それは記憶の奥底に眠っている。
きっといつでも思い出すことが出来る、大切なもの─────
- エピローグ −
「旅に出るからには、一番大切だと思えるものをみつけてくるんだ、いいな?」
そんな父親の言葉を後に少年は故郷を旅立とうとしていた。
初夏の風が頬をなでる。
幼なじみの青年と、見慣れた土の道を辿り街の外門へとやってくる。
「いい天気だなぁ!」
「あぁ旅立ちにはもってこいの日だな」
さわさわと揺れる草の音が心地よい。
こんな日はいい出会いがあるんだ、と青年は言った。
それはなんでもない日常、穏やかな日々の続きではあるけれど
確かに新しい1日の始まりだった。
「ちょっと待って、ロニ」
「?どうかしたのか?」
町外れの草原まで来た、少年が足を止めた。
その視線は遠く、遥かをみつめたままじっと止まっていた。
「お、おい。どうしたんだよ」
街道からはずれて道なき道を踏み出す金髪の少年。
柔らかな新緑を踏むその足取りはやがて駆け足に変わった。
風のなびく丘。
その向こうには海が見える。
ただ、それだけだ。
幼い頃に、何度か来たくらいの何の変哲もない光景。
知らないはずの光景でもない。なのに
「カイル!」
その視線が何かを探すようにさまよったが結局は何も見つけられなかった。
それが何だかはわからないまま、
みつからないことに、落胆したように視線を落とすその背中にロニの声がかかる。
「ロニ…」
「どうしたんだよ、一体」
腑に落ちないような幼なじみの声に、彼は寂しそうな顔を向けた。
「なんだろう…何か、足りないね?」
「?何かって何だ?」
「わからないけど…」
せっかくの旅立ちの日だというのに、なぜこんな顔をするのか。
ロニはそれが何だかわからないまま笑顔を作って少年を元気付けようとした。
「ほら、なんて顔してんだよ。
これから旅に出るんだろ?探したいものがあるならそこで探せばいいさ。
なんたってオレたちは…世界を旅するんだからな!」
「世界を…そっか…そうだね」
精一杯の励ましに少年は苦笑を浮かべる。
それから一度瞳を閉じて俯くと次に上げた顔はいつもどおりの顔だった。
「うん。大丈夫…行こう、ロニ」
「おう!」
そして、2人は緑の丘を下りて行く。
さわさわと揺れる風の音を聞きながら。
その頬を風が優しく撫でていく。
足元の感触は柔らかく、どこか懐かしかった。
いつもと同じなのに
なぜだろう…
いつかどこかで。
いつか、どこかで─────
これから旅に出る喜びを改めて踏みしめる。
けれど、やはり一方で何かが後ろ髪をひくような。
街道へたどりつき
もう一度名残惜しそうに振り返る。
その瞳に
「あ…」
2人。
知らないけれど、よく知っている
その姿が残滓のように移りこんだ。
風が再び頬をなでる。
それはほんの一瞬だった。
丘に続く視界には、見慣れた草原が相変わらず広がっている。
それはまるで遥かな幻のように、
けれど確かにそこにあったはずのものだった。
遥か遠く見える空と
さざめく緑と、
それから───────
「
、ジューダス…?」
「?なんだ?」
今は名前しかわからない。
けれど、思い出せた。
それ自体が少年にとってはひどく、喜ばしいことだった。
「なんでも…なんでもない。行こう、ロニ!」
「なんだよ、おいっ待てよ…カイル!!」
少年が駆けて行く。
追うように青年が。
その行く手には、いつか見た世界が広がっているのだろう─────
約束…
忘れないよ…
きっと、それがオレたちの絆だから───────
Tales of Destiny2 完
