本当は、カイルたちを傷つけたくないんじゃないだろうか?
自分の正体がバレることが嫌だというだけなら、
罵りだって甘んじて受け入れられるはずがない。
でも、いつか来る「その時」に傷つくのはカイルたちだけじゃないんだろう。
自分は痛みを堪えようとするくせに、
人の痛みには聡い。でもそれを表現するのは苦手で。
『リオン』は多分、そういう人。
--OverTheWorld.10 記憶と想いと -
ドサリと言う音とともに目がさめると…まっさきに目にとまったソファになぜかカイルの姿は無く、彼は昨日ロニの寝ていた場所にうつぶせて転がっていた。
「だから、ベッドである必要がねぇって言ったのによ…」
つい今しがた場所を明渡す羽目になったロニが毛布を片手に壁にもたれかかって呆れ半分にぼやいている。
同時にジューダスも目を覚まして呆れたようにそれを見やっていた。
密かに自分がそちらに寝ていなくて良かったなどと思いつつ
。
「おかげで目が覚めたけどね」
「お、そーいや
、調子はどうだ?」
「ん〜悪くは無い」
立ち上がりながら微妙な返事を
は返す。
昨晩は遅くにカイルとロニが会話をしていたため残念ながら十分に睡眠を取った気にはなれない。
晶術などまだ使い慣れないところへ無茶をしたせいももちろんあるだろう。
それも寝具を片付けて、リリスが元祖・死者の目覚めをカイルにお見舞いする頃にはすっかり元には戻っていたが。
むしろその騒音で再度即倒しそうになったことはご愛嬌だ。
朝食ができあがった頃に起きて来たカイルは、一足先に起きて散歩に出かけたリアラを呼びに行く。
「大丈夫かな。珍しくジューダスが気を使って無理するなって言ったのにね」
「…僕はお前にも言ったはずだがな…?」
せっかく力を発揮できた喜びも束の間、一晩経ったらリアラはアンニュイな表情で物思いに沈んでいた。
まだ、私の力が足りないなどと思っているのだろう。
カイルが上機嫌で出て行ったので多分帰ってくる頃には励まされて笑顔で帰ってくるに違いない。
あまり心配しないことにして
は足元をうろついていた飼いうさぎの「ポテちゃん」と戯れている。
猫や犬ならともかく始終うさぎが室内をうろついているのはなかなか新鮮だ。
「そーいえば昨日の話、ジューダスも聞いてた?」
彼の指摘は流して訊いてみた。
すぐ近くであれだけ会話をされてジューダスが起きなかったはずは無い。
しかし、彼はシラをきる。
「なんのことだ」
「起きなかったの?あれほど耳元で話されてたのに。…じゃあ私が一から全部聞かせようか」
「…スタンのことだろう?だから何だと言うんだ」
微妙なプライド攻撃とどっちみち話に持ち込まれそうな展開にあっさり陥落してくれた。
「何だと言うか…約束、守ってくれたんだな、って」
「約束?」
「そっか。ジューダスはいなかったんだっけ…ライブラⅣへ行く前に、約束してくれたんだよ。…リオンを信じてくれるって」
「…」
多分、ロニの言葉には彼のことも語られている。
それはとても短くて、本当のことを知っている人間にしか真に込められた想いは伝わらないのだろうが…意味はきっと深いのだ。
台所にある人気に気遣って小さくささやいた
の言葉にジューダスは黙って視線を落とした。
「最後にはうまく行く。
そうかもね、現にこうしてジューダスは手を貸してるわけだし。スタンにしてはすごい先見力だよ」
「それは先見とは言わないだろう。ただの────お人よしだ」
「言わない方が良かった?」
「いや…」
結局それは彼の裏切りを思い起こせることになり、
はジューダスの物静かな様子を心配するようにみつめている。
しばらく翳のさした瞳で返す言葉を思い巡らせていたジューダスは、思い至ったようにふっと小さな笑みを浮かべたかと思うと実に彼らしい言葉でこう返し
た。
「その後もあいつは相変わらずで、カイルのおめでたさは確かにあいつから引き継がれたと言うわけだ」
皮肉めいてはいても先立つ寂しさを塗り変えるような穏やかさを確かに感じられた。
きっとそれはスタンが18年前に伝えたかったけれど届かなかったこと。
今になって届くのは、皮肉以外の何者でないのだとしても、それは間違ったことではないと思う。
その一方でそれが、真っ先に浮かんだ とある言葉を置き換えるためにわざわざ捜した言葉だということはシャルティエだけには紛いようもなしに伝わって
いた。
