聖なる夜に
今日はクリスマス。
イルミネーションに彩られた街中で、世の恋人たちは仲睦まじく肩を寄せ合っている。
今にも雪が降り出しそうな寒さの、ダリルシェイドの夜。
とリオンはといえば、オベロン社のクリスマス大感謝セールに引っ張り出されていた。
「い、いらっしゃいませ…」
「緊張してるのか?
」
「いや、緊張っていうか…この格好で接客しなきゃいけないっていうのがね」
オベロン社本店の前で、セールの宣伝に勤しむ二人は見事にサンタ服だった。
「今年はイレーヌ君が特別協賛を買って出てくれたのでね、ぜひ二人にこれをと」
そうヒューゴに言われて渡されたのが、このサンタ服だったのである。
ご丁寧にメッセージカードまで付いていた。
「リオン君・
ちゃんへv
二人のために、オーダーメイドで張り切って作っちゃったわ♪
これを着てセール品を売り出せば、売り上げは去年の1.5倍は固いわよ!
お姉さんの愛のこもったスペシャル衣装、無駄にしやがったらタダじゃ済まさないからvV」
…最後の一文が怖いです、お姉さん。
というわけで仕方なしに着てみたのだが、これがまた二人のサイズにぴったりだったりする。
「これ、イレーヌさんに3サイズ把握されてるってことだよね…」
「まぁあのイレーヌだからな」
あえてこれ以上の追及はすまい。肩をすくめる
とリオンだった。
ちなみにリオンのサンタ服は上下のセパレートで、
のはワンピースのミニスカ仕様である。
「……交換しよう、リオン」
「無茶言うな」
リオンが
の衣装を着れば、それはそれで客を呼び込むネタになりそうなのだが……
流石にそれはリオンが気の毒だろう。
スカートは丈が短いが、気の利いたことにお揃いのブーツも用意してあったので寒さ対策は万全だった。
『これは目の保養になりますね〜』
ちゃっかりシャルも一緒なので、
の気持ちなどおかまいなしに一人悦に入っている。
「発言がエロオヤジだぞ、シャル」
『えー坊ちゃんだって可愛くて直視できてないくせに! あ、坊ちゃんの衣装も似合ってますよ』
その取って付けたような言い方はどーなのよ、シャル。
「べ、べつに僕は……ただ、
がそういう格好をしてるのが慣れないだけだ!!」
なぜか若干ムキになっているリオン。
「うん、私も慣れないんだからリオンが動揺するのも無理ないよね」
と、当の
はどこ吹く風である。
先ほどのぎこちなさも薄れ、さっさと商品を捌こうと吹っ切れモードに移行している。
「へぇ、オベロン社のセールかぁ。珍しいことやってるね。キミはバイト?」
突然、若い男性が
に話しかけてきた。
……バイト、と言っていいのだろうか。
とリオンはヒューゴの命令で駆り出されたわけだが、やってることはアルバイトとそう変わらない。
「えぇ、まあ」
「へ〜、かわいいバイトさんだね。今日は何時までお仕事?」
が曖昧に答えると、男は調子に乗ったのか妙な質問をしてきた。
当然、リオンの表情は険しくなる。つかつかと男に近づき、口を開いた。
「……お客様、恐れ入りますが冷やかしはご遠慮願います。
本日はセール価格でオベロナミンEXが10本セットとなっておりますが、いかがでしょうか。
そちらの女性も愛飲している人気商品なので、お客様のお気にも召すかと思うのですが」
何を言うかと思えば、意外にもにこやかに(そりゃもう怖いくらいの笑顔で)接客トークを始めたリオン。
思わぬ割り込みトークに、たじろぐ男性客。
お手頃価格のオベロナミンCではなく、ちょっとお高いEXを勧めるあたりは悪意を感じないでもない
。
「あ、あはは…じゃあ、そのセットを一つ貰おうかな」
「お買い上げありがとうございます」
営業スマイルをキープしたまま、リオンは丁寧に対応して早々に客を帰らせた。
「……リオンって、意外と商売上手だよね」
「ふん、客じゃなければ容赦しなかったんだが」
客員剣士たる者、やはり礼儀はわきまえているのだろう。
もっとも、客でもあれ以上ちょっかいを出していればリオンの態度も変わっていたかもしれない。
『坊ちゃん、
を守る騎士(ナイト)みたいでかっこよかったですよ♪』
「うるさい、黙れシャル」
『う…僕に八つ当たりしないで下さいよぅ』
「えーと…ありがとうリオン。助かったよ」
「
