家庭の味?
今日も今日とて、雑談だ。
なぜか、本人の与り知らないところでの話になる。
それだけ彼らから見れば彼女は謎なのだろう。
とはいえ、リオンに聞かれても困るのだが。
復興拠点、執務室での一コマだ。
同室人はいつもどおりエクセルとパスト。
しょうもない話題を持ってくるのは大体年少(だが、リオンよりは上)のパストである。
「さんって器用ですよね」
休み明けで、昨日が気まぐれに作っていた差し入れを持って出てきたのでそれを分けてやるとそう、言われた。
「そうでもない」
「そうですか?」
昨日作っていたのは、クッキーだった。
リオンにとってもあらゆる意味で意外だ。
別に頻繁に作るわけでもなければ、そもそも本人がクッキーはあまり食べないので女性らしい行いの象徴のようなことをされると逆に何があったのかと思ってしまう。
だが、残念ながら(?)理由があって……クッキーにはそこら辺に生えているものが入れられていたりする。
ハーブだとかはもちろん、何だったか花や新緑のものだ。
本人的には、季節の材料の採取とか気まぐれとか…実験の一環だろう。
それがわかると、まぁいつもの行動ともいえる。
「でもおいしいですよ、このクッキー」
「味見してからいけるものを選んではいるらしいな」
なんでもかんでもというわけではない分、良心的だ。
なお、がクッキー作りは意外、という話はすでに終わっている。
「紅茶のブレンドとかアロマとか…この間はプリンター直したっていうし、それ、器用以外のなんていうんですか?」
「違う。あれは単に僕らが興味の過程から出来上がったものを見ているだけだから器用に見えるんだ」
「じゃあ不器用なとこって?」
臆面もなく聞いたパストの言葉に沈黙が下りた。
「そんなことを聞いてどうするんだ」
なぜか少し眉を寄せるリオン。
「えーだって、色々そつなくこなす人が不器用とかちょっと失敗するとギャップ萌えってあるじゃないですか」
「殴っていいか?」
無表情だが割と本気だ。
萌えと言う言葉になんとなく不快感を覚えた結果。
「まぁまぁ……でも確かにいつもでき上がったものしか見てないから不器用ってイメージつき辛いですよね。何か苦手なこととかあるんですか?」
俗っぽい言葉も平気でリオンにすら用いてくるパストとの間に、仲裁に入るのは大体エクセルだ。
執務室には3人しかいないので当然の役割だが、だからこそもっている人間関係のような気もする。
「苦手なこと……」
「……」
「…………」
「………………」
「ないんじゃないですか!」
「違う! とっさに思い浮かばないだけだ!」
それはないというに等しいが、多分、できないこともできるまでやってしまうから、器用に見えるのだ。それはもうわかっている。
「苦手な料理とか」
「女性あるあるですね」
それをヒントにリオンは少し考えた。
「卵焼き……」
「「卵焼き?」」
ぽつ、と呟いたリオンにパストとエクセルの声が被った。
「そういえば、簡単な料理でも卵焼きだけは出てこないな。本人も苦手だと言っていたような…」
「めちゃくちゃ普通の家庭料理じゃないですか!」
「卵焼きとか、俺でも作れますが」
意外すぎると二人はざわめいている。
「スクランブルやサニーエッグは出るが、確かに卵焼きはない。……できないのか?」
本人がいないのに、疑問符を飛ばすリオン。
ものすごく今更すぎて首をひねるほかはない。
そこへ
「こんにちは」
当の本人がやってきた。
「あれ?さんどうしたんですか」
「朝渡したクッキーに合う紅茶を教えてもらったからお裾分けに」
気が利く。
「ちょうど今、さんの話してたんですよ」
「……なんかデジャヴだな。いつもそんなこと話してるの?」
は嫌そうだ。
そもそもが自分のいないところで自分の話をされるのは好きではないタイプだ。
「そのクッキーの話をしてたんですよ」
「で、卵焼き作るの苦手なんですか?」
「話が10kmくらい先まで一気に飛んだよ、パスト」
訳が分からない様子のにエクセルがざっと経緯を説明する。
「あぁ、確かに卵焼きはねーできない」
きっぱり。
