−47.ドロップアウト
「駄目だふさがれてる」
救いの塔にやってきたロイドたちが目にしたのは入り口にたむろう天使たちだった。
さすがに殴りこみとはいえ正面から乗り込むつもりはないのにはほっとした。
一方で宣言した勢いはどこへやら、潜入を目指して一行は辺りをうかがう。
「このままでは退路もふさがれてしまうわ」
「また来るよ!」
気配を察して振り返ったのはしいな。
しかしそこに天使の姿は無く、現れたのはユアンであった。
「ロイド、こっちだ」
「行こう、ロイド」
一瞬渋りはしたが、
に促されて階下へ戻る。
ユアンは振り返ることなく先導していたが、やがてほの暗い通路へと入るとようやく足を止めた。
「どうして俺たちに協力してくれるんだ」
「ユグドラシル…に正体を知られた今
もはやマーテルを救う手段はお前に力を貸すことしかないからだ」
馴れ合っている場合ではない。
警戒するようにそう付け加えてユアンは視線だけで辺りを見渡す。
「ひねくれた奴だな。まあいいや。
協力してくれてありがとう。行こうぜ、みんな!」
案内を離れてねじれた木の根の交差する通路の先に、行き着いたのはエターナルソードの前だった。
天使の姿はない。
「ここは俺に任せとけ」
ゼロスがおもむろにエターナルソードに向かって駆け出した。
「任せとけってどうするんだよ」
「こんなこともあろうかと前にここへ来た時ちょっと細工をしておいたんだ」
確かめるように剣を見て、振り返る。
「コレット、ちょっとこっちに来て」
「え?うん」
「
ちゃんも」
言われるままにエターナルソードの前まで移動するコレットと。
首を傾げるその頭上に影が落ちたのはその時だった。
天使が現れたのだ。
途端、
を後ろから首を絞められる形で捕縛するゼロス。
「ご苦労じゃったな、神子ゼロスよ。
さぁコレットをこちらに」
「はいよ」
プロネーマが現れ、魔法陣がコレットの足元に浮かんだかと思うとコレットの姿が消える。次の瞬間彼女の姿はプロネーマと天使たちの集う中央に移動していた。
「ゼロス?!」
「あんた、何するんだよ!」
「うるせーなー
寄らば大樹の陰ってしらねーのか?」
煙たそうにゼロス。
を抑える腕に力は入っていなかったが逃れることは出来ないだろう。力を入れていないのはいつでも締められるからだ。
ゼロスは皮肉げな笑みを浮かべてロイドたちを再び見やった。
「お前らのしてることは無駄なんだよ。
いいじゃねぇか、コレットちゃんだって生贄になりたがってただろ」
「だったら
はどうなんだい!」
「あ?
ちゃん?
ちゃんはエルフでもないのに魔法使えるだろ?幹部様方の興味をひいちゃってなぁ」
「ゼロス!裏切るのか!」
「よくいうぜ
俺のことなんざはなっから信用していなかったくせによ」
「どうしてだ!仲間じゃないか!」
「仲間…ねぇ…最後の最後に信じてもらえなかったけどな」
「それは…」
フラノールを出る際の時のことだ。
は思う。
ロイドは確かに彼に対して猜疑的だった。それもいつもののりだったにすぎない。しかしそれがどれほどゼロスのプライドを傷つけていたことだろう。
「いいってことよ。まぁ実際俺はお前たちをだましていたわけだし」
「何かほかに訳があるんじゃないのか?これもまた、冗談なんだろ」
「参ったね俺はただの半端ものなのよ。
楽しく暮らせりゃそれでいい。ただ…それだけだ」
わずかに落ちた沈黙を埋めるようにプロネーマが声を上げる。この広い空間に艶のある声は思いのほか響いてロイドたちの耳に届いていた。
「裏切るとは笑止
ゼロスは最初からわらわたちの密偵としてお前たちの仲間になったのじゃ
のう、ゼロス?」
「本当なのか!」
「うそでしょう?うそだよね、そうだよね?」
コレットが段上で叫ぶ。しかし残念ながら返ってくるのは否定の言葉ばかりだった。
「俺様は強い者の味方だ」
首に巻かれた腕に僅かに力が入る。
緊張が伝わってくる。
「レネゲートとクルシスとお前ら、はかりにかけさせてもらったぜ」
「レネゲードにまで情報を流してたのか!あんたって奴は…!
いい加減だけどいいところもあるって思ってたのに…」
「お褒めの言葉あ〜り〜が〜と〜」
ふっと笑う気配があって再び指先から力が緩んだ。
からその表情は見えないが触れている腕だけが彼の一挙手一同を伝えていた。
「結局、マナの神子から解放してくれるってミトス様が約束してくれたんでこっちにつくことにしたわ」
「神子がそんなにも嫌か、仲間を売るほどに」
「あぁ、嫌だね。その肩書きのおかげでろくな人生じゃなかったんだ。
たまんねーよ、ホント。セレスに神子を譲れてせいせいだぜ」
「うそだ!俺はお前を信じるからな!信じていいって言ったのはお前なんだぞ」
「ばっかじゃねーの」
はっと嘲笑するとゼロスは体ごと段上を振り仰ぐ。
「それよりそろそろ行きましょうよ。プロネーマ様v」
「ロイド、ロイド…ロイドー!!」
コレットの叫びだけを残して、緑の光りとともにゼロスたちの姿は消えた。
「なんであいつが…」
「ぶつくさ言っていてもしょうがないだろ。今は先に進むことを考えよう」
しいなに促されてロイドは先を急いだ。
そこでたどり着いたのはホール。
円筒状の高い天井、
見上げると無数の天使が羽ばたいていた。
「くそっこれじゃキリがねぇよ」
襲い掛かってきた天使を切り捨てるとロイドが毒づく、散った翼は雪のように優雅に辺りに舞って次の天使の飛来を予感させた。
「今のうちに奥の通路まで走れ!」
「わかった!」
扉のない通路を抜ける。
途端に扉の両脇を支えていた柱が瓦解した。
リーガルが自ら蹴り倒したのだ。
ロイドが驚いて振り返る。
わずかに開いた瓦礫の隙間から見えたのは、背を向けて立ちふさがるその姿だった。
「ここは引き受けた。早く行け」
「何言ってんだよ、そんなことできるわけないだろ!
