天国からのシャル日記
-トラウマ-
「ジューダス、はい」
シン
が坊ちゃんにそれだけ言って差し出したもの。
それはクリーム色の物体が入っている小洒落た陶器製のカップだった。
プリン…?だよね。
どうみても。
さすが現地はアクアヴェイルだけあって入れ物には特徴がある。
でも、プリンだ。
何故か少々微妙な顔をした坊ちゃんだったが、一緒に渡されたスプーンでひと掬いして口に運ぶ。
次の瞬間。
「……っ!!!」
坊ちゃんは口に手をあてがって危うく戻しそうになるのを耐えた。
それがすこぶるまずかったというわけではない。
さすがに異文化アクアヴェイルでもそんなものを売っているわけは無いだろう。
しかし、それは甘いものと思って手をつける人間にとっては予想だにしない味だった。
「…なんだこれは!」
食べ付けない味に思わず怒鳴る坊ちゃん。
「………茶碗蒸し」
「茶碗蒸し?」
「卵とアクアヴェイル独特のだし汁に具を入れて作る料理。
私は、小さい頃プリンと間違えて食べて恐ろしくまずいものだというトラウマをつい最近まで抱える羽目に陥った」
「…………そのトラウマを僕にも抱えさせるつもりか?」
慣れればどうってことないんだけど、と今は平気らしいシン
。
プリンとだし汁では天と地ほどの差があるだろうに。
坊ちゃんはもうそれ以上、匙をつける気はなさそうだった。
「で、味はどう?」
「今、それを聞くのか」
シン
が確信犯だったのかどうかは定かではない。
ともあれ坊ちゃんはそれ以来、茶碗蒸しに手をつけなくなったとかならなかったとか。
あとがき**
管理人実話。
実感しにくい人は、自販機で買ったジュースを飲んだら中身がだし汁だったと思えばいい。ジューダスが子供だとか和んでしまった人は甘い。
大人でも絶対吹きます。よりにもよってだし汁では。
管理人の場合は、お子様ランチにデザートのごとくついていたことを今でも明確に記憶しています。
お子様ランチってことは幼稚園か小学校低学年か…
プレートのデザートポジションで茶碗蒸し出すって結構ご無体と思う。
ちなみに、食べられるようになったのは二十歳を過ぎてから(苦笑)