「失望したぞ、ディムロス」
残骸と化した拠点の壁の片隅で、這うような重さの太い声が響いた。
その片手には子供の身の丈もあろうかというほどの巨大な戦斧、もう片腕には気を失った女性の姿。
巨漢の我が足元を見下す様にして男は顔を上げた。
彫りの深い、どこか狂気さえ込めた精悍な顔つきで。
「俺は時を越えて多くの英雄どもと戦ってきた。とはいえ、この力の差はどうだ?つまらん、なんともつまらん結果だ。貴様も、オレの渇きを癒せはしない
と言うのか」
「やめろ、バルバトス…お前の相手はこの私のはずだ。アトワイトを離せ!」
男の周りにはうめきを上げ、あるいはもはや永遠に声を上げることも無いであろう兵士たちが倒れ伏している。
その破壊の痕跡だけでも男の力は尋常ではないことが伺えた。
その力の前に、方膝を落としてかつての部下を見上げるディムロス。
「「突撃兵」の異名も形無しだな…中将殿?残された僅かの間。死をも上回る苦しみを味わうがいい」
「待て、バルバトス!」
騒ぎを聞きつけた兵士たちが雪を踏みしめ現れる足音。
闇に揺らぐ空間をみつめながらディムロスは握った拳を大きく地面に叩き付けた───
--OverTheWorld.36 救うために捨てるもの -
カイルたちが拠点に戻ったのはそれから2日後のことだった。
ラディスロウは多くの人間の気配がかもしだす活気と緊張感に満ちた静けさが織り交ぜられる空気の中、出かける前と変わらない。
ただひとつ、アトワイトがいなくなっていたことを除いては。
「アトワイトさんが攫われたって…一体、何があったんです!!?」
帰還の報告を済ますために会議室を訪れたカイルの第一声はそれだった。
「君たちは知らないだろうが、バルバトス=ゲーティアと言うかつて地上軍に所属していた男が強襲してきたのだ」
「バルバトスだって…!?」
「知っているのかね」
リトラーはハロルドに向けて全てを説明するより先に横槍を入れたカイルを咎めることもなく、手短に事の発端を述べた。
しかし、それは逆に予想外の反応を招き彼は…いや、彼だけでない。居合わせた「彼ら」は緊張の面持ちから訝しそうな顔になった。
その後ろで、カイルの素直すぎる反応にジューダスは眉をひそめる。
ハロルドが軽くフォローを入れた。
「この子たち、ここに来る前に何度かあいつに会ってるのよ。もちろん敵としてね」
「ハロルド、なぜそれを言わなかった!」
「だって聞いたのついこの間だもの。それに信じられる?死んだはずの人間が現れるなんて」
上手い。
全くウソではないし、そう言われればディムロスたちも閉口するしかないのだろう。
彼らの内の何人かは、ディムロスがバルバトスを仕留めたその時、確かにその死を目撃していたはずなのだから。
ディムロスは唸るように呟いた。
「あいつは、私への尽きぬ憎しみで再び蘇ったと言っていた。本当に…そんなことがあるのか」
「本当も何も目の前に現れたら疑いようも無いわね。で、あいつはどうしたの?」
「分隊をひとつ壊滅させて、撤退しました」
全く抑揚の無い声でそう答えたのはイクティノスだった。
「むしろ、退いてくれたことは幸いだったのかも知れん。あの力差では、駆けつけた者も殺されていたかもしれんのだからな…」
「誰か追跡させてるの?」
事務的な応答に意味もなくディムロスの視線は机上の書類に注がれて固定された。
それがしばし続いて、考え直すように一度瞳を閉ざし、上げられた顔つきは既に「中将」のものである。
そのまま視線を向けられたリトラーが司令官として言葉を継いだ。
「彼女の捜索を行うかどうかは上層部で会議にかけて既に決定済だ。捜索は──行わない」
「そんな…!」
「どうして…どうして、今すぐアトワイトさんを探しに行かないんですか!」
「駄目だ!」
「どうしてですか!」
全く退かない気配のカイルと睨み合ったのも刹那、ディムロスは口調を抑えるようにしながら視線を転じた。
「ハロルド、研究の進歩状況はどうだ?」
「さっき報告した通りよ。万事滞りなく進んでるわ」
