D3番外-「とある史実書の記録より」からのこれ。
富士山一周
「リオン、イクシフォスラー出して。大至急」
休日だった。
春が近づき庭に散歩に出ていたが、戻ってくるなりいきなり言った。
「なんだ? 何か問題が起こったか?」
「こんなうららかな日に外に出ても、ストレスが一向に減る気配がない。ここはひとつ、私のストレス解消のため、ぜひクールパイロットにアクロバットな飛行を……!」
「待て」
全く意味がわからなかった。
「もう少し分かりやすいように言ってくれ」
「だからね、イクシフォスラーで超高速飛行かつスリルのある感じで世界一周して欲しいの」
「なぜだ」
「私の気が晴れそうだから」
……………………。
沈痛な面持ちで思わず額に手をやるリオン。
言わんとしていることは分かったが、疑問も残る。
それでストレス解消になるのか?
そもそもその思いつきはなぜ、今この時なのか?等々
しかし聞かなくても は後ろの質問に自ら答えてくれた。
「なんで今まで思いつかなかったんだろうか。風も入ってきたら最高なのだけど」
「外気は入れられるが、絶叫マ じゃないんだからな?」
「イクシフォスラー絶叫マ 計画でも立てようか?」
「断る」
思いっきり声で不満を示す 。
しかし、絶叫マ 計画などと言う物騒な言葉が出たから速攻断ったので自業自得だ。
そもそもその発想のヒントはリオン自身が単語として与えてしまったことにはリオン自身は気づいていないが。
「外気は取り入れられるよね」
「排気の問題であって、臨場感を煽るためではない」
「ハロルドが作ったものなら、実はオープン仕様になるとかありそうじゃない?」
「……………………」
二度目の沈黙。
否定しきれないところが怖い。
「でも今日は時間あるって言ってたでしょ? 空中散歩でもいいからつきあってよ」
「断固断る」
なぜか意地になって断るリオン。
はしばらく無表情で沈黙してしまった。
「……じゃあイクシフォスラーの操縦教えてよ」
世の終わりだ。
「駄目に決まってるだろう! 大体、お前が自由にイクシフォスラーを使えるようになったらどんな使われ方をするか……」
気がつかない間に遠出必至だろう。
「アクロバット飛行を極めたい」
(いつものことだが)斜め上を行かれた。
駄目だと言いつつリオン。
しかしそう考えるとふと素朴な疑問が浮かぶ。
「そもそもなぜ今までお前にその発想がなかったのか疑問だな」
「あったよ。でも飛行タイプの乗り物は失敗したら即死ありだし、イクシフォスラーは世界に一機しかないからいろんな意味で危険だと思うんだ。教わっても危ないと思ってるよ」
それは正しい。とても良識的な見解だ。
「パイロット」という職種はまったく一般的ではないが、飛行竜だとて離着陸時にはクルーは相当の神経を使う。しかもあちらは「生体」でもあるため、多少操縦を間違えても自分でバランスをとってくれるが、イクシフォスラーは完全に人間が操縦する類の「機械」なのだ。
オートパイロットの機能もあるが、それは水平飛行に入ってからなので誰でも使えるものではない。
「オートパイロットを使うにしても教えてやったら最後、お前毎週どこかに出かけたりするつもりじゃないのか」
「そんなことはないよ。インドア趣味もたくさんあるし、それにオートパイロットなんて水平飛行だからあんまりおもしろくないじゃない」
「……そうか、今求めているのはあくまでそれか……」
呆れるしかないリオン。
「でも景色見るのにはいいかなー晴れた日とか。リオンが教えてくれないなら自分でいじってみようかな~」
「絶っっ対に駄目だ。死ぬぞ?」
「それが怖いから、いままで触らなかったんだけど」
その辺は己の腕と現実をわきまえているらしい。
「それにお前には管理権限もないから、いずれにしても管理者か僕の許可がなければ触れないぞ」
「じゃあ管理部門の許可を得よう」
何事も言い方ひとつで説得力が変わるもの。にかかれば管理部門は許可を出してしまうだろう。
絶対に許さないように言っておかねば。
「……」
気づけばじっと が自分を見ている。
今考えていることを読まれていた感じがする。
「絶対に許される理由を提示してみせる」
「ふざけるな#」
というわけで、リオンはその日の午後、よく晴れた春の青空にフライトをすることになる。
はマスターキーのある場所も知っているのだ。ある意味危険要素が多すぎる。
自分が付き合うのが結局、一番安全で手っ取り早いと気づいたリオンだった。
「やっぱり大空はいいね。雪山きれい!」
ダリルシェイドの南西に位置する高山の上を飛ぶ。 はもうそれだけで上機嫌だ。
「外気がなくても大丈夫そうじゃないか」
「仕方ないから内部空調をマックスにしてください」
「嫌だ」
と言いつつも、 の要望により地形の高低さにあわせる様に飛ばしてやる。
それだけでも臨場感はかなりある。
敢えて遊覧飛行などしたことがないので自分もどのような感じか分からなかったが、これは確かに楽しいし景色もいいので機嫌はよくなりそうだった。
「海につっこんでください」
「なんで敬語なんだ?」
つっこむのは無理としても、急降下して海面すれすれを飛んでやる。
しばらくなかったテンションで喜んでいる 。ベルトをはずしたら即終了という条件を設けたため、席にはおとなしくついている。
「楽しー!」
まずい、新しい遊びを覚えさせてしまった。
またねだられる未来を予測して、今更思ったが遅い。
そんなふうにあちこちを回ってきた後、 は爽快な顔をしている。
本当にストレス解消になったらしい。
「楽しかった! ありがとう」
思えば最近、事務仕事ばかりで疲れたようなふうはあった。
聞けば仕事は大したことない、というかむしろ誰でもできるんじゃないかくらいのことを言っていたので本人的にはつまらないのだろう。
いろいろな人間が出入りするようになり、人間関係でのストレスは特に にとってはウェイトが重いようだった。
ダリルシェイドが復興をはじめたばかりの時の方が、活き活きしていたような気もする。
こういう人間だから、頭を常に回転させてブレインストーミングのようなことをしているのが楽しいのだろう。
そして、常にものを考えている人間なので本領を発揮する場がないと、発散されるべき力が飽和する。
職業としては学者、仕事としては企画立案の方が向いている気もするが、物を作ることに興味があったり、観察分析も好きなので……逆にサービス業や事務職は合っていないのかも知れない。
やってできないことがないのが、また厄介で、適正無視でもできるまでやってしまうため、苦手・合わないという事が周りに伝わりづらいということは、リオンは知っている。
そんなことをしている内に、ガス抜きがうまくいかないと今回のような極端なストレス解消をしたがる羽目になるのだろう。
「またつきあってね」
「嫌だといったら?」
「すっごく楽しかったから自主訓練する気が起きた」
「わかった。行きたくなったら必ず僕に打診しろ」
そんなこんなで……
リオンは時々アクロバットな飛行で、クールパイロットの腕に磨きをかけるのだった……
FIN
2018.3.20筆(5.11UP)
超まじめなD3番外「とある史実書の記録より」の続き。
平和な時代が来たら、ストレス溜りがちになっている(仕事あってないんじゃ…)。
富士急ハイランドで「富士飛行社」という大画面シアターに乗っててできたお話です。
けっこうアクロバットな飛行してくれたりするのが楽しい擬似フライトアトラクション。
隣で無理無理無理!高い!怖い!!とか叫んでる男子学生のリアクションでなぜかロニを思い出しました。
富士山一周は富士飛行社のアトラクションの飛行ルートです。
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