ネタ切れ
「リオン、何か欲しいものある?」
食事が終わっておちついて。お茶の最中。
ふいに が聞いてきた。
「なんだ、やぶから棒に」
「それはいつものことでしょう?」
「……」
その切り返しにもすっかり慣れてしまったのか、 は自分で認めている。
リオンは斬新な切り返しを逆に食らって少々面食らったが、話を元に戻してみた。
「欲しいもの……は特にないが、それはどういう意味で聞いているんだ」
例えば、買い物に出るからついでに何か買って来ようか的な意味なのか、単に別の人間との話題から飛んできた疑問なのか、意図によって答えは異なるだろう。
普通、そんなことまで考えないが、相手が相手なので計りかねてリオンは真意を確認することになる。
「もうすぐリオンの誕生日だから、何かほしいものがあるようならそれがいいかなって」
「……」
再び沈黙。
は大体、相手を推し量ってプレゼントを選ぶ。本人的にはサプライズも混ぜ込むのが楽しいらしく、まず何が旬かさりげなく探ってくることはあっても、直球で聞くことはまず、ない。
そんなことをしては、まったくこれっぽっちもサプライズにはならないからであろう。
「珍しいな、お前がそんなことをわざわざ聞いてくるとは」
「うーん……何かね、ずっと考えてるんだけど今回にいたっては何も思い浮かばないんだ。楽しそうなものが」
「誕生日プレゼントに楽しさはいらんだろう」
それでも遊び心でも何でも本当に不要なものは贈ってこない主義なのが良心だ。
一応、合理性や実用性は毎回考慮されている。
そんなことを今更ながらに、思う。
改めてリオンはまじめに答えることにする。
「今は特に欲しいものもない」
「えー」
困ったような顔をする 。
「たまには本当に欲しいと思うものをあげたら、本当に喜んでくれるだろうからそれもいいかと思ったんだけど……」
「……」
若干、ほだされそうになる発言ではある。
「マリアンさんにリボンかけて渡したら喜ぶ?」
「今すぐ死ぬか?」
ここ数年、特にシンを相手には口をついて出なかった類の暴言が、すばらしい速度で出た。
しかもなぜ真顔なのだ。
冗談っぽくないのが怖い。
「まだ時間あるし、ちょっと考えておいてよ。私も考える」
「別に、お前が選んだものならそれでいい」
「……本当に?」
聞き返されて、うっ、と言葉に詰まるリオン。本能的に言ってはいけないことを言ってしまったような気になる瞬間だ。
何を選んでも文句は言えないと、自分の首を絞めた気がする。
しかし、そんなリオンのある種の予感をよそに はまた悩み始めたようだった。
「いっそ、逆に定番なお食事コースとかお茶とか……でも男性的に女におごられるってどうなの? なんかリオンは嫌がりそうだし、むしろ食事代は私に任せろとかどんだけ男気のある女なのかと……」
「話がずれてるぞ」
別に喫茶でもかまわないが、それでは普通にデートか、休日の買い物ついでの彼らの日常とあまり変わらない。
「じゃあクレスタへ行って、みんなでお祝いをするサプライズ」
「サプライズ過ぎてやかましいから絶対に嫌だ」
どんどん望まぬ方向に流れ出したので、リオンは話を一旦区切る。
「僕から条件を出すならダリルシェイドの街中で、しかも店で調達できるものにしろ」
これは単に、奇想天外な方向へ行かないためのストッパーである。
「私、どれだけおかしなものをリオンに毎年あげてると…?」
「……」
そう言われれば、もらう側の都合を考えたとても良心的なものだが「まぁそれなら」と は了承したようだった。
「何か考える」
「あまり考えなくていいぞ」
そんなこんなで、珍しく がリオンにサプライズを放棄して「あなたの誕生日近いから」という行動を明示した日だった。
それから数日後。
リオンの誕生日。
は、律儀にプレゼントをよこしてくれた。
大きな袋のラッピングに入ったそれをあけると、いくつかの袋に分かれてプレゼントらしきものは入っていた。
ラッピングは、シックな茶系の色合いにアンバーゴールドのリボン、と高級感ただようセンスだ。
しかし、開けてみると。
…………。
リオンは思わず、袋を手にしたまま動きを止める。
そして、そのまま。
「これはなんだ」
の方は見ないまでも、ダイレクトに聞いた。