「そういうことだ。間もなくハロルドの研究が完成すればそれを待って天上軍との最終決戦が発令される。
それを控えた今、これ以上の犠牲を増やさないためにも脇道へ逸れている場合ではない」
「な…っ」
非情とも思える発言にカイルは拳を握り顔を白くする。
反論の言葉はすぐにはでてこなかった。
そこへタイミングを計るようにリトラーの指示が飛んだ。労いの言葉と共に。
「ご苦労だったね。君たちはそれまで待機していてくれたまえ」
「そんな…本気ですかディムロスさん!」
「彼女とて軍人だ。死を伴う危険も常に覚悟していたはず。あえてそれに甘えさせてもらう」
「オレは、納得できません!それにディムロスさん言ったじゃないですか!ダイクロフトに行った時…みんなで無事に帰るって!あれはこの戦争が終わるま
で…同じ気持ちなんでしょう!?」
度重なる激情じみた問答に、イクティノスは細い眉を神経質そうに顰め、不快を露にしはじめている。
その横で困ったようにシャルティエ。
彼もまた、無力さを噛み締めているのはその表情からも察することができた。
リトラーは見定めるように、クレメンテは見守るように黙って若き少年と青年の対峙をみつめている。ディムロスの見解が変わることはなかった。
「これは命令だ!君たちはこのまま予定通り最終作戦まで待機だ」
「で、でも!!」
「はいはい、待機っていったら待機よ。とっとと出る!」
黙っていたハロルドが唐突にカイルの正面にまわって押しやった。
「は、ハロルド…っ!!」
ふいをつかれて抵抗するまもなく勢いをそがれるカイル。
とうとうそのままずるずると後退させられ彼は会議室の外に押し出されてしまった。
是が非もなくその様を見守っていた仲間たちもまた、後ろ髪をひかれるようにそれに続く。
会議室は途端に温度を下げたかのようだった。
「これでいいのよね?」
「すまん、ハロルド」
軍の決定に、議論を交わすこともなくそれぞれが思い思いの気持ちを抱えながら、その場はひとまず収束された。
「正直、わたしも納得できないけどね…」
小さく肩をすくめるようにハロルド。
その顔にはやれやれ、という表情が浮かんでいた。
ハロルドはそのまま持ち帰ったデータとともに開発チームの元へ行き、一行は待機という名の自由行動になった。
とりあえず部屋へと戻ったカイルたちの間には重々しい空気が流れている。
「まずいことになったな…アトワイトがいなければ間違いなく歴史は変わる」
それはもうひとつの危惧でもある。
そして、先ほどの問答に触れないのはジューダスが、ディムロスの立場もまたどういうものであるか理解しているという裏づけでもあった。
それに対して彼がどういう感情を抱いているのかは全く別の話として。
それは時として感情とは別の部分で秤にかけられねばならない選択である。
単純に問題としてとらえるカイルは2つの難題を別にすることができず、複雑そうな顔でベットに腰をかけ、膝の上に置かれた自分の手から視線を上げた。
目的としておそらく無視できない問題。だからこそカイルはあきらめきれずにおろしたばかりの腰を浮かした。
「オレ…やっぱり納得できないよ。もう一度ディムロスさんに話してみる!」
「あ、おい!カイル!!」
「カイル!」
飛び出したカイルをリアラがすぐに追う。ロニとナナリーもこちらを振り返り、躊躇しながらも部屋を出て行った。
「…どうする?」
「行くしかないだろう。あの馬鹿、何をしゃべりだすかわからん」
ディムロスは一見、あらゆることに長けていそうなその実、実直で不器用だ。
ここしばらくの彼を見ながらそう思う。
おそらく、カイルとは正面からぶつかりあうだけで進展はないだろう。
どちらからともなくため息をついて
とジューダスもまた、その後を追った。
* * *
しかし、時はすでに遅かった。
会議室を経由して彼らの行方がディムロスの執務室であることを突き止め、向かった時には
「あなたは英雄なんかじゃない。ただの腰抜けだ!」
そんな罵倒とともに飛び出してくるカイルとぶつかりかけ、視線を交わしながらも追っていくリアラの後姿を見送る羽目に陥っていた。
