43.大樹の目覚め
一行は一度パルマコスタに戻り、レネゲードの拠点を目指すことになった。
ボータの伝言を伝えるためだ。
「来たか…」
「ユアンさん、ボータさんが…」
うすうす感じてはいたのだろう。ユアンは先んじて結論を述べた。
「死んだのか」
「あぁ…最後に任務を果たしたって俺たちに伝えてくれって」
「そうか…
では空間転移装置を作動させよう。好きに世界を行き来するがいい」
それだけ言って、椅子に深く腰を沈め、ユアンは天井を仰いだ。
「それだけか!?ボータは命と引き換えにレネゲードの作戦を…」
「ロイド!ここから先は我らが口を挟むことではない」
「こいつはずっとあのボータとツラ付き合わせてきたんだ。俺たちが何を言っても仕方ないさ」
言われてしぶしぶと承諾するロイド。
それから彼らはテセアラへ向かい、アルテスタの元へミトスを連れて帰るとアルタミラへとやってきた。
しばらく世界を駆け回っていたので休息のためと、今後の予定を詰めるためでもある、
しかしなぜかリーガルは宿から街に出ようとせずに、彼だけを残して一行はアルタミラの町を歩く。
その中途、石碑の前でプレセアを見て声をかけるものが居た。
「そなた、姉は居ないか?」
「?」
「アリシアという名の娘を知っていないか」
「アリシアがどうかしたのですか!?」
初老の男は目を見張るようにしてプレセアを見、ひとり納得するようにうなずきを繰り返した。
「やはり縁のものか…」
「アリシアがどうしたんです!」
「ある事件に巻き込まれて死んでしまった。わしからいえるのはそれだけじゃが…良かったらレザレノカンパニー社の空中庭園に墓がある。
参ってやってくれ」
そう言われてプレセアを筆頭にレザレノカンパニー社の空中庭園へ足を運ぶ。
丁寧に手入れされている庭園の半ばに、その墓碑はあった。
「アリシア…」
墓碑に刻まれた文字は「アリシア・コンバティール」。
プレセアの身内には違いなかった。
「どうして、こんな姿に…」
「プレセア?なぜここに居るのだ」
声をかけてきたのは意外なことにリーガルだった。
「リーガル!あんたこそなぜ…」
「リーガル=ブライアン。レザレノカンパニー社の会長さんだからじゃねーの?」
「!!」
絶妙のタイミングでゼロスがその正体を暴いてみせた。
「どうりで会ったことがある気がしたんだよな。むかし王女の誕生祝で顔を合わしてたわ」
「忘れてたけどあんたも上流階級だったんだね」
しいなにあげ足を取られてもゼロスはどこ吹く風だ。
リーガルはゆっくりこちらに近づいてくると墓石へと視線を向けた。
「ここはアリシア=コンバティールの墓だ。それを知ってここへ来たのか?」
「リーガルさん、妹に何があったんです?教えてください」
「妹…やはりプレセアはアリシアの血縁者だったのだな」
それなら知る権利はあるだろう。
リーガルはしばし視線を伏せていたが、決めたように顔を上げてプレセアを見た。
「アリシアは殺された」
「!」
「そして彼女を殺したのは私だ」
突然の告白に目を見開くプレセア。
戒めを見せるようにリーガルは腕を軽く挙げ、続けた。
「私と彼女は愛し合っていた。けれどある日、密売人のヴァーリに彼女は連れて行かれ、エクスフィアの実験台にされた」
「プレセアだけじゃなく妹まで!?」
「そうだ。だが、アリシアには適合しなかった。体内のマナが暴走したアリシアは人の姿を失い…」
「やめてください」
プレセアが聞きたくないとばかりに頭を振った。
けれどリーガルの言葉は続いている。
ロイドの父親と一緒だった。
「暴走したアリシアを私が殺した」
「やめて!」
アリシアだけは、と思っていたのに自分と同じ目にあっているなど信じがたいことなのだろう。
プレセアが声を上げ、そしてあたりに沈黙が落ちた。
「この戒めはその時につけたもの…彼女の命を奪ったこの拳はもう、使うことがないように…」
リーガルの声はとうとうと告げ、そして今度は沈黙を破るものはいなかった。
* * *
残る精霊はテセアラに一体、シルヴァラントに三体。
結局のところ、どうするかといえばここで二手に別れることになった。
テセアラのシャドウ、シルヴァラントのイフリートにはしいなを筆頭としたテセアラ組が。
シルヴァラントのシルフ・ルナについては
が契約することとなった。
反対してみたところですでにウンディーネと契約してしまっているのだから無駄なこと。
