四つ葉
四つ葉のクローバーを見つけると「幸せ」になれる。
もはや由来もあいまいな、世界的に有名な言い伝えでもある。
そういえば…
リオンは思う。
幸せとやらが何か探し回っていたリアラは、その言い伝えを知って本気になって探し回っていたものだ。
どこだったかも忘れた。ベクトルが異なる時間軸での、旅のひと時だった。
確か探そうとするとみつからないものだと、
は言った。
緑の絨毯に膝をついて、三つ葉の群衆の中に視線を馳せる
を前に、思う。
あの時はカイルとロニも一緒になって探し回って、結局みつけたのはそれに参加しない
だったはずだ。
そんなことをなんとはなしに思い出して、ふと、首を巡らせて…
「みつけようとすると、みつからないものだとお前は言わなかったか?」
みつけようとしないと、みつかる不思議を実感するリオン。
「四つ葉に限らずそう思うよ」
「なら、探さなければいいだろう」
は少し前から四つ葉を探していた。
ここがどうという場所でもない。
ただ、散歩に来て、ただ、いい天気で、ただ、気まぐれに鮮やかな緑を目にしてそう思い立っただけらしい。
「みつけたいと思って探してるなら、みつけられた方がうれしいじゃない」
顔も上げずに
。…まぁ、正論だ。
が、割と目が真剣だ。何を探しているのか再確認したくなる。
リオンは以降、黙って
を眺めている。
いい天気だ。
そしてまもなく、
は先ほどリオンが目を止めた辺り…割と近い…に至っていた。
「あった!」
リオンの見つけたものと同じかはわからないが、
はうれしそうに顔を上げた。
「リオン、きれいな四つ葉だよ」
「そうか、良かったな」
時間を無駄にしたくないなら、さっさと教えるのが正解だったろうかと思う反面、別に急ぐこともないことを知っているので、余計なことを言わない。
「あっ、ここにも…こっちにも。 …………」
さすがにリオンの目に付いたのはひとつだったが、
はいくつかそこで発見したらしい。そうして、なぜだかじっと動きを止めてそこから動かなくなった。
「?」
「……」
間(ま)。
「どうした」
「ここ、群生地かな。今、8つまでみつけたとこ」
多い。
「そして、目をそらしたらどこまで数えたのかわからなくなった」
「そうか」
僕のせいか?
は再び緑の群衆と向き合ったが、それ以上数える気はないようだった。
リオンも歩を寄せて、そこを覗き込む。
確かに、そこから四つ葉を複数見つけるのは容易だった。
「でも、四つ葉がいくつもあるのってここだけだね。不思議」
「群生しているなら、まぁなくもない話じゃないのか」
「そうだね」
そう同意しつつ、
は首をひねっている。
株が同じだから同じ葉が出やすいのだろうが、そもそも種子から芽が出たことを考えると、もとは周りと一緒でもあったはずだ。思いついてしまうと、不思議ではある。
「満足したら回収して、行くぞ」
「満足したから、回収はしなくてもいい」
みつけただけか。
大体、リオンの知っている人間の行動といえば、
四つ葉を見つける → 採る → 本に挟んで押し花にする
という感じなので、腑に落ちなかったのを察したのか、
は続ける。
「摘んでいっても帰るまでにしおれるし、よりたくさん残して置いたらどんどん増えるのではないだろうかという浅知恵」
→ そして数年後色があせて捨てられる という結末も は知っているらしい。
「両手に抱えられるくらい広がったら、楽しいよねぇ」
「何年計画だ」
のことだから、毎年様子を見に来そうである。
四つ葉の天然圃場にするつもりだろうか。
「じゃあ、少し根っこを持って帰って庭に植えてみる」
もう一度何年計画か聞くべきだろうか。
しかし、
は言っただけで実行はしなかった。
立ち上がって、いくばくもない服についた冬の名残の枯草を払って、リオンが歩き出すのを待っている。
「持ち帰らないのか?」
つい、聞いた。
「シャベルがないと、掘れないもん」
「…………そうか」
今日何度目か同じフレーズで返して(でも意味合いがみんな微妙に違う)、並んで歩きだす。
日差しが強くなってきたせいか、風が心地よい。
なんでもない、うららかな休日だった。
20160509UP**
四つ葉の群生地をみつけたので喜びのご報告。が、 の観察に興じているリオンの図になりました。
話中の「18年後」の話は奇しくもこのお題の1番目の話です。
このお話は、元気をくれた藤音さんとみいなさん、そしていつも応援してくださる方々に。