「おい、お前ら。駄弁ってないで運ぶの手伝え!」
食事が出来たのか、台所でリリスを手伝っていたロニが呼ぶ。
カイルたちを呼びに行くと言ってすがさず逃げた(?!)ジューダスを見送って
はリビングを出た。
少し遅めの朝食を終え、一行はリーネを出立することにした。
カイルたちはリーネの居心地の良さに名残さを感じないでもないようだったが、リアラも心身ともに調子を取り戻している。
そうと決まれば船を待たせることもあって早々にノイシュタットへ向けて白雲の尾根を抜ける必要があった。
「うわぁ、凄い霧だよ。右も左も白、白、白!!」
まもなく、行く手に白いグラデーションがかかりはじめたと思えば、もうすっかり霧にとりまかれている。
「この辺り一帯は18年前の騒乱の時にベルクラントの攻撃で、地形ががらっと変わっちまってな。こうやって年中霧が立ち込めるようになったんだ。だか
ら今は白雲の尾根と呼ばれてる。」
「ロニすごーい」
まくしたてるように説明してくれたロニに珍しく尊敬の眼差しが集う。輝くような瞳のカイルとリアラを前にロニは得意満面だ。
ジューダスが教えると当然のようなのに、話し手が違うだけでこれほど感心されるのも不思議なものである。
「どこでそんなこと覚えたの?」
「いやな、知識の塔に居た司書さんがなかなかの美人で…お近付きになろうと思って片っ端から本を読……って何だお前らその目は!」
一瞬にして冷やかな目で退かれて思わず怒鳴っているロニ。
身から出た錆でありフォローしてくれる者はいない。
進むにつれて深さを感じさせる白い光景を見回して
は呟いた。
「これ、モンスターが出たら厳しいね…」
「あぁ。僕は何人迷子になるかを思うと不安なんだが。できるだけ離れるなよ」
「そうだね、コンパスと地図はあるけど…皆、ジューダスの言う通りウロチョロするのは控えよう!」
「「お前のことだ」」
他方から同時につっこみを受けてもカイルはめげない。
交易隊ですら、行方不明は数知れないのだから気を抜いてはいられないだろう。
3mも先はもう霞んで見えない状態なのだからうっかり走って踏み外した先は崖だった、なんてこともありうる。
「とりあえず各自はぐれたら晶術で合図すること」
「モンスターを引き寄せかねんが…まぁ仕方あるまい」
またもや晶術が正規の目的外の使用に活躍しそうな展開である。
地図とコンパスを頼りに、南方へ通じる坑道を抜け、再び霧の中に出る。
坑道は見通しも確保できるし温度も一定していて休憩に重宝した。
それを繰り返してなんとか白雲の尾根も終盤に近づいていた。
「湿気でマントが重い…」
ひたすら小雨の中を歩きつづけるようなものである。
あまりぶっ通しで進んでも体力の消耗が激しいので火の使える場所をみつけたら休憩するのがいつのまにか恒例となっていた。
その日も薄暗くなり、小さな山小屋をみつけたのはすっかり濡れそぼって髪から雫の滴りそうになった頃だった。
「あれ、山小屋?」
「だな。今日はこれ以上進むのは危険だ。あそこで休むことにしよう」
初めはカイルの持っていたコンパスも地図も、今はジューダスが管理している。
彼はそれと現在地とを照合しながらそう提案した。もちろん異議を唱える者は居ない。
休む場所が決まると途端に元気を取り戻すカイルたち。
たどり着いた山小屋は旅人の為に用意されたもので食料や毛布など一通りが揃っていた。
「誰だか知らないが親切なんだな」
「ここは、昔ノイシュタットの闘技場チャンピオンだったコングマンが提供してるんだね。」
「あっ、知ってる!父さんも昔、挑戦したことがあるって聞いたよ」
スタンの話になると目を輝かせながらカイルが手を挙げる。
あれはバティスタを尋問していた時だ。
とリオンとフィリアがレンブレント邸で心穏やかとは言えない時間を過ごしている間、イレーヌと出かけたスタンは闘技場にも足を運んでいた。
その時にスタンはイレーヌにからんできたコングマンと対決している。
結果は惨敗。
最もそのおかげでコングマンとは何らかの(一方的な?)友情が育まれたようであるが。
それはさておきカイルのはしゃぎっぷりでは彼の脳内ではチャンピオンをスタンが打ち倒したことになっているのであろう。
対してロニが歯切れ悪く苦笑しているところを見ると彼は結末を知っているに違いない。
「オレも挑戦したいなぁ…チャンピオンカイル!くぅ〜かっこいい!!」
そうか?
