緑茶効果
「おはよう、リオン」
爽やかな朝だった。にとっては、の話だろう。
そんな感じで後から起きてきた彼女は挨拶をしてきたがリオンのテンションは低い。
というのも……
「昨日はほとんど寝られなかったよ」
「そうか、僕もだ」
なんてことがあったからである。
「そうなんだ。……やっぱりお茶のせいかな?」
2人そろってが意外だったのかは首をひねった。
それでも時計が朝の4時を回ったところまでは覚えていると言った。
昨晩は、が珍しいお茶を手に入れたとそれを食後に飲んだ。
淹れ方まではわからず、一杯目は相当濃かったがリオンとしてはまずくなかったので、就寝前にもう一杯飲んだ。
おそらくそれが悪かったのだろう。が。
「お前は寝る前に、そうなるからと飲むのを断ったろう」
は遅い時間に飲まなかったはずだ。
「うん、だからなんで寝られないんだろうと仕方ないから、浪漫のある話でも考えてたんだけど……」
つっこみどころが多い発言だ。
「とりあえず、お前がロマンとかよくわからんが、浪漫というならまだわかる」
頭がよく回らないので、適当に返してみる。
「そう。で、4回時計の針が回りきる音を聞いたあたりでお茶のせいかー!って思い至って、それからカフェイン凄ーって無駄にテンションが上がって、2時間くらい経った」
「そうか」
は、11時前に自室へ戻ったので4回だと夜中の2時過ぎ。それから2時間だと朝の4時だ。計算は合っている。
「それで? 少しは寝られたのか?」
ノンカフェインのハーブティを入れられたので口元に運びながらリオン。
「なんだかんだ言って、1時間半も寝られた」
そこは「も」なのか。
そのまま返すと
「朝まで寝られない貫徹フラグだと思ったから、それだけ寝られれば上出来だなって」
と返ってきた。
「幸せな考え方だな」
「そうでもない。悪魔が大戦している夢を見た」
「……相変わらず夢見の悪い奴だな……」
悪魔が天使とではなく、悪魔の内乱か。と凄惨な現場を思い描くリオンは、言いながら長袖のシャツの上にショールを軽く羽織るを眺めやる。
「?」
「ちょっと書庫行ってくるね」
平日である。まだ出勤には早い時間だ。
だが、何のためかはなんとなくわかるので、ただリオンは見送った。
そしてそれこそ10分と経たないうちには帰ってきた。
「カフェインの半減期は4~6時間だって」
やはり。
どれくらい眠れない可能性があるのか、調べに行ったらしい。
リオンは二杯目のお茶を飲みながら、聞く。
「ものによるだろう。一般的な緑茶よりコーヒーの方がカフェインが多い気がするし、それでいくとお前の不眠の時間は長すぎる」
「昨日飲んだお茶」
くるくるとカールした茶葉の緑茶だった。
芽茶、と言って製造過程でカールした芽先の部分だけを選別したもので、端切れにあたるため安価だが味は一級品に相当するという触れ込みだ。
ついでに、カールした分がすべて開ききるまで普通は何杯も楽しめるものらしい。
「相当カフェインが強いらしいよ。明記されてなかったけど、強いって言われる玉露がふつうの緑茶の6倍でドリップコーヒーの2倍くらいだから玉露くらいだったのかも」
なぜは紅茶ではなく、この邸内ではあまり出回らない緑茶を基準に話しているのだろう。
疑問に思いつつ、リオンはそれを口にしない。
言及するほどのことでもないし、今は半ばどーでもいい気分だ。
「しかも一杯目、相当の濃さで入れたでしょう」
「あぁ、あれは濃かったな」
は2杯ティーポットから入れて、あとは薄めるだけで2,3杯飲んでいた。
時間は早かったが、最近ずっとノンカフェインのハーブティばかり飲んでいたのでてきめんに効いたのだろう。
「やっぱり調べてから入れればよかったなぁ……」
はようやくソファに落ち着いた。
「普通は調べないだろ。ソムリエじゃあるまいし……」
もらった説明書きは低温でじっくり入れるとおいしいなどと無難なことしか書かれていなかったため起きた惨事である。
「芽茶は濃厚で力強い味わいだって」
少し考える。間(ま)。
「そうだった?」
「お前も飲んだだろうが」
は見える化したい人間なので、数値で見るか二つ並べて飲まないと差をはっきり割り出しきれないようだ。
「苦い緑茶だった」
「だからそれは濃かったからだろ」
リピート。
「そのあと、甘い感じもあったぞ。今度は薄く入れて朝チャレンジしろ」
「リオンの舌は肥えている」
「お前が苦みを感じすぎているせいじゃないか?」
どうも苦いものが苦手な風なので、余計にそうなるのだろう。
「ちなみにオベロナミンCのカフェイン含有量は50㎎でコーヒーの半分、ココア相当だって」
「企業の内部資料を見てくるな」
いつの話だと思わずつっこむリオン。
玉露が180で紅茶は30だとは告げ足した。
そういわれるとずいぶんな開きである。
もし芽茶が玉露に匹敵すると(あるいは玉露そのものの芽を使用しているとなると)相当、パンチ力が強いとわかる。
しかもそれをおそらくは倍くらいの濃さで飲んだのだ。
「カフェインも長期摂取してる人は慣れるみたいだけど、ずっと飲んでなかったからね……前も似たようなことがあったから、寝る前の摂取は避けたのにこれかぁ」
だからこそ、思い当たったら清々しいほどに諦めたのだろう。
「リオンは? 貫徹だったの」
「いや、僕は多分、2時過ぎくらいには寝たぞ」
「何その耐性の違い」
明らかに就寝前の摂取を避けたと比べれば確かに軽い利きだ。
90分睡眠に比べれば、平常時とも誤差の範囲と言えないこともない。
「僕は紅茶、コーヒーを一日一杯くらいは飲んでいるからな。多少違うんじゃないのか」
「えー、いつのまに……」
セクションが違うのだから互いに知らぬ間に飲む時間は多分にあろう。
「コーヒーなんて大人な飲み物を」
そこに来たか。
「ほかの奴がコーヒーだから、ついでに入れてくるんだ。別にすごく飲みたいから飲むというわけじゃないぞ」
というか大人な飲み物とは一体。
の中では
「でも砂糖は入れてるんでしょ」
苦いものが大人の味らしい(そして本人は飲まない、食べないものが多い)。
「……」
図星なので黙るリオン。
「でも頭脳労働してる時は糖分あった方がいいっていうしね」
「とってつけたように一般論を持ち出したな」
「そこは敢えて言及しないけど、まさか角砂糖を10個入れてるとかいうオチは……」
「あるわけないだろ!」
コーヒーカップ1杯に10個の角砂糖が溶けるのか、謎である。
「というか、お前はなぜ朝からそんなに元気なんだ。ほとんど寝てない状態だろう」
「徹夜明けって、妙にハイテンションにならない?」
「……………………ならん」
どちらかと言えば、すぐにベッドに入って寝たい派のリオンだった。
2017.4.29筆(4.30UP)
リアルタイム実話中に寝る寸前に考えてた話。
次の日、珍しく昼寝しました(ゴールデンマンス中)。
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