目撃されている。
「プレセア。もし肉球が貰えたら、私にも触らせてはくれまいか」
「はい、遠慮なくどうぞ」
和やかムードでそんなやり取りが交わされる中。
は隙を見計らい、一人でふらりと散歩に出てみた。
空はあいにくの曇り模様だ。
せっかくの七夕なのに……と
は少し残念に思うが、時期が時期なので仕方ないのだろう。
「またお前は……。そんなに一人になりたいのか」
振り返ると、やれやれと呆れた面持ちのジューダスがいた。
「ロイド達といるのも好きだよ。でもこうやって、ゆっくり夜空を眺めるのも好き」
「……言い出した本人がいなくなってどうする」
「大丈夫だよ、みんな願い事を考えるのに夢中になってたし。笹も探しに行かないとでしょう」
はさっぱりとした物言いをすると、ジューダスに笑いかけた。
「それに、一人じゃないしね」
そう言われてしまえば、ジューダスもそれ以上は言及できず。
「ジューダスは覚えてる? カイルたちとの七夕」
「お前、僕を馬鹿にしてるのか」
忘れるはずもない。そもそも自分達はこの世界に来るまで、カイルたちと旅していたのだから。
『あはは、懐かしいですね〜』
シャルもしみじみ思い出すように、楽しげな声で言う。
わいわいと賑やかなロイドたちの様子を見て、
がカイルたちと重ねてしまうのも無理はない。
あの時はカイル、ロニ、リアラがそれぞれ「らしさ全開」の願い事を書いたので笑わせてもらった。
「
、お前の願い事……今年は叶いそうか?」
「——あぁ、世界征服?」
「違う。あの後、もう一つ願っただろう」
一つ目は、冗談で書いた願い事。
その後、密かに書き換えた願い事は……織姫と彦星の逢瀬を願うものだった。
「そうだねぇ、今年も会えるといいね」
「まったく、少しは自分のことも願ったらどうだ。おめでたい奴だな」
そんなコメントをこぼすジューダスに、
は笑ってしまう。おめでたいって、あの時も言われたよね。
「自分のことは、当分いいかな……もう叶ってるようなものだし」
『どういうこと?』
すかさず疑問を投げるシャル。
「……こういうこと」
つかつかとジューダスのほうへ歩み寄ると、
はその手からシャルティエを取り上げた。
『へ?』
そしてすかさず、空いた手に自身の手を滑り込ませる。
『えぇっ!?』
呆気に取られるシャルと、シャルほどではないが動揺を隠せないジューダス。
その様子に、
は思わず苦笑する。
自分でやっておいて何だが、誤解させるには十分すぎる行動だったみたいだ。
「私には、リオンもシャルもいてくれるから。これ以上は何も望めないよ」
繋いだ手にある温もりと、コアクリスタルの輝きを感じて。
は満足そうに笑う。
「……そういえばジューダス、あの時は何をお願いしたの?」
「知らん。もう忘れた」
わざわざシャルティエに「火炎弾」を装着して、
の願い事もろともに焼き払われた笹の葉。
結局ジューダスの願い事はわからずじまいで。
が尋ねると、彼はそっけなく答えた。
「ジューダス、さっき『馬鹿にしてるのか』って言ったよね? ってことは願い事も覚えて…」
『駄目だよ
、坊ちゃんは照れ屋さんだから』
あはは、と悪戯っぽく笑うシャル。
どうやらシャルは願い事を知ってるらしい。
「シャル。
に言ったらどうなるか、わかってるな……?」
フッと笑みを浮かべるジューダス。その笑顔と、無言の圧力が怖い。
『も、もっちろんですよ坊ちゃん! あの願い事は坊ちゃんと僕の秘密ですもんねv』
さりげに乙女モードを展開させ、さすがのシャルも今回は口を割ってくれそうになかった。
「……じゃあ、今日の願い事はどうする?」
も諦めたのか、話題を現在の出来事に戻す。
「そうだな。どこぞの馬鹿が、これ以上の無茶をしでかさないように……とでも、願っておくか」
「はは……ジューダスに願ってもらえるなんて、幸せな馬鹿者だね」
「笑って流そうとするな、馬鹿者が」
軽く喝を入れられ、さすがに少しへこんだ様子の
。
少し同情しながらも、ジューダスの言うことはごもっともだとシャルティエは思う。
この世界に来てからも
は何かと無茶をしがちで、見ているこっちは気が気でないのだ。
傍にいることの多いジューダスが、人一倍
を心配するのはシャルにとっても当然のことである。
「お前の願い事はどうなんだ?」
「うーん……特に考えてないんだけど。どうしよう」
首をかしげて考え込む
。
織姫と彦星の逢瀬を願うのもいいが、全く同じ願い事ではパンチが足りない気もする。
「……ずっと一緒に、いられますように」
「?」
「2人がずっと、一緒にいられますように。七夕が終わって、また一年間会えなくなってもね」
それはいささか、おせっかいな願い事かもしれないが。
また一年後。2人が会うには、心を通わせていなければ意味がないのだから。
その願い事は、空に捧げる祈りにも似た思い。ただの願いで終わらせず、信じていたいと
は思う。
いつのまにか瞬き出した星を見て、ジューダスも密かに安堵する。シャルは言わずもがな、である。
その後——笹もどきを調達し仲間たちの元へ戻った2人は、ゼロスにさんざん冷かされる羽目になった。
**匿名さんあとがき
せっかくの七夕、ということでやってみました3次創作。
このお話はD2短編の『叶え人』(大好きなお話ですv)をベースに書かせて頂きました!
ジューダスの願い事は謎のままですが、新しいお願い事も出来てめでたしめでたし、ということで(笑)
3次創作なので、途中は思い切って遊んでます。今回は
さんが両手に花ですw
さんとリオンとシャル、この3人にもずーっと一緒にいてほしいな……という祈りも込めて。
ではでは、ここまで読んでくださりありがとうございました!! ビバTOD&TOS、です♪(´▽`*)