コングマンの人となりを知っているだけに敢えてそうは思えないのは
だ。
「お前には無理だ」
「まぁ…ノイシュタットには強い奴がゴロゴロいるって話だからな…」
「なんだよ、酷いよ!2人して!!」
リアラだけが面白おかしそうに口元に手をあてがって笑う中、呆れムードが場を席捲していた。
それからしばらく…
山小屋はほのかに暖かみを宿して仲間たちを安眠へと誘っていた。
霧の中の行程は体力も精神力も消耗するものだ。
安心感からか疲労からか、誰もが無防備に横たわって体を休めている。
「…お前もそう思うか?あいつに、ソックリだと」
見張りを残して全員が眠りについた、その静寂へ溶け込むようにジューダスの声が小さく響く。
ほんの少しだけ、と念を押してシャルティエと会話を交わしている。
いつもは全てを包み隠している黒い布から銀色の刀身をわずかに覗かせて、闇の中でも深く透明な輝きを宿すコアクリスタルへと仮面の下の深い瞳を映し込
んだ。
「あぁそうだな。…運命とは皮肉なものだな。僕はこの旅であいつを…カイルを——」
ふいに、ジューダスの言葉は語りきられることなく途切れた。
背後で誰かが起きた気配を感じたのだ。
素早く視線を流してそれが
でないことを確認するとさりげなくシャルティエを背後へ回す。
「どうした?ジューダス」
同時に、彼に声をかけたのはロニだった。
「なんでもない、寝ていろ」
「誰もいない…よな?なんか、カイルをどうこうって聞こえたんだけどよ」
訝しそうな顔で辺りを伺いながらやって来る。
よりにもよって、どうにでも解釈しようのある言葉尻だけ捉えたものだ。
「なんでもないと言っている」
追求を身も蓋もなく言い払ったジューダスの声で、途端に癪(しゃく)に障ったように彼は険しい顔になった。
「…ジューダス、ひとつだけ言っておくぜ」
低い声は普段彼が周囲に振りまいているものとは違う。いや、もしかしたらこれこそがロニが根底に持っている鋭さなのかもしれない。
それは、不穏さを底にたゆたわせる攻撃的なものだった。
「お前がどういう目的で俺たちに着いてくるのか、どうこう言うつもりはねぇ。
だがな…もしカイルに害が及ぶようなことをしてみろ。その時は……!」
「熱心なことだ。そうして保護者きどりをいつまで続けるつもりだ?」
「何!?」
「いつまで保護者きどりを続けるつもりかと言ったんだ」
それがロニの神経を逆なですると知りつつもジューダスは引き下がろうとはしなかった。
冷たく言い放つ。
だがその指摘は決して間違ってはいない。
「お前はそれで満足だろうが、そうやってカイルを甘やかしている限りあいつは成長しない」
「てめぇ…何様のつもりだ!俺はな、おまえなんかよりもずっと………!」
間違ってはいない。
だからこそ、ロニは激昂せざるを得なかった。
ロニがジューダスの素性を知らないように、ジューダスもまた、自分の身に降りかかったことなど…まして抱える葛藤など知るはずも無いのだ。
他人に一体何がわかるというのか。
心の奥底に押し込めている苦い後悔が零れるように頭の中を占拠して、気付けばジューダスに詰め寄っていた。
いままで彼に対して抱いていた不信感が溢れたせいもあるだろう。
思わず華奢な胸倉をつかむ。
しかし、ジューダスは相変わらず冷淡な瞳で臆することなく真っ直ぐに彼をみつめ返す。
それが見透かされたかのようで、今しも殴りつけようと握り締めた拳は小さく震えていた。
「…ロニ?」
その一触即発な空気を破ったのはリアラの声だった。
眠そうな目をしばたかせながら起き上がって不安そうな眼差しで二人を見る。
無言であったが
も起きてこちらを見ていた。
いつからだろう。彼女のことだから、話し始めて間もなくから目を覚ましてはいたのかもしれない。
襟をつかんでいたロニの手が緩まる。