「今回はねー悩んだ挙句に文具詰め合わせにしてみた」
「見ればわかる」
なのに、そう聞いたのはおよそリオンに似つかわしくないデザインのものが詰め込まれていたからだ。
デフォルメされた小鳥(インコ?文鳥?水色やら黄色やら白い)のメモ帳、付箋、ノート、スケジュールシールにインデック、……普通のシールも。
「かわいいでしょう」
「そういう問題じゃない」
これを自分が使っていたらさぞかし、周りは驚くであろう。しかし、リオンはそういった類の悪戯に興味はない。
「常々、ちょっといいなと思っていたのだけれど付箋とか絶対使わないことがわかっていたので、自分では買えない類のアイテムを揃えてみた」
「その『自分では』というのは僕や他人ではなくおまえ自身がという意味だろう#」
「驚いた?」
「ある意味、驚愕だ」
はその反応でご満悦だったらしい。今年に関してはサプライズが思わぬ方向に行ってしまっている。
シリーズで統一感が半端ないということは認める。
「使わなくてもお前なら収集品だろう。……お前にやるぞ」
「失礼だな、もらった本人にあげるとか」
「そこまで心はこもってないと見たが」
リオンは袋からそれらをテーブルにぶちまけて の前に広げたい気持ちになりながら、袋ごと差し出す。
心がこもってないらしい証拠に、 はそれを言葉と裏腹のなんでもない感じで受け取った。
「じゃあこれを」
本命が別にあったらしい。
とすると、本当に今のはただ反応が見たかっただけで集めてみたという結局は手の込んだサプライズだ。
「というか、こちらには他にもラッピングがまだあるが」
「あけたい衝動に駆られるならあけるがいいよ」
「その言い方#」
あける価値がないと判断し、そちらもまとめた袋ごと戻した。
「ラッピングは頑張ったのに……」
「そんなところに手間をかけるな」
自分でラッピング用品も用意したらしい。むしろそちらの方にコストがかかっていそうだが。
「あ、でもリオン。これは開けてみてよ」
「……」
その時点で、開けた瞬間に何か起こるであろうことは容易に推察できた。
警戒しながら開ける。
「………………」
ラッピングの中にラッピングされた袋が入っていた。
とりあえず、開ける。
……ラッピングされた袋が出てくる。
開ける。ラッピングさr(略)
「マトリョーシカマジック☆」
「意味がわからな過ぎるぞ」
5枚を超えたラッピング袋の前で、もはやため息しか出てこない気分である。
だが、袋が両手のひらに乗るサイズになると封筒が何枚か入っていて、開けるとそれぞれにカードが一枚ずつあった。
「……」
「姉と甥と友人たちからのメッセージカードは買えるものではない」
「その言い方やめろ」
要するにルーティとカイルとスタン。その他フィリアやマリーからのバースデイカードだ。
どこまであの時間で話を広げたのかジョニーのものまであった。
「これ、リオンが二十歳の時にやればよかったなぁ…なんで、思いつかなかったんだろ」
ちなみに今回は特別アニバーサリーな誕生日でもなんでもない。
「私も見ていい?」
「構わないが……ろくなことは書いてないぞ」
というのは一番最初にリオンが開いてしまったのがルーティのものであったからであろう。
がそれを楽しそうに受け取る前で、リオンは本命らしきプレゼントを開封している。
それは、実用的かつ、ごくごく一般良識的な品物だ。
サプライズは前段階で終了した模様。
「カイルのカード、たどたどしくて笑えるんですけど」
「なぜかロニのものも一緒に入っているな。『俺が成人したら一緒にナンパしてください』? 冗談じゃない。……というかこれは本当にバースデイカードなのか」
逆にお願いされてどーする。
だが、 は鳥たちの文具を膝の上に乗せたまま楽しそうだ。
……。
バースデイカードを戦友たちから集めるのは悪くない。
いつか の誕生日にも、同じことをしてやろうと思ったリオンだった。
2018.5.1筆(8.21UP)
友人の誕生日にやらかした。
アニマル関係のラインナップすごい。全部欲しい。
ダイソーがキャンドゥを超えた。と思いました。
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