--3rd.灯火--
「おかしいと思わないか?」
ふと、リオンがそう首をめぐらせた。
「あの山の向こう…僕らが歩き出して数日、ずっと霧が晴れないんだ」
言われて左手の山を見る。
こちら側は晴れているのに尾根の合間に見える向こう側は始終、真っ白な霧がたゆたって見えた。
かなりの距離を歩いたはずなのに、それが途切れることは無い。
…あれは、白雲の尾根じゃないんだろうか?
それは、ベルクラントによって形成された外殻が地表に降り注ぎ、地形が変わったために広範囲にわたって年中霧が立ち込めるようになった場所。
フィッツガルド大陸の中央の山間部を縦断するように占める現象だった。
だが、18年前にそんなものはなかったのだからリオンが知るはずはなく
もまたそんなこと口に出して教えることは憚られる。
代わりに、
は現在地を確認しようとした。
「ねぇ、私たち南に向かって歩いてるんだっけ?」
「あぁ、そのつもりだが」
太陽の出入りを確認しながら動いているからほぼ、まっすぐに移動は出来ているはずだ。
「でも、夜になると北極星が見えないんだよね。」
パラレルな世界なゆえか
の世界と重複していることも多い。
一部の花、食べ物などはもちろんそれは星座についても言えていた。
「…星自体、確認できるほど晴れていないだろう」
「それが真夜中に目がさめると雲が切れてたりするんだけど…わからないんだ」
星にはそれほど詳しいわけではない。
しかし、いくらかなじみのものもある。
昼は太陽、夜は星。
方向を確認する道具が無いならせめてそれらを用いるのは基本だろう。
季節によって多少変動はあるものの北に移動するなら北極星を目指せばいいことくらいは知っている。
「みつからない、ではなくて?」
「星ってさ、船の上で散々見てきたけど…北極星だけじゃなくてなんだか全くなじみが無いものばかりに見えるんだよね。」
「…」
リオンが考え込む。すぐにその可能性に行き当たった。
「ここは…南半球、か?」
「だとしたら、北極星が見えなくて当然だよね」
「南十字星はわからないのか?」
「元々北半球の人間だから…南の空はどうにも…」
「僕もだ」
沈黙。
どこにいようが、とにかく街につければいいのだからそもそも「間違った方角」などという表現自体ふさわしくない。
だが、わかることならきちんと確認しておきたいものだ。
「言われて見れば太陽は…北周りかもしれんな」
「日時計でも作ってみる?」
冗談だか本気だかわからない様子で笑いながら言う
にリオンはそんなもの作ってどーする、と言いた気だ。
そう、北と南では日時計は逆に回る。
でも太陽は西から東へ廻るわけじゃない。
結構常識人を混乱させるポイントだ。
かといって2人が無駄にショックを受けるわけもなく既に現在地を割り出すことに前向きだった。
何か確証になるものがあればいいのだが…
リオンも考えていることは同じらしい。
「南半球、だとすればファンダリアとフィッツガルド大陸しか考えられんな」
後は小さな島で成り立つ諸島くらいしかないから。
「で、雪の無い温暖な気候と言うと」
「フィッツガルドということになる」
大分前から見え始めた右手の海を眺めがならリオン。
「だとすればここは西の海岸沿いだな。」
「ずっと見えてる左手の山も大陸を縦断する山脈、とするとつじつまが合うよね」
「もう少し行って、海岸線が左に湾曲したら間違いない。」
「夜になって晴れてたらもう一度星も確認できるかな?」
「オベロン社の鉱山がノイシュタット西の山麓にあったはずだ。それにも注意していればいい」
続々と、位置を割り出すポイントを引っ張り出しつつ歩き続ける2人。
それは間もなくやってきた。
『レンズの集積反応があります。左手の奥に…』
「!鉱山か」
山の麓にぽっかりと黒い口を開けた入り口が見えた。
間違いない。
やはりここはフィッツガルド大陸の南西部と言うことになる。
「どうする?寄ってみる?」
「寄ってどうする。このままノイシュタットにつければいいだろ」
ごもっとも。
人気のない様子に、既に閉山されていることを悟ったのかリオンは興味を示さなかった。
リオンの言うとおり海岸線も東へ向かって湾曲を始める。
見覚えのある景色が広がり始めた。
いつのまにか、道も整備されたものへと合流し、やがて記憶に面影も新しいノイシュタットの港が遠くに見え始めた。
あとがき**
はい。ここはフィッツガルド大陸でした。
いきなり前回からダリルシェイドに到着予定でしたが、やはりここはどこ!?をはっきりしておくべく今回の話が挿入されました。…これでジューダスが白雲の尾根のことを知っていた理由はクリア!そしてノイシュタットの小ネタで遊び放題(ぇ
街での様子は拍手やら何やらの「シャル日記」で細々(どーでもいいことが)取り上げられているのでご覧下さい。
次はいよいよダリルシェイドです。連載本編へつながるだろう重要なお話…
