夢ヲ見ルヨウニ、生キテイコウ―――――

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INTERVAL フィリア=フィリス

 
 無理矢理、リオンさんに頼んで同行を許してもらった私。
 何の力もないのに、足手まといであるともわかっていました。
 それでも、どうしても着いていかなければならなくて────
 
 「戦う力」の無いこと。
 私と彼女は同じでした。
 それでもスタンさんたちに守られながら
 優しいスタンさんたちは手を貸すことの出来ない私たちを責めもせず。
「無理しなくていいよ、ちゃんと守るから」
「怪我をしたらそれこそ大変なんだからね、気にしないの!」
 私は彼らの思いやりの言葉にいつも励まされ、いつも守られてばかり。
 それをどこかで後ろめたく思いながらも
 私に出来ることと言ったら祈ることしか思い浮かばなくて。
 それ以上の方法を探そうともせずに。

「あら?  さん、どうしたんですか?」
 チェリクの夜。
 砂漠越えを明日に控え、緊張のあまり夜中に目がさめてしまったフィリアはダイニングに とバルックの姿があることに気付いて話し掛けた。
「フィリア。寝たんじゃなかったの?」
「なんだか目がさめてしまって……」
 一番打たれ弱そうなフィリアがこんな調子では不安である。自分のことは棚に上げておいて は心配そうな顔をした。
「バルックさん、ミルクとかあります?」
「あぁ、ちょっと待っていてくれ」
  の言いたいことを理解したのかバルックは席を立って台所へ行く。
 なんだかわからないといったフィリアの前にはすぐにホットミルクが運ばれてきた。
「ありがとうございます」
 にっこりと両手でかかえるようにカップをもつフィリア。
「それで、お二人はこんなに遅くまで起きてらっしゃって大丈夫なのですか?」
「私なら大丈夫だ。 さんの方が明日は心配だがな」
「あ~でもリオンは途中オアシスで休むって言ってたし。できるだけ早くなんとかしたいので」
「なんとかって……何がですか?」
フィリアが首をかしげると、苦笑が返ってくる。
「おもちゃがね、砂で壊れないようにバルックさんに預けていこうかな、と」
「??」
「そうだ、フィリアはボム系持ち歩いてるよね。」
 はっきりいってクレメンテが手に入るまではそんなもの投げても危ない人にしか見えなかったが。
「えぇ、最近は使ってませんが」
「じゃあ私に頂戴♪」
「え?  さんがお使いになられるんですか?」
 といいつつもフィリアは、一度部屋へ戻ってフィリアボムを持ってきてくれた。
 それも山のように。
「……」
 どこにこんなに持っていたんだよ。
 はっきりいって にはこれらを隠し持てるだけの芸当はない。
 それくらいの量だった。
「何かお役に立てそうですか?」
 にこにことフィリア。
「うん……ありがと……」
「では、先ほどのお話どおりでよいのかな」
「はい、お願いします。帰りにまた寄りますので」
 と、 は一番小さなボムを二、三個手に収めて転がした。
 後に彼女は戦う為の力、を手に入れることになる────。
 
 私と彼女との違い。
 それは、望むだけではなく、手に入れる方法を探すこと。
 それでも祈りは聞き入れられたかのように、
 私はソーディアンという力を得ました。
「フィリアの祈りの力っていうのはさ、意志の強さなんだよ、きっと。だからクレメンテもフィリアをマスターに選んだ」
 ストレイライズの神殿が荒れた様を見て、その壊れた礼拝堂で祈るだけの人々を彼女はどこか冷めた、遠い目でみつめていた。
 私はそれに気付いていました。
 だから始めはこの人は信仰と言うものには興味がないのだろう、と思ったのも事実。
 以前の私だったら、きっと彼女を諭したのかもしれません。
 でも私はもう「外の世界」へ足を踏み出してしまっていて─────
 祈りの力に一瞥したかのように見えた彼女が言ったその言葉は、意外でしたが少しだけその意味を理解はできました。
 だからでしょうか、私だけが力を手に入れたときに、どこか後ろめたい気がしているのもまた事実で。
 比べてしまえば、いかに優しいあの人たちの優しい言葉に甘えていたかが判ってしまって。
 『力』を手に入れ、 さんにその気持ちを打ち明けた時にも彼女は言ってくれました。
「スタンたちの言葉を素直に受け入れられるのは、フィリアのいいところだね。皆だって、フィリアを安心させたかったんだから。素直に喜んだ時の彼らの喜ぶ顔と言ったらないし」
 でも私は。
 その先は聞くことは出来ませんでした。
 
 甘えることができない。
 そして、はじめて気が付いたんです。
 どこか感じていた距離は、私たちが彼女のことを本当に理解していない証拠。
 気遣う声は余計に傷を深めていたのかもしれません。
 それでも私は、他にすべを知らなくて。
「だから、そんな顔しなくていいって。フィリアたちが心配してくれてるのもわかるから。私のことは気にしないで」
 私よりも さんは先回りして気遣ってくれる。
 受け入れてくれていても届かない。
 それは撥ね付けられるよりももどかしいことで。
 私ではダメなのでしょうか?
 少し寂しくも思いながら考えます。
 どうか、この先きっとこの仲間たちが
 心の底から分かり合える日が訪れますように。

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