そうして今はシルヴァラントの封印…バラクラフ王廟にやってきている。
「さぁ準備はいい?行くわよ!」
見たことのない三姉妹の姿でシルフが戦いを挑んでくる。
しかし、ロイドたちもレベルアップしており事なきを得ることができた。
「どうかしたの、浮かない顔して」
「いや、シルフって違うイメージがあったから」
そもそも精霊に固定された外見などあろうか。
苦笑しながらジーニアスに言い返すと、三女のシルフがついっとの前にやってきた。
「ふーん?例えばこんな?」
「!」
言うが早いかその姿は幼少の少年に変わっていた。
一同の驚き顔に満足したのかけたけたと三女であったそれは笑って見せた。
「元々私たちは精霊界に帰属するもの。そこに決まった姿なんてないんだよ」
いつのまにか消えてしまった長女と二女。
いうなればまさしく彼女らは「三位一体」であったのだろう。
今はこの少年の姿で「シルフ」という一体の精霊なのだ。
「だからこの現世界に現れるときは人の、あるいは獣のイメージを使う。こっちがよければこのままでいるけどどうする?」
あっけらかんと召喚主である
に聞いたシルフは、素直に頷く契約主の姿を見てもう一度笑った。
そして今はマナの守護塔にいる。
枯れたリンカの樹をユニコーンホーンの力で復活させ、アスカが現れるのを待ってのことだった。
アスカはルナ同様、相手が居なければ契約はしないという。
それで約束だけをとりつけ、ここへ来た次第だ。
守護塔ではイフリートと契約を済ませたしいなとも合流していた。
相対する精霊を開放し、残るはこの塔の楔のみ。
楔を引き抜けば何が起こるかはわからない。
それでもそれが最善と信じての選択だった。
「待て」
駆け上がったマナの守護塔で唐突に立ちはだかったのはクラトスだった。
「クラトス!邪魔をするな!」
「そうはいかん!今、デリスカーラーンのコアシステムが答えをはじき出した。
精霊と契約すれば大いなる実りの守護は完全に失われてしまう!」
守護は失われる?
それはこの世界にとってどれほどの意味を持つのか。
論じている場合ではなさそうだった。
いつにない慌てた様子でクラトスは片手を広げ、先へ行かせる意志のないことを示している。
「それこそ我らの願うところだ!」
ロイドたちの後ろからそうして現れたのは、ユアン。
ロイドたちを挟んでクルシスの二大天使は対峙することになる。
「わからないのか!お前の望む結果は得られん!」
「黙れ!この機会を逃がすと思うか!
ロイドよ、コイツの相手は私に任せろ」
けん制のように右手を突き出しマナを収束させるユアン。
「お前たちは一刻も早く光の精霊との契約を済ませるのだ!」
迷う暇はなくにらみ合っている二人の間をロイドたちは駆け抜ける。
残る精霊はルナとアスカ。
祭壇にて試練を受けるもなんとかしのいだその時、ルナはマナの守護塔の上空にてアスカと並び、尋ねてきた。
「あなたを認めましょう。さぁ誓いを立てなさい。私との契約に何を誓うのです」
「大いなる実りの発芽と二つの世界の真の再生を誓います」
「いいでしょう。私たちの力を契約者
に」
「やったか…」
「しまった!」
はっとして振り返ると追ってきたユアンとクラトスはそれぞれが正反対の表情を見せた。
安堵と焦燥。
クラトスの見せたその表情の意味はすぐに理解することになる。
突如、激しい震撼がマナの守護塔を襲った。
マナ、だろう。祭壇からいつかアスカードの石舞台で見たのと同じ光が溢れ、舞う。
その量は石舞台の比ではなかった。
かと思えば一点に収束すると天に向かって光の柱が一瞬にして貫き瞬いた。
幾度か消滅すると消え去る。
しかし、今度は森が動き始めてる。
眼下の森が突如、割れたかと思うとそこから現れたのは巨大な植物の根。
ここからみえるべくもないがこの地震と、それによって起こる津波。
そして「大樹」の暴走によりパルマコスタは崩壊した。
救いの塔より伸びる根は大地を切り裂き、震撼をもたらし、マナの守護塔をも巻き込んだその頃、ようやく暴走を止めた。
破壊の到来は一瞬のことだった。
と、今度はゆるゆると地震とは異なるリズムで大地が揺れ、一行は救いの塔が消え、とって代わるように大樹が出現するのをまのあたりにした。
遠すぎてよく見えないが何か光を抱いている。
コレットがそこに見えるのは女性だと言った。
根を伸ばした大樹はあっというまに冬枯れのような枝葉を伸ばし、そこに「樹」としての姿をあらわす。