ディムロスに謝りながら出てこようとするロニと鉢合わせるとその肩越しには困惑気味に立つナナリーの姿もある。
その更に向こうにはこの時代では珍しいであろう、立派なマホガニーのデスクにうつむくように視線を落とすディロスの姿があった。
ロニが2人に気づいて足を止めているその横を潜り抜けるようにして
は部屋へと入る。ナナリーとディムロスの間を視線を一度だけ往復させて首を傾げるようにして小声で尋いた。
「何があったの?」
「どうもこうもねぇよ。聞こえてただろ?」
さすがに本人を前にしてバツが悪いのかひそめるようなロニの声は、ナナリーに対して質問を放った
の肩越しに斜め後ろからかけられる。
確かに最後の罵倒は聞こえていたので、見解の相違が元にせよ失礼千万なことを言い放ったことだけはわかっていた。
いいながらロニの視線がちらりとディムロスを流し見る。おそらく目があったなら彼はもう一度姿勢を正して弟分の替わりにわりに謝ったであろう。
しかし、ディムロスは視線を落としたままだ。
それがいよいよどうしてよいのかわからないというようにロニとナナリーを困惑に導いていた。
「結論が出ましたか、ディムロスさん」
の言葉に彼ははじめて顔を上げた。
そして、おそらくは…カイルに言っただろうことを繰り返す。先ほど会議室で聞いたよりほんの少し覇気の薄れた声で。
「先ほども言った。最終作戦は目の前だ。今は戦略的に無意味な行動はとるべき時ではない」
仲間が攫われたのに幸いといい、追いもしないで見捨てると言う。
カイルにとっては理解しがたいことだろう。
そう言われれば「違う」としかいいようのない彼の姿が目に浮かぶようだった。
聞いてもいないのに、ディムロスはうわ言のように先を続ける。
「彼女一人を助けるために他の人間を危険に晒すことはできない。
組織とは、軍隊とはそういうものだ」
「でも、一緒に戦う仲間だろ?アトワイトさんだって信じてるんじゃないのかい、きっと仲間が助けに来てくれるって」
「仲間だからこそ理解しているはずだ。私の判断が間違いではなかったことを」
ようやく、自分の抱く想いを伝えようとナナリーが口を開く。カイルに比べればやんわりした口調がむしろディムロスの苦渋を招いたようだった。
「それでカイルに言われたんですか」
「あぁ、私のことを英雄だと思っていた、そう言われたよ。仲間のためなら命をかけられる本当の英雄だと」
思わず視線を交わすジューダスと
。
カイルは「スタンのような」英雄にあこがれている。そうであるなら、それも間違いではないのだろう。
リアラを助けに行くと言った時、彼の心の在り方を試したウッドロウが認めたように。
『リオン』と
の知る、英雄と呼ばれる人物たちもまた、おそらくはそういう人間である。
それが我知らずとも彼の目指す道だ。
けれど、すべてが同じ道を辿れる訳ではない。在り方すらも違うのだ。
「私は、確かに英雄などではない。だが、中将として軍を勝利に導く責任がある」
「もしも…」
ここにいる人間は、その立場がわからないほど子供ではない。割り切れるほど大人でもないのかもしれないが。
重い空気の中で
は口を開いた。
「さらわれたのがアトワイトさんじゃなかったら、どうしました?」
居合わせた者が一同に顔を上げる。同じようにその瞳には一瞬言われた意味がわからない、という表情が浮かんでいる。
結局答えの出せる者はおらず、ディムロスがわずかに訝しげに眉を寄せたのを見て
は先を続けた。
「もしも部下だったら、何らかの方法で助けを出したんじゃないですか」
それまで動かなかったディムロスの足は思わず向き直る形で入り口に向いた。
図らずしも
を正面にすることになる。
彼が部下に慕われる、カーレルの言った人間像であるとしたらまずただ切り捨てるということはないだろう。
それはつまり…
「貴方はアトワイトさんだからこそ、切り捨てることを曲げない。だとしたら、それこそ公私混同というものじゃないんですか」