、お前も早く売り捌きたいならもっとトークに力を入れろ」
「トークねぇ……そういうの、あんまり得意じゃないんだけど」
「僕だって好きでやってるんじゃない。お前、顔も声もいいんだから自信を持て」
いや、それリオンが言うか。
何故かオベロン接客講座みたいな雰囲気になりつつあるが、とにかくも今は販売に集中することにする。
『こういうの、いわゆる共同作業って言うんでしょうねぇ』
「「シャル、うるさい」」
『うぅ〜…僕も一緒に働きたいですよー……暇すぎて死にそうです』
もはやシャルの発言に聞く耳持たない二人。というか既に邪魔者扱いである。
元々オベロンの製品は人気があるので、セールで普段よりお得な価格なら客入りも頗る良い。
加えて、
とリオンの美男美女コンビ(しかもサンタコス)と来れば話題性にも事欠かない。
「よし、この分なら遅くならないうちに帰れそうだな」
「そうだね。ちゃっちゃと終わらせて早く帰ろ」
シャルは思う。やっぱり坊ちゃんと
のコンビは息ぴったりだと。
坊ちゃんのトークはシャープで購買意欲をそそられるし、
の対応は丁寧で作業にも無駄がない。
何よりお互いに動きをちゃんと見てるので、フォローの仕方が絶妙なのである。戦闘も商売も似たようなものだ。
そして1時間後——
売り場にあった大量の商品は、跡形もなく捌けてしまっていた。
『お疲れ様です! 坊ちゃん、
』
「あぁ、さすがに少し疲れたな……」
「慣れないことしたからね。シャルもありがとう、応援」
仕事が終わるや否や、速攻で普段着に着替えている二人。
若干、疲れの色は見えるがその表情は清々しい。
『今夜はこのあと、どうするんです?』
「確か、マリアンさんがケーキ焼いて待っててくれてるんじゃ…」
「二人とも、今日はお仕事なんですってね。
ケーキと食事の用意、張り切っちゃうから楽しみにしててね」
そう言って、マリアンはいつもの笑顔で送り出してくれたのだった。
「そうだな。予定よりも早く終わったから、まだ少し時間はあるが……」
リオンのことだから、すぐにマリアンの元へ駆けつけるかと思いきや。
意外と余裕のある態度に、どこかほっとする
だった。
「じゃあ、どこか寄ってく?」
『それなら、ツリーのある街の広場がオススメですよ!』
「でも人が沢山いるところはちょっと……」
「セインガルド城の庭はどうだ? 広場よりは人が少ないだろう」
はリオンの提案に賛成し、二人はセインガルド城へと足を向けた——
「へぇ、ここもクリスマスだと雰囲気違うね」
イルミネーションとまではいかないが、王城にはクリスマスの飾り付けが施され、華やかな彩りを見せている。
「あぁ、毎年のことだから僕はもう見慣れたが」
『でも今年は一段と綺麗ですねぇ』
「……うん、綺麗」
も満足そうに、城を見上げて笑った。
「メリークリスマス、リオン」
そ、と差し出したのは小さな包み。丁寧にラッピングされた何かだった。
「何だ、わざわざ用意してたのか?」
「うん、まぁせっかくだしね」
「僕は何もやらんぞ」
「いいよ、リオンと一緒にいられるだけで幸せだし」
「な……!?」
さらりと甘い発言に、思わず赤面するリオン。
『
、僕はー!?』
「あはは、シャルも一緒が幸せだよ。もちろん」
そんなシャルティエとの微笑ましい(?)やり取りに、リオンは少し拍子抜けした。
「来年もよろしく。リオン、シャル」
『こちらこそ、よろしくー!!』
「……あぁ。メリークリスマス」
はらり、雪の花びらが舞い降りる。
二人は屋敷への帰路につく。クリスマスの夜は、まだ始まったばかりだ——
その日、
が部屋に戻ると見覚えのないポインセチアが一つ、小さな彩りを添えていた。
**あとがき**
メリークリスマス!! …というわけでこんばんは、匿名さんです(笑)
せっかくのクリスマスなので、
さんとリオンを思いっきりいちゃつかせようかと思ったのですが……
ネタ不足で断念しましたorz というわけでいつも通り(?)糖度薄めの2人になりましたとさ。
ポインセチアの花言葉って、意外と凄いんですね…。大胆だねリオン君!!(ぇ
っていうか、いつの話なんでしょうコレ。(おい作者)
兎にも角にも、シャルが幸せそうなので良しとします。ミニスカサンタばんざーーーい(*´∀`*)vV