「一体何がおきたんだ!」
ロイドが叫んだ。
「めちゃくちゃじゃねぇか…」
「ねぇ、あれが…大樹カーラーンなの?」
不安そうなジーニアスの声。
「誰だろう。どこかで…会ったような…」
仲間たちの間において唯一女性を目視できているであろうコレットが呟いた。
「まさか…マーテル!?」
「マーテル?あの木に取り込まれようとしている女性が?」
「誰かに…似てる、あれは確か…」
「なぜマーテルがあのようにグロテスクな大樹と復活するのだ!」
ユアンが苦々しげに拳を固め、大樹の出現とともに消えた救いの塔の方を見た。
「やはりこうなってしまったか…」
「どういうことだ!」
「大いなる実りが精霊の守護と言う安定を失い暴走したのだ」
クラトスは諦めにも似た焦燥ももはやない、いつものトーンで淡々と告げる。
「そんな馬鹿な…!精霊は大いなる実りを外部から遮断し成長させないための手段ではなかったのか?」
「それだけではない。二つの世界はユグドラシルによって強引に位相をずらされた。
本来なら互いに分離して時空の狭間へ飲み込まれてしまうのだが
二つの世界の中心に大いなる実りが存在しているからこそそれは回避されている」
「そんなことは貴様の講釈を受けなくてもわかっている!」
「大いなる実りは離れようとする二つの世界に吸引されどちらかの位相に引きずり込まれようとしている。
ゆえにいつ暴走してもおかしくない不安定な状態にあった」
「待て、それでは精霊の楔は大いなる実りを二つの世界の狭間にとどまらせるための檻として機能していた。そういうことか」
唖然とするロイドたちを尻目にクラトスとユアンは問答を続けている。
答えているのは主にクラトスだった。
「その通りだ。安定を失った大いなる実りにおまえたちがマナを照射した
結果、それはゆがんだ形で発芽し暴走している…
融合しかかったマーテルをも飲み込んでな」
「理屈はどうでもいい!このままだと、どうなるんだ!」
ようやく我に返ったようにロイドが拳とともに声をあげる。
ユアンは視線だけでそちらをみると忌々しそうに表情を歪めた。
「…クラトスの言葉が事実ならシルヴァラントは、暴走した大樹に飲み込まれ、消滅する。
シルヴァラントが消滅すれば聖地カーラーンと異界の扉の二極で隣接するテセアラもまた消滅する」
「…みんな…死ぬんですね」
場違いなほどあっさりとけれど彼女自身は万感を込めたであろう。プレセアが呟いた。
「あのゆがんだ大樹とデリス・カーラーンに住む天使以外はな」
「…何とかしないと!」
「何とかって、どうするんだい!」
「ユアン。きさまは…この始末どうつけるつもりなのだ?」
リーガルが珍しく怒りのような韻を込めてユアンを睨めつけた。
何も考えていなかったといえばこちらも同罪だが、唯一手を持っているとすればそれもユアンの側である。
しかし期待に答えられるだけの策は持ち合わせていないのか、彼は黙って首を振る。。
「…マナの流れを切り替えて照射を止めることはできる」
「しかしそれではあの大樹をおさめることはできない。サイは投げられたのだ
」
「テセアラでも、あの大樹は同じように暴走しているのか? 」
ゼロスが訊いた。
「いや、それはなかろう。
影響を受けて地震程度は起きているだろうが…」
再生の儀式によってシルヴァラントの精霊が活性化しているのだ。
だからシルヴァラントの精霊に引きずられて、こちらで大樹が暴走している、ということは想像できた。
それを疑問として投げかけるとクラトスはひとつ頷いた。
「それは正しい。
精霊たちはそれぞれ陰と陽の二つの役割を神子の世界再生によって交代でうけもっている。
現在、陽であるマナの供給を担当しているのがシルヴァラントの精霊だ。
だからこそ、大樹はマナの過摂取で暴走しているのだろう」
「…相反するもう一方の精霊の力をぶつけたらどうなる?」
ジューダスが短い沈黙を破って言った。
「…ジ、ジューダス!?意味わかってる?」
「わからないで言えることか」
ふたつの性質を持つものは往々にしてぶつかりあえば中和される。
シルヴァラントの精霊の力にひきずられて暴走しているのならテセアラの精霊をぶつける。
少々荒業だが、間違ってはいないだろう。
「ジューダス!あなたは冴えてるわ」
リフィル先生からもお墨付きが出た。
しかししいなは不安そうに声を上げた。
「仮にテセアラ側の精霊をぶつけるとしてどうやってぶつけるんだい?
