カメラを使うのは誰かを写すため
「リオン明日だね。」
「ああ。」
明日は久しぶりにノイシュタットに桜を見に行く予定だ。
今回は定期船に乗ってゆっくり向かうとか思っている。
「それにしてもよく長期休暇とれたね。」
「そうだな。」
「?」
確かリオンが長期休暇を許してくれたんだが・・・。
いまいち腑に落ちないものがある。
今回のお花見には何時もとは違う楽しみがある。
何を隠そうこの間オべロン社が開発したばかりの写真機が完成したのだ。
実は昔からこっそりと進めていたプロジェクトで、最近やっと実用化に至った。
「デジカメには劣るかも知れないけど・・・これはこれで味が有ると言うか。」
「?何を喜んでいるんだ?」
「リオン、ハイチーズ。」
「!?」
リオンは驚いて
をみる。
急に光ったのだから驚くのが普通だろう。
これの欠陥と言えば重たいのと大き過ぎると言うことだろうか・・・・。
だが、大昔のカメラとは大違いなのはレンズに写すと言うハロルドもびっくりのカメラである。
手は持って行けるサイズにするまでに時間がかかったが・・・。
基本的には普通のカメラと同じように被写体との距離を調節してボタンを押すだけ。
細かい設定はオべロン社独自の見解と発想力のお陰というべきだろう。
「何だそれは?」
「カメラ!昨日出来たばっかりの奴なんだ!これが有れば可愛い猫をアルバム化したり・・・。
草花を写したり・・・。これの凄いところは何度もレンズの取り換えが出来ることで、何枚でも取りまくれる優れモノ!
ちなみにこのボタンを押すと、レンズの濃度が変わって写した写真をこういう風にイメージを簡単に変えられるようになったんだ!
さらに、今回はレンズの濃度はソーデイアンクラスのレンズだから、半永久的に使い続けることが出来て写真を見たい時はこうして白くて平べったい所ならどこでも映像のように映し出せるんだ!まだ画像でしかないけど動画も研究中だって!」
「そうか。」
「うん。」
普段ダリルシェイドをあまり離れないせいか酷く桜が新鮮に思えて仕方が無かった。
ここの生活にも慣れて、スタンとルーテイもカイルを生んで最近会って居ない。
何処か懐かしいものを感じながら、荷物の最終チェックを終える。
リオンは落ち着ききって紅茶を飲んでいた。
もイスに座って紅茶を一口飲み込む。
「リオン明日は楽しもうね。」
「定期船だから5日は掛かるがな。」
「そうだね。」
良い機会だからスタン達を誘ってみようかと
が言うとリオンは紅茶を噴き出してしまう。
タオルを渡すとリオンは服に付いた紅茶を拭きとる。
「?何でそんなに驚いてるの?」
「あいつらが来たら騒がしいだけだろ・・・。」
「お花見って本来そっちの方が重要視されてない?」
「スタン達はリーネの方に向かうらしいから明日会うかもしれんな。」
「そうなの?」
「ああ、ロニから聞いた。」
ロニとどうやら時々会っているらしい。
何でも会うたびにモテるコツを聞いてくるとか・・・。
黙っていればある程度モテるのではないだろうかと思ってしまうが。
ロニは早く彼女が欲しいらしい。
焦ったところで出来るものでもないだろうに・・・。
は近くに置いてあるカメラに手を伸ばした。
どうせなら良い景色を映してほしいものだと今更ながらに思ってしまう。
試しにカメラに写したものを映し出してみる。
5枚だけ写したが半分が猫と草花だった。一枚だけある驚いているリオンに新鮮さを感じられずにはいられない。
これでロニを写そう、カイルも写そう。
どうせならみんなの写真を残していたい。
「私寝るね。」
「お休み。」
部屋に入ると昨日まで飾って居た花の匂いをかすかに感じる。
今年はゆっくり花見も出来ないだろうと思って買った花だった。
切り花の為にずっとは咲いていない。
5日も経てば買った当初が懐かしく感じる程に弱弱しくなっている。
春先には重いだろうと思う量の布団を被る。
布団にも付いてしまった花の匂いが鼻に付いた。
朝起きいるといつもよりも早く起きてしまったのか、太陽が出たばかりだ。
ひんやりした空気に肌寒さを感じる。
布団からでて服を着替えて少し乱れたシーツを直した。
食堂に向かうとリオンと鉢合わせした。
どうやらあちらも早く起きすぎたようだ、欠伸を噛み殺している。
「おはよう。」
「お前もも早く起きすぎたのか?」
「リオンも?」
聞くまでもないだろうとリオンはテーブルに座って自分で持ってきたのだろうティーセットに紅茶を注ぐ。
毎朝鉢合わせするのは何時ものことだが、これだけ朝と言うのも珍しい。
もリオンポットから軽くカップに注ぎ何処か落ち着かない気持ちを整理する。
「何時から出るっけ?」
「10時だな。」
リオンが近くにある時計に目をやる。
もそれにつられて目を向け、さすがにそんな時間とは思わずに息を吐く。
「5時か・・・。」
「もう一回寝る?」
「いや、寝ている暇はなさそうだ。」
「?」
「
〜!久しぶりじゃない!元気だった!?」
突然出てきたのはルーテイ。遅れてカイルが飛び込んでくる。
「リオンさん!久しぶりです。」
「おい、カイル!急に入るなって言われてたろう!」
ロニがカイルに叱りつける。
「母さんが先に入ったから良いんだ!」
「お〜久しぶりだなリオン。」
「お前たちは礼儀を知らないのか?」
申し訳なさそうにスタンは笑う。
「俺もまだ早いって言ったんだけどな。カイルが聞かなくって」
「俺早くリオンさんや父さんみたいな英雄になりたいんだ!」
「それとこれとどんな関係が有るんだ?」
カイルは固まって目から出そうになっている涙をこらえていた。
「お前もきちんとしつけをしないから・・・。」
リオンが間髪をいれずに叱ろうとするとカイルが泣きそうに手を握り締める。
それに気がついたスタンがカイルの頭を撫でる。
「ごめんなカイル。」
「うえ・・・・・・・・・え・・・・・・父さんはわるく・・・・・・・・・・・・・うええええ・・・」
「何何!?私も行こうって言ったんだからね?カイルほら今日は楽しいお花見でしょ?