おそらくは自分でも気づいていなかったのだろう。図星をつかれるように切れ長の瞳が大きく見開かれる。
はそっと視線をはずしてその先に、置かれたフォトフレームを見た。遠くて何が移っているのかはわからない。
「救うために救わない。それも上に立つ者の立場であって選択だと思います。でも…犠牲の上に成り立つ平穏なんてありませんよ。たとえそれが地上軍の勝
利だとしても」
「…」
平穏…ディムロスの、だ。全を救うために個を犠牲にする。全は幸せになるかもしれないが、犠牲にすることを選んだ個もまた、犠牲となる。
もしも、アトワイトを見捨てて地上軍が勝利したとしても、
もしも、多くの人に英雄と讃えられたとしても彼は心の奥底で一生際悩んでいくことになるだろう。
人によっては時という薬に痛みを忘れてしまう場合もあるかもしれないが、選んだ事実はどこまで
いっても変わらない。
割り切れないまま出した結論なら尚更だ。
「すべてを救うことなどできはしない。今は、綺麗事など言っている時ではないのだ…」
「知ってます。カイルが言っていることも、貴方が言っていることも多分、間違ってはいない。でもそういう問題ではないですよ。他にとれるべき方法もあ
るでしょう?」
「…方法?」
掬い上げるような視線に、
はふっと笑っただけで何も言わなかった。その様子にジューダスの表情が動いたのは誰も知らない話だ。
ほんのわずかに困惑するようなディムロスの表情。
「貴方には貴方にしかできないことがある。だからそれをどうぞ続けてください」
そういい残して
は足早に踵を返してしまう。ひらりとひるがえるマントを視界の端にとらえロニとナナリーもあわててそれを追う。
ジューダスは最後に部屋を後にしながら呆気にとられ見送るディムロスを見た。
…千年後、ソーディアンになってからの彼。
まるでスタンを導くように時として教え諭していた彼はもっと自由で人を食った男だった。
その差はいったい何なのかと考えてすぐに気がつかないはずもない。
肩書きというのは、大きな威力を持つものだが時としてそれは人を制約するものであると。
それでもなお、それらをかなぐり捨てて選ぶことがどういう意味であるかは誰にも批評など出来はしないのだろう。
見透かすようにみつめていた黒衣の少年が去るとディムロスは、確かめるように呟いた。
「あの時の私の判断は決して間違ってはいなかった。…間違っては…いなかったんだ」
* * *
「なぁ
。他の方法って何だよ?」
「わからない?簡単なことだと思うんだけど」
通路を歩きながらかけたロニの問いはジューダスにとっても同じ疑問だった。
彼に言わせると「何を考えている」とややシビアな捕らえ方になるのだが。
代わりに発したのは先を進める言葉だ。
「勿体ぶらずに言え」
しかもさりげに命令形。
はまったく大したものでもないクイズがわからない人間を前にしたように笑い返しただけだった。
「勿体ぶってなんかないってば。どうせお約束なんだから」
「はぁ?」
「カイルだよ」
「カイル?」
「私たちが何もしなくても…カイルが次に言って聞かないだろうことって何だと思う?」
「「「…」」」
視線も交わさず考える間があった。
「…『ディムロスさんが動かないならオレたちが助ける!』…か?」
「さすが兄貴分」
ロニでなくてもわかったことだがまっさきに言い当てた彼に賞賛を送る。
悟ったのかジューダスからは深いため息、ナナリーからは苦笑が漏れている。
「確かに…きっとそうなるだろうね」
「止める?」
「言って聞くなら今頃こんなところまで来てないだろう」
まだカイルが言い出す事態に陥っていないのに今から諦めムード全開な3人。
当のカイルは理想と現実の狭間でそれどころではないだろうに。
証拠にやがてみつけたカイルとリアラは妙に沈んだ顔をして神妙な雰囲気を醸し出していた。
「カイル…」
気遣うようなリアラがうつむいたままの彼にそっと呼びかける。
照明のない階段下の通路は見るからに沈んで見える。
彼らが声をかけるより前にその前に現れたのはハロルドだった。