あんな風に暴れてる大樹の足もとまでは近寄れないよ」
「…魔導砲だ」
「魔導砲って、あのロディルが作っていたという機械ですか」
ユアンが頷く。
腕を組みなおして先を続けた。
「あれは元々我々がロディルを利用して作らせていたものだ。
精霊の守護がとける前はロディルに救いの塔を破壊させて直接種子に近づくつもりだった」
「魔導砲にテセアラの精霊のマナを込めて、大樹に向かって放つ…ということか。
たしかにそれ以外方法はなさそうだな」
クラトスがついに同意した。
「まずは現状のマナの照射を止めなくては。
マナの照射が続けば大樹はますます成長して中和どころのさわぎではないわ」
「ではこうすればいい
ユアンよ。貴様がどこに所属し何をしているのか私は見なかったことにする。
だから今すぐにレネゲードへ指示を出しマナの照射を止めろ。
ロイドたちは魔導砲へ向かえばいい」
「…よかろう」
いがみ合っている場合ではないと気づいたなら判断は素早かった。
そこへレネゲードの兵士が駆け込んできた。
「無理です!
イセリア牧場に潜入した同志はフォシテスによって処刑されました!」
「どういうことだ?」
「…イセリア牧場はまだ機能している。
内通者にマナ照射の切り替えをさせていたのだ」
「ようするに、今から侵入して照射を止めなくちゃならねぇってこったな」
「 …では私が行こう」
意外なことに挙手をしたのはクラトスだった。
「貴公が?」
リーガルが訝しがる。クラトス自らがレネゲードを黙認し、動くとはそれほど事態は深刻だということか。
「敵対する貴公一人を行かせるというのか?」
「我らの同志を向かわせる」
「魔導砲の準備。各地の魔導炉の停止。
…レネゲードにはやってもらわねばならないことが多い。余計な手勢をさくな」
ユアンの言葉も止め、クラトスは羽を出現させた。いましも行動に移ろうというところなのだろう。
「俺が行く」
しかし次に手を挙げたのはロイドだった。
「何言ってんだい!こっちは魔導砲へ向かわないと」
「しいなとレネゲードで魔導砲にむかってもらう。
俺たちと…クラトスでイセリア牧場へ潜入する。
しいなは俺たちの指示で魔導砲を撃て」
誰もがどうするか、という沈黙が降りた。それも一瞬であったが。
「しいなだってクラトスからの指示だけを信用はできないだろ」
「…そいつはどうだけど…」
「…ショコラか?」
「!」
クラトスから出ると思わなかったその名前。そう、ショコラはイセリア牧場に連れて行かれたのだ。
「ロイド…ちゃんと約束覚えてたんだね」
コレットが胸の前で手を組んで微笑んだ。
「わかった。おまえたちに任せる。後はたのんだぞ」
今にして思えば共同戦線と言うのも妙な関係だ。
しかしこうしてロイドたちはしいなを残し、イセリア牧場へと向かうことになった。
クラトスもともに……。
「どうして私を同行させたのだ?おまえたちが魔導炉を停止させるなら私は必要ないだろう
」
そう口火を切ったのはほかでもないクラトスだった。
眼前には牧場の鉄柵がそびえている。ロイドたちにしてみれば久々に訪れた故郷のような村のほど近くだった。
「クルシスは信用ならないからだ。たまたま今回俺たちもレネゲードもあんたも利害は一致したけれどいつどうなるのかわからないからな
監視しておくには近くにいた方がいい」
ロイドにしては慎重なことだ。リフィルもその意見を支持していた。
「なるほど。懸命な考えだ」
閉まった門を見上げてジーニアスはロイドたちとの間に視線を往復させた。
クラトスの背に羽が煌く。
どうやって潜入するのかと聞くより先に彼は門の向こうに飛んでいった。
「便利だね…」
「うまくいきすぎて怖いよ」
そんな会話を交わしながら正面からイセリア牧場へ乗り込んだ。
イセリアとは協定を交わしているせいかセキュリティに甘いらしく正面をきった割に襲ってくるディザイアンも居なかった。
「…魔導炉はここだね」
リフィルがメインコンピュータにアクセスして場所を導きだす。
ホログラムを見ながらジーニアスは首をかしげた。
「牧場を破壊しちゃえばいいんじゃない?」
「それをするなら収容されてる人を助けないと」
