乗り越えられたなら、きっと。
チガ チヲコバム
ココロガ ココロヲクダク
キセキハ オトズレナイ
ユメナド…ソコニハソンザイシナイノダカラ…
あぁ、いつもの声がする。
どこかで聞いた声、
それは僕に暗い予感と束縛を…そして、望むことに対する無力さを与える。
進もうとすればするほど、まるでからみつく泥沼。
アラガウカ!
ムダダ。サカラエヌ サダメガアル…
僕には…無理だ…
けれど目が覚めてしまうと無理だと思いながらも抗っている。
抗いながらも無理だと思っている───…
-悪夢-
いつもの夢に、彼としては珍しいほどの勢いで目を覚ました。
始めに夜の気配の中、感じ取ったのは激しく脈打っている自分の心臓、そして浅い呼吸。
ゆっくりと身体を起こす。
じっとりと汗をかいていた。
ジューダスは大きく息をついて片手でひっかけるように襟を開ける。
見回せばもう見慣れた深夜の野営風景だ。
軽やかな虫の音が、今は耳につくほど喧しい。
小さくはぜる残り火の周りに眠る仲間たちの姿…全員がぐっすりと眠っているのを確認してジューダスはゆっくりと仮面をはずした。
少し汗ばんだ額に張り付いた髪をかきあげると、涼やかな夜風が頬をなでる。
ジューダスはしばし物思いに浸るようにして、一心地着いたように再び吐息する。
「どうかした?」
全員が眠っていたはずなのに隣から声をかけられジューダスはなぜかぎょっとした。
死角だったかそれとも元々素顔を知る彼女には無意識に警戒が働かなかったのか…
すぐ右手で眠っていた
がささやくように言って上体を起こし、こちらを見上げていた。
「いや…」
「悪い夢でも見た?」
くすりと笑った
の言葉にいつもなら適当に返せるだろうに。
図星だった。だから何も返せなかった。
そうしないことで
にも「異常」が伝わってしまう。見落とすくらいに些細な異常が。
「ジューダス」
起きて覗き込まれては顔を逸らすしかない。
「悪夢…か、どうせ聞いても話してくれないんだろうねぇ」
トサリ。
は再び草の褥に身を横たえた。
「寝よう?」
そう言われればそうするしかない。
考えなければならないことは山ほどあるが明日のためにも眠らなければ。
でも、またあの夢を見たら。
身を横たえると途端に襲ってきた睡魔に苦笑する。
全く休んでいる気にならないじゃないか。
「…手でもつないで寝ようか?」
「バカを言え」
いつものやりとりに少しだけ気を取り直す。
は、そうしないことをわかっていながら言う。
全く…素直にそうする、と答えたらどうするつもりなのか。
いや、それでもかまわないのかもしれない。彼女にとってはどちらでも良いことなのだ。おそらくは。
だったらなおさら、言えるわけもない。
「ジューダス、悪い夢ってさ」
は薄い毛布に包まりながら囁いた。
この季節特有のしめった空気と草の匂いがする。
「目が覚めた時、夢でよかったって思うためにあるんだって」
夜気の中、仲間たちの緩やかな息吹が虫の音に時折混じる。
「ま、一日嫌な気分になるよりいい夢の方が私はいいと思うけど」
「…そうだな」
「ジューダス」
これで名を呼ぶのは三度目だ。
なんとなく数えていた。
「おやすみなさい。───いい夢を」
訪問者さんが悪い夢を見たと消沈された時に
レスし、思いついた話。
冒頭のカタカナはジューダスの秘奥義を放つ時に入るテロップです。
個人的にはエルレインが横槍を入れているのではないかと思ってます。
