−17.契約
敵はウンディーネだけだった。
逆さに見ても水属性だろうので、弱点は推測できるのだが…
「あぁ…こんな時、グランバニッシュが使えたら一発なのに…」
「元々、それはお前に使えないだろうが」
炎の封印のバトル同様、クラトスとロイドが前衛で切り込んでいる。
しかし強い上に反応が速いのでジーニアスもどれか一体にすぐに詠唱を邪魔されてしまう。最後尾のリフィルまで攻撃が届かないのが幸いだ。
「く…強い…!!」
あぁ、多分彼女と契約できるのはまだものすごく先できっと(ものすごく)レベルが足りないんです。
冷静に現状を分析してしまう
。
ことによっては絶滅必至だろう。
現に、ロイドどころかクラトスまでもウンディーネを捕らえきれない始末である。
リフィルの回復用TPが尽きるのも時間の問題だろう。
ジーニアスが使っているのも下級晶術だから、多分、歯牙にもかかっていないに違いない。「、サンダーブレードは使えるか?」
「うん、いける」
「よし。まとめて止めろ」
ロイドたちはあまりアテにならないので2人でなんとかすることにした。
素早くディスクを付け替えると詠唱に入る
。
その間にジューダスは仲間たちに指示を飛ばす。
「「サンダーブレード!!」」
併せて詠唱していたジーニアスと
が同時に雷の刃を繰り出す。
同時に前方で食い止めていたロイド、ジューダス、クラトスは撤退した。
前衛組みを襲っていた精霊の放った水の渦が帯電して精霊は激しいスパークに包まれる。「ロイド、ウンディーネを狙え!!」
スパークが収まった瞬間、切り込んだジューダスに続くようにクラトスもスパークの奥のウンディーネを果敢に狙った。
「虎牙破斬!」
「闇の炎に抱かれて消えろ、浄破滅焼闇!!」
相手が精霊ともなれば惜しみなく秘奥義を披露するジューダス。
激しい水蒸気を噴出しながらウンディーネは立ち上る幻のように消えかける。
しかし、
−なかなかやりますね。
「くそっ」
剣の方が耐えられなかった。
それが無事であったなら精霊さえも仕留められたろう。
しかし、技を放った直後に剣は刀身からまっぷたつに割れ、詰めの一手が欠けてしまった。
「ジューダス!!」
「危な…………」
ウンディーネの三又鉾が容赦なく間近にひざをついたジューダスを襲う。
その時、甲高い音がしてそれを受け止めたのは濡れるような銀の光をたたえた曲刃だった。
『ようやく出番ですか』
「状況を見て物を言え」
一体誰にその声が聞こえたろうか。
場違いな声なき声は
にはしっかり届いている。
ぎりぎりと押し合っていたが、先にジューダスが受け流しバックステップで退避した。
素早くかかる追撃は間一髪横に跳んで避ける。
掠めて鉾は硬い床に3つの穴をうがった。
再び鉾を引き抜いて泳ぐように大きく尾びれを空中にひらめかす。
驚くほど優雅に、けれど猛スピードで動くウンディーネは少しの追撃程度では揺るがない。「なにをぼんやりしている!斬り込め」
見たことのない剣を手にしたジューダスに叱咤されてロイドが床を蹴った。
「仕方がないな…」
ジューダスはといえば逆に後衛まで下がって小さくぼやいた。
「シャル、行くぞ」
『はい!坊ちゃん』
詠唱を開始する。
このパーティで現在使えるであろう最強の地系晶術が数秒の後に発動し、水の精霊はその力の前に屈することになる。
* * *
「相変わらずすっげーな!」
「…世辞はいらんぞ」
あっさりかわされてロイドの眉が少し寄ったがすぐに笑顔になった。
慣れって怖い。
「なぁなぁ、その剣は?いままで使ってなかったよな。すごいいい出来だよな!誰が作ったんだ?」
「ウンディーネ、これで契約できるのか?」
ドワーフ仕込の鑑定眼で、シャルティエの価値を見抜いたのかうきうきとしているロイドに構わずジューダスは誰もいない祭壇に向かって声をかけた。
─見事です。あなたたちの強さを認めましょう。
祭壇に再びウンディーネが現れる。
殺伐とした戦闘がウソのように再び場は清涼な空気に満たされていた。
─契約者よ、新たなる誓いを。
「誓い…」
と、いきなり言われても。
「何でもいいのではないか?要は心のあり方を見せればよいのだろう」
そう言われると尚更難しい、というよりクラトスさんの言っていることが何やら恥ずかしいのだが。
そもそも遺跡モードのリフィルと好奇心満々なジーニアスと何も考えずにはしゃいでいるロイドandコレットにより、無理やり開始された「儀式」なのだからよくよく考えると真面目に筋通す発言の方が不自然だ。
ついでにそれにお墨付きを出したのは意外に判断力が甘いクラトスと付け加えておく。
…そう思うと、逆にまぁ何でもいいか、と思ってきた。
「契約に際する誓いなのだから…用途でいいんじゃないのか?」
「じゃあ。ウンディーネ、貴女の力は独善ではなく仲間を守るために借りることを誓います」
──承知しました。
姿が淡く消えていく。
光に収束したかと思うと静かに指輪が中空から降りてきた。
「アクアマリンの契約の指輪、か」
「これがないと呼び出せないのかな?」
「契約の象徴であって傍においていれば問題ないんじゃないかしら」
「そう。じゃあ後で何か考えよう」
が摘み上げたリングをしげしげと覗き込んで仲間たちの輪ができている。
「どうして?指にはめればいいんじゃないの」
「邪魔なんだろ。以前同じことを聞いたヤツがいたな」
「…じゃあオレがペンダントにでも加工してやろうか?」
ドワーフの養父を持つだけあってロイドは手先が器用らしい。
今、コレットの誕生日プレゼントのアクセサリーを遅ればせながら作っているといっていたから。
しかし
は首を横にふった。
そして、自分の首筋から何かを指にかけてみせる。
「先客があるから」
細い銀の鎖だった。
その先にあるものは見えないが、普段は見せないのに身に着けているのだから装飾のためではなく大切なものなのだろう。
さりげに視線をはずしたジューダスはそれが何だかを知っている。
「でも…アミュレットか何かでお願いしようかな。身に着けているに越したことはないだろうし」
「あぁ、だったら街に着くまでに考えとけよ。ちゃちゃっと作ってやるからさ。」
「…大丈夫かなぁ…そんなにちゃちゃっと作ったもので…」
「そうだよ、ロイド。ちゃんと作ってあげて?」
「い、いや、オレはそういう意味で言ったんじゃなくてだな…」
ジーニアスが半分承知で言ったのにコレットは超がつくほど本気で訴えている。
なんでも間に受ける人が多いパーティでもある。
ロイドもたまには大変だね。
しかし、その後もっと大変な思いをしたのはほかでもないジューダスだった。
彼は、ソダ間欠を出るまでシャルティエや晶術のことをしつこく聞かれる羽目になった。
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