「……何かあったの?」
「あ、あぁ 起こしちまったか?悪ぃな、なんでもねえんだ」
すかさずジューダスから手を離したもののロニの声は激しく動揺していた。
「ウソ、だってロニの顔すごくこわばってる」
「そ、そんなことは」
「カイルのことね?ロニがそこまで怒るのってカイルのことだけだもの」
明らかな仲間割れに、リアラもまた厳しい眼差しでロニを攻めたてた。
どちらが悪いと言うものでもないのだから、実際のところその表現は正しく無いのかもしれない。
ただ、問い詰めをやめる気はなさそうだった。
「ねぇ、何があったの?」
「リアラ、その辺にしておきなよ」
「でも…」
「ホントに、なんでもねぇんだ」
すまなそうに言うロニの否定は本気で踏み入って欲しくない証拠。
けれど、リアラはそれには気付かなかった。
「なんでもないわけないじゃない!だってロニ、今にも殴りかかりそうだったし」
「なんでもねぇよ!!」
の制止も虚しく、リアラが真っ向ロニの言葉へ反論したリアラ。
その見返りは、彼の怒声だった。
「あ、わ、悪ぃ…怒鳴るつもりは無かったんだ、その…」
思わずビクリ、とリアラが身を縮まらせた姿に、
決まり悪そうにしどろもどろに視線をうろつかせるロニ。
の小さな溜息を最後に気まずい沈黙が落ち、再びあたりは夜の静寂を取り戻した。
「リアラ〜」
そんな中、不意にカイルが気の抜けた声が割って入った。
あまりのタイミングの良い呼びかけに3人は彼を振り返ったが、どうやら寝言らしい。
「なんだ、寝言かよ。人騒がせなヤツだな ったく」
凍りついた時間が息を緩めて再び動き出した。
「むにゃ…ずっと…一緒に…
ロニも……ジューダスも…
も…いっしょ、だ………へへっ…」
毒気を抜くには十分なカイルの寝言は続いている。
ロニはふぅ、と呆れにも似た大きな息を吐いて改めてジューダスを振り返った。
「おい、ジューダス」
「なんだ。まだ言いたいことがあるのか」
「……寝ろや、見張り交代してやるよ」
相変わらず冷淡としたジューダスに首を振りながらロニは苦笑を向けた。
「あいつの寝言聞いてたらどーでもよくなっちまったよ」
「ふっ…では休ませてもらうとしよう」
いつものロニへ戻ったことを察して、素直に入り口から床の間に移動すると壁に背を預けて腰を下ろすジューダス。
ロニはリアラにも休むように言うとリアラは問い詰めたことを謝罪した。
「悪いのはこっちだ、気にすんなって…
いいから少しでも寝ておけって。これからまたうんざりするほど歩くんだからよ」
「うん、おやすみなさい」
なんとか頭は冷えたものの、毒気を抜かれたままロニは眠れそうにもない夜を過ごすことになりそうだった。
* * *
やがて、ジューダスも寝入ったらしい。
ロニは再び訪れた静寂の中、今あったことをじっと反復し始めたが間もなく入れ替わりに
がやってきた。
「どうした?」
「…あぁいう起こし方をされてすぐに寝られるほうが凄いと思う」
全くだ。
ロニは自分のしたことを振り返って苦笑した。
「なぁ」
隣に腰をかけた
にロニは前方にわだかまる闇に視線を落としたまま声をかける。
「あいつは…いつもああなのか?」
あいつ=ジューダス。
思えばこうして
と2人きりで話す機会はあまりない。
本当はいきなり正体でも訊きたいところだ。
それでも控えめな質問だった。
「そうだね。慣れの問題だと思うよ」
「お前、慣れてるんだったらすげぇよ」
またもや苦笑。
わかっていながら
は肝心なことには触れてくれそうもない。
やや間があって今度は
が聞いてきた。
「ねぇ、ロニ」
「ん?」
「ロニは、仲のいい人なのに言えない事って無い?」
軽い笑顔で振り向いたロニの顔が一瞬強張った。
ふいに見抜かれた気がした。
彼には、カイルに話していない、あるいは話せない秘密がある。