「何? リオン、食べたかった?」
「お前は何を聞いていたんだ。お前の苦手そうな料理の話をしていたんだ」
「苦手と言うか、作ったことないから」
「えぇーーー!!!!?」
パスト、うるさい。
リオンとの表情が同じようにしかめられた。
「だって、卵焼きって難しいでしょ?」
「いやいやいや、普通に焼いて固めればいいでしょ!?」
「専用の器具が必要だったり」
「普通に雑貨屋で売ってるじゃないですか」
「卵焼き専門で売ってるお店があるじゃない」
「だから!?」
「プロじゃないとできない奥の深い料理なんだろうな、って」
「…………」
の頭の中では卵焼きは家庭料理ではなく、高級料理くらいに分類されているらしいことが発覚した。
「本気で言ってます?」
「絶対難しい。絶対失敗する」
「その自信の持ち方は間違っているぞ」
さりげなく諭してみるが、癖のようなものなので治らないであろう。
「黒焦げの卵焼きを提供したり卵を無駄にするより、君子危うきに近寄らず」
「虎穴に入らざれば虎子を得ずはどこ行くんですか」
諸刃だ。
「大丈夫ですよぅ。専用の使えばそれなりに……!」
「厨房にあるのは知ってるんだ。でもリオンの舌が肥えすぎていて判定が危険なので、危ない橋は渡れない」
「人を危険区域に設定するな」
ただでさえ作ったことがないのに、メイド長(=ある意味プロ)ことマリアン(=リオンにとって彼女の作るものは大抵おいしい)の卵焼きなどと比べられてはとんでもないということをリオンが知る由はない。
「同じ卵なら、目玉焼きの方が好きだしさー」
本音が出た。
「さん、だったら厨房行って作ってみません!? これから!」
「私の失敗するところが見たいって悪意しか感じない」
むしろ好奇心なのだろうが、キラキラ目を輝かせて不要に高揚しているパストもは危険とみなしたらしい。
「リオンさんが食べたいって言ってましたよ!」
「嘘をつくな!!」
反応はしたが、リオンの様子を見て本当に嘘だとわかるとは首を振った。
「こうなると梃子でも動かないから、あきらめろ」
双方、悟っている。
「でもさん、高級レストランで卵焼きは出ませんよー」
はは、とそれを見ていたエクセルがそういうとの表情が動いた。
何気ない言葉だが、ある意味発送の逆転だ。
確かにそんなものはダリルシェイドの高級レストランをすべて回ってみたところで出てこないだろう。
「確かに……!」
納得した。
「思ったよりハードル低い……?」
「お前の思い描いているのはハードルではなく、むしろ棒高跳びのバーだろう」
普通は、跨げるくらい低いやつではなからろうか。
「じゃあ作り方を見て作ってみようか。1回だけ」
「なんで1回?」
「あんまり好きじゃないから」
本当に趣向の問題であるらしい(汗)
「えー普通に作れればそれなりにおいしいですよ。マヨネーズかけたり」
「マヨネーズ!!?」
パストの何気ない一言に波紋が広がった。
「ケチャップじゃないか?」
「醤油っていうのも通でよく聞きますよ」
「……よくわからないけど、卵焼きって味ついてるんじゃない…?」
誰が正論なのか、よくわからないが話が大きくベクトルを変えた瞬間だった。
その時、歴史は動かない。
「マヨネーズですよ!絶対!」
「なくはないかもしれないが、僕的にはないな」
「醤油。アクアヴェイルから入ってくるのが最近、マイブームでーーー」
男性陣は、味覚の問答になっている。
それを見てはぽつ、とつぶやいた。
「私、ゆで卵の半熟も好きだなー。……明日の朝、たまごサンドにしよ」
2017.5.23
はリボンを結ぶのとかも割と苦手です(神経質すぎていじりすぎて結局、気に入らない出来になるタイプ)
マヨネーズはツナ推奨。ゆで卵にはなんでも合う。←塩かマヨ派かな?
そんなわけで、卵焼きは
_人人人人人人人人_
> 作ったことない <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄
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