「今回は時間がないわ。魔導炉のみを破壊か停止させてその間にショコラたちを救出しましょう」
人々を捕らえているケージは幸い、魔導炉に行く途中にあった。
うまくやれば同時に救出もできるかもしれないがやはり時間が足りないと二手に分かれることになった。
とはいえ余計な戦力を救出班のみに割くわけにはいかず、ジーニアス、コレットには人々の誘導に当たってもらい残りは奥まで進むことになった。
魔導炉の前にやってくると人影が行く手をふさぐ。
「そうはいかない」
見たことがないハーフエルフだった。
ハーフエルフとわかるのは他のディザイアンと異なり顔を隠していなかったからだ。
ということは幹部クラスであろう。その名前はロイドにより明らかになった。
「…おまえは…フォシテス!」
「ほう。私のことを覚えていたか。やはりイセリアでおまえを逃したのは失敗だったな。この始末私自身の手でつけてみせる」
明るい青い髪からかけられた眼帯は歴戦を物語っていた。
左手はどうなっているのか大砲のようなつくりの武器に覆われていた。
「…おまえがフォシテスか。死を望むのならそのまま立っているがいい」
「人間風情が大口を叩くな。死ぬのは貴様だ。この汚れた大地とともにな」
「…大地が消滅してもデリス・カーラーンがあるとそう考えているのなら…甘いな」
クラトスが暗い彩を瞳に落とす。
「…何だと」
いかにディザイアンといえ、四大天使は知らないのだろう。
彼はクラトスとは面識がないようだった。
「ユグドラシルが捨て駒のディザイアンなど救うものか」
「だ…だまれ!ユグドラシルさまを侮辱するな!」
そこにあるのはまっすぐな忠誠。
それを感じてしまうとやり辛くなってしまう。
彼らは彼らなりの理想に準じて動いているのだ。
フォシテスは誇らしいように両腕を広げて演説を続けた。
「我らにはデリス・カーラーンがある。全ての命の源、マナそのものの大地がな!
人間によって汚された大地など滅びたところで何の問題もありはしない」
「何故そのようにあっさりと大地を捨てられる?
ここは…生命の源ではないのか?」
リーガルが苦々しく呟いた。
彼にしても理解のできない思考である。
「生命の源はマナだ。そしてユグドラシルさまはデリス・カーラーンを新たな大地としておられるのだ
」
「…マーテルが大いなる実りと融合しているからか…
そこまでしてマーテルを護るというのか、あれは…! 」
「…おまえは何者だ?
ユグドラシルさまをあれなどと…!」
「いつまでもしゃべってる暇はないよ、ロイド!」
「 わかってる!」
に急かされてロイドは双剣を抜いた。
「おまえたちの好きにはさせん」
フォシテスの左手がロイドに狙いを定める。
同時に砲門から光が放たれた。
「くっ」
間一髪交わしたロイドがそのまま激しい突きを繰り出した。
「散沙雨!」
「……遅い!魔人、千裂衝!」
足を止めたところでジューダスの技が炸裂した。
続けとばかりにクラトスが、そして
の晶術がフォシテスに追撃を許さない。
「劣悪種ごときに…なぜ…」
猛攻を受けたフォシテスは胸を押さえるようにふらりとよろめき、そのまま吹き抜けの上部に位置するこの部屋から足を踏み外し、落下をはじめた。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!! 」
どれほどの深さだったのだろう。
断末魔が遠くなる。
それが聞こえなくなってから一同はコントロールパネルの側に移動した。
「…何がなんだかさっぱりわかんねぇな」
「クラトスさん、わかります?」
「あぁ、私がやろう」
クラトスは
に答えてロイドをどかすとパネルの操作を始めた。
「…あんた何でもできるんだな。
剣も魔法も機械の操作も」
「人より、少々長生きなのでな」
「長生き?やっぱりあんたもハーフエルフなのか?」
どこかすっとんきょうなことを聞くロイド。
だとしたらリフィルやジーニアスにもわかっていたろうに。
彼は生粋の人間だ。
少なくとも今まで関わってきた中から見るに。
「私のことより今は大樹の暴走を止めるのが先だ」
「あ、ああ…」
コントロールパネルをたたくクラトスの手は止まり、やがて魔導炉が停止するサインを出してビープ音が響いた。