リリスも待ってるわ!」
「う・・・・ん」
「・・・聞いても良い?」
「ん?どうしたんだ
。」
「何でここに居るの・・・?」
の反応が可笑しかったのかロニがきょとんとして、誘ってくれたのはリオンさんだよという。
それにルーテイとカイルスタンも加勢する。
「私なにも聞いてないけど・・。」
黙ってリオンをみる。
リオンは咳払いをした後僕が呼んだと白状する。
その告白に
は部屋に戻った。
カイルとロニは怒らしてしまったかと心配していると
が何やら機械的な物持って戻ってきた。
「何それ?」
カイルがまだ赤い目で
の手に握られているそれをみる。
はそれをカイルに向けてボタンを押す。
かしゃ・・・。
機械的なその音にカイルは目をパチクリさせる。
一瞬の出来事にロニは興奮して
のそれを手に取った。
透かすように上を向けるが何も分からなかったのかそれを
に返す。
「これ何?」
「カメラ。」
カイルをルーテイとスタンの間に並ばせて、リオンとロニを並べる。
ぎりぎりカメラに入る所に
はシャッターを切った。
それを部屋の壁に映し出しだす。
それぞれの顔がそこに映し出されてカイルはショックを受けているようだ。
ルーテイ、ロニは黙ってそれを見つめている。
リオンはこういう機械かと納得したようだ。
スタンは信じられないと壁に近づくが、スタンが影となって画像が途切れてしまう。
「どういう仕組みになってるんだ?」
スタンがカメラに目をやる。
「聞いても分からないと思うよ?」
「な・・・!」
「そうよスタン、あんたが分かるわけないでしょ?」
さすがのスタンもそれには懲りたようでショックを隠しきれないようだ。
「すごいや!こんなものがあったなんて!!」
「カイル!いま何時だと思ってるんだ!?時間を考えろ!!」
「お前の声が一番煩いぞロニ。」
すいませんとロニが謝ると
はその姿にシャッターを押す。
ロニがあー!と気がついた時にはリオンの説教モードに入ってしまった。
「あんたって時々凄いことするわね」
「そう?でも着々と増えていくな。」
少し嬉しそうな
にルーテイはそう、なら良いけどと眠たそうに答える。
カイルはとっくにスタンの膝で眠ってしまっている。
その姿にシャッターを押すとルーテイがカメラを取り上げる。
「どうやって使うの?」
「ここを見ながら、このボタンを押すと出来るよ」
「ふーん・・・。」
ルーテイは
の隙を狙って
を写す。
「あ・・・。」
「やった〜
ゲット!」
「ちょ・・・」
返してくれと
はルーテイからカメラを奪おうとするが、なかなか取らしてくれない。
「恥ずかしいから・・・!」
「何言ってんのよ、別に良いじゃない。」
右を狙えば左に持っていかれ。
不意を突こうとしてもうまくいかない。
そんな姿にスタンは懐かしそうにリオンに話しかける。
「なんか、旅をしているころ見たいだな」
「・・・そうだな」
もっともルーテイが
をからかうことは少なかったが。
こういうやりとりは久しぶりかもしれない。
ロニはそんな会話を聞いて、
とルーテイをみる。
「・・・俺には分かんないな・・・。」
ロニは短い髪をそっと撫でた。
カイルをみると嬉しそうにスタンに甘え切っている。
楽しそうにハシャぐルーテイ。顔が真剣になっていく
。
それを見てどことなく哀しそうなリオン、懐かしそうに笑うスタン。
そろそろ出発となった時ルーテイが
から取り上げたカメラを持って、
を座らせる。
「リオンはい、並んで。」
「?」
ルーテイはリオンの腕を引っ張って
の横に無理やりに並ばせる。
その後ろにロニを連れてきて、後ろに眠るカイルとスタンを並べルーテイはシャッターをきった。
一瞬光って
の手にカメラを返す。
「これで大丈夫よ!」
「・・・。」
まさか自分の写真が撮られるとは思わなかった
は唖然とルーテイをみた。
お花見では一体何枚の写真を撮るのだろうか・・・?
カメラを持って
たちは港へと向かった。
おまけ
「綺麗だね
リオン「ああ、そうだな。
ロニ「俺はあの人の方が綺麗だと思うけど・・・。
リオン「お前花見の意味を分かってるのか?
ロニ「そりゃ・・・・
スタン「カイル!桜味とストロベリーどっちがいい?
カイル「桜味!!
スタン「ロニは?
ロニ「俺は・・・ストロベリーで・・・。
ルーテイ「私!昔食べ損ねたバニラ!
スタン「えー・・・と
スタン達にカメラを向けてシャッターを押した。
かしゃ・・・。
あ・・・
カイルがこけた。泣きだしたカイルの写真を撮ってしまったというのはカイルには内緒の話。