「なぁに?また何かやらかしたの?」
聞きつつもすでに察している雰囲気で「あ〜あ」と言わんばかりだ。
踊り場の手すりから見下ろす形になった彼女は足取り軽く降りてくる。
そこに
たちも加わった。
「こいつ、ディムロスさんに「貴方なんか英雄じゃない」発言かましたんだよ」
「…」
そういわれても沈黙しているあたり、言ったほうもかなり心の痛手だったに違いない。
苦笑するロニたちにも目を合わせないままカイルは深く俯いたままだ。
「ディムロスに!?それはいい度胸だわ〜」
「そんなんじゃないよ!」
揚げ足を取られて思わず言い返すカイル。
勢いに目を丸くしたハロルドは2、3度大きく瞳を瞬くとふぅ、とおおげさにため息をついてみせる。
「ねぇカイル、命の重さってどれくらいだと思う?」
「え…」
「ディムロスは地上軍の全兵士について責任を持ってるつまりあいつはそれだけの重さの命を預かってんの。天秤にかけたら…どっちが重いかなんて一目瞭
然よ」
と言っても、天秤にかけること自体どうかとは思う。
おそらく
だけでなくそこにいる全員が。
けれどそうせざる状況がわからないわけではないので誰も何も言わなかった。
言えなかった、というべきか。
「でも…それでも、こんなの納得いかないよ…」
「ふーん、あんたはそう思うのね」
思わせぶりな口調。しかし、おそらく他意はない。
「ま、あんたたちは「待機」してなさい。もうやることもないし。私はこれから最後に仕上げに入るから邪魔しないでね」
言いたいことだけ言ってくるりと踵を返すハロルド。
動きにつれて紫色の2本のリボンが中空に弧を描いた。
「あ、そうそう」
今度は顔だけで振り返る。
「あの2人、恋人なんだよね〜」
「は?」
「ディムロスとアトワイト」
「なっ…じゃ、じゃあディムロスさんはどうしてあんな!!」
とジューダス以外のメンバーは驚きを隠せない。
は知っていただけであることを考えるとジューダスは顔に出ないだけなのかもしれないが。
その代わりといっては何だが、ジューダスは仮面の下で訝しそうな顔になった。
「なぜ今頃そんなことを僕たちに教える」
「触媒」
「しょくばい?」
「内的要因による変化を見込めないなら外的要因による変化を促すまでよ。…たとえそれが毒であってもね」
「そうか、残念だったな。既にディムロスの方はその触媒とやらを投下済みだぞ」
「あら、そうなの?じゃああとは大して問題ないじゃない」
何が問題ないのか。
話しをつかめないカイルたちはきょとんとしてその会話に耳を傾けている。
「で、誰があの堅物に触媒を投下したの」
ジューダスの視線は
に。その視線を受けた
は「えっ」というような顔をする。
「ふふーん♪じゃあディムロスの方は後で変化の度合いを見に行ってみようかしら」
そういい残してハロルドは鼻歌交じりに去っていった。
「おい…」
「今の、どういう意味?」
「どういう意味でもいい。カイル、どうする?」
唖然とするカイルとロニにはとりあわずジューダスは尋ねる。
おそらくその答えをわかっていながら。
考えるための間はさして必要とされなかった。
「…オレは…アトワイトさんを助けに行く」
まっすぐに、ジューダスを見据えるカイル。是非もなく意思は明確だ。
見返すジューダスのそれに劣らず強い意思を込めた視線は見渡すように仲間たちを巡りそして拒否の選択はない声で告げた。
「皆も力を貸してくれ!」
ふっと笑むロニ。
あぁ、と強くうなづいてからそれは唐突に笑い声に変わった。
「な、なんだよ!?」
これには呆気に取られるカイル。見ればナナリーに
、ジューダスまでもが笑っている。
その輪に入れないのはリアラだけだった。
「やっぱり言うとおりだったぜ。確かにお約束だ」
「だから言ったじゃない。わかっていながら聞くジューダスもおかしいけどね」
「な…僕はそういうつもりじゃない!」
「まぁまぁとにかく、いつもどおりってことじゃないか」
「だから何なんだよ〜!」
カイルの疑問に答えてくれるものは、結局いなかったという…。