つい先ほどジューダスに怒りを向ける原因になった「お前に何がわかる」と言ったことだ。
いつもだったら「ない」と即答しそうなロニだが、そのことを考えていたばかりなのでとっさに二の句を告げることは出来なかった。
ロニが答えないと
は追求するでもなく続ける。
「それって、自分だけの都合で言えないだけじゃないよね。
…相手を傷つけたくないから、ってこともあるでしょう?」
「…」
ジューダスがそうだとでも言うんだろうか。
到底そうも見えなかった。
だが、そう言われればその気持ちは理解できるし、否定も出来ない。
相変わらず信用ならないヤツだとは思っているが、バカバカしくなった後に訪れたのは誰に対してかはわからない申し訳なさだった。
「でも、オレにはわからねぇ…」
会話にならない呟きも、何に向けたものなのかはわからない。
は静かな笑みを浮かべると視線をロニからはずした。
「いつかわかるよ、きっと。私よりずっと分かりやすいはずだから」
「そ、そうかぁ?」
「『無い頭を悩ませるな』…って言うよ。ジューダスだったら」
「…ホントだ。よくわかってらっしゃることで」
間抜けた返事にダメ押しされるとロニは降参、と言うように苦笑でもって返した。
不思議なことに、彼女の「正体」を取り沙汰する気は起きなかった。
素性の知れなさもその行動目的もジューダスと同じはずなのに、抱く不信感はえらい違いだ。
そういえば昔、スタンさんたちと一緒に旅をした人の話を聞いたことがある。
確か、その人の名前も彼女と同じ「
」だった。
もしかしたらそれで「知って」いる気になっているのかもしれない。
ロニはもう一度寝床へ戻った彼女の後姿を視界の端に納めながら
今度は懐かしいクレスタの思い出の中へと
想いを馳せていた。
翌日、南へ繋がる坑道を更に抜けるとやがて霧は晴れた。
青い海と緑の草地が眼前に広がっている。
やはり見通しの良い場所はいいものだ。
道なき道も街道へと合流し、ようやく開放的な気分で歩けるようになると仲間たちのテンションも否応なしに上がっている。
「昨日、あいつと何を話していた?」
「気になる?」
ジューダスの問いに素直に答えないで聞き返すと、躊躇する間があった。
『そりゃあの後じゃねぇ…』
思わずシャルティエが会話に参加してくる。
幸い、少し前でこれからたどり着くノイシュタットの話に花を咲かせている3人は聞いてない。───というか聞こえてないのだろうが。
「大丈夫。フォローしてたわけじゃないから。」
それは大丈夫というべきことなのか?
微妙だ。
しかもその言い方は…
「お前、やはり最初から僕らの話を聞いていたな?」
「聞きたくなくても聞こえた。安眠を妨害しておいて何を言う」
「…妨害したのは僕じゃない」
「原因の半分はジューダスだ」
しかも、あの後も結局眠れなかった。
それは朝、起きて最後の見張りをしていた
を見れば予想のつくことだった。
微妙に機嫌が悪そうなのも寝不足のせいかもしれない。
「────お前は神経質すぎると言ったろう。あれくらいで寝付けなくなってどうする」
「そこで、責任転嫁するか?!」
『でも、カイルの寝言は頻繁だから寝られるように心構えしておいた方がいいよ』
「「……」」
危うく下らない論争になりそうなところでひそやかなシャルティエの一言がそれを収束させた。
「確かにな」
「野営のときは隣にならないように気をつけよう」
寝相も危険そうだ。
2人の矛先が変わってその視線が先を歩くカイルに向いた。
「あっ!街が見えたよ!!」
丘の向こうを指差しながら、カイルが2人を振り返ったのは殆どそれと同時だった。
あとがき**
長…微妙に時間かかりました。
TOD2はどのイベントもきちんと意味があって大事にしなければと感じました。