「わかっているはずだ。今は一刻を争う
コレットたちを救えるのはお前しかいない」
「わかってるよ!でも仲間を犠牲にして先に行くなんて…」
それは全員が同じ気持ちだ。
誰も先に進もうとせずにロイドとジーニアスの言葉に耳を傾けている。
「それは違う。私はかつて大切な人を守ることが出来なかった。
だから今度こそ守りたい。大切な仲間を」
「リーガル…」
「コレットを守ってやってくれ」
「わかった」
土台この状況では瓦礫を取り除くのは無理だ。
渋々ロイドはきびすを返した。
「リーガル死ぬなよ。あんたと同じ苦しみを背負うのは俺は嫌だからな」
「ふっ難しいことを言う」
足音が遠ざかっていく。
舞い散る羽を見つめながらリーガルは呟いた。
「すまん、アリシア。お前のところに行くのはまだまだ先になりそうだ…」
そこは根の張り巡らされた部屋だった。
意志があるように、行く手につきささる。
その親は中央に立ちふさがる巨大な切り株のような樹木だった。
「こいつ、邪魔だ!」
苛立ったように薙ごうとするロイドを制してしいなはその枯れ果てた大樹の麓のような姿を見上げた。
「こいつは…あの時の生き残りみたいだね」
「あの時!?まさか大樹の…」
「この感じ、間違いないね」
しいなは一歩前に進む。
「ここはあたしの出番ってことさ。あんたはさがってな」
そして召喚のための詠唱を始めた。
「青ざめし永久氷結の使徒よ
威き神が振るう紫電の槌よ
気高き母なる大地の僕よ
大いなる暗黒のふちよりいでし者よ」
生き物のように中空にうごめく梢の合間に精霊が現れる。
「契約者の名において命ず
我が前に連なり陰の力と化せ!」
「どうするつもりなの?」
リフィルが蠢く枝枝に警戒しながら聞いた。
「魔道砲の真似事さ。ま、威力はかなり落ちるけどこいつには十分だよ。
あたしが合図したらこいつの下を走り抜けるんだ。いいね」
「わ、わかった。でもおまえは大丈夫なのか?」
「心配要らないって、じゃあいくよ!」
掛け声とともにしいなは精霊の力を結集させる。
掌に光りが集って、それは確かに魔道砲のように一直線に大樹の名残へと直撃した。
「今だ!」
気合とともに陰の力を束ねてぶつける。
轟音とともに大樹の残骸は朽ち、抜けた床にあいた暗闇に消えていった。
「しいな!大丈夫か!」
「あぁなんとかね」
開いた穴の反対側に姿を現すしいな。
肩で息をしているところを見るとかなりマナを消耗しただろう。
それでも口の端をつりあげてこちらを見返していた。
「すげーな今の!」
「言っとくけどアレをもう一回遣れってのはなしだよ」
やれやれとばかりに掌を天井に向けて押し上げる。
「おかげでマナが空っぽさ。ちょっと休ませてもらっ…」
きゃあ!!
突如として悲鳴が響いた。
しいなの足を暗い穴から伸びた木の枝が捉えていた。
あっというまにしいなは穴に引きずり込まれ、次の瞬間には辛うじて壁にぶらさがって持ちこたえる形になっていた。
「しいな、待ってろ!今たすけて…」
「ぷっはははは」
何を思ったのかしいなの笑い声が暗い部屋に響いた。
「な、なんだよ。笑い事じゃないだろ!」
「いや、思い出したんだよ」
呆気に取られる仲間たちを穴の向こうから見上げてしいなは笑う。
「あんたたちと始めて会った時のこと。
あたしってよっぽど落とし穴に縁があるのかねぇ」
「いいからじっとしてろ!今そっちに行くから」
「余計なお世話だよ、あんたは早くコレットを助けに行きな」
「強がっている場合じゃないよ〜!」
ジーニアスが拳を作って叫んだ。
「強がりじゃないさ。
あの時だってそうだったろ?あたしは地の底から這い上がってあんたたちと戦った
今度だってメインイベントまでには必ず間に合ってみせるよ」
「本当だな」
何かを決めたようにロイド。
時間はあまりない。
「絶対さ、あたしの見せ場のこしといてくれよ?」
「わかった…待ってるからな」
「いいの!?ロイド」
「しいながああ言ってくれてるんだ。…行こう」
振り返らないでロイドは駆け出し、仲間たちもそれに続く。
「あたしってバカだねぇ
最後まで意地っ張りで…」
その足音が遠ざかると、力が抜けたようにしいなは自ら手を離してしまう。
その姿は暗い奈落の底に落ちていった。
巨大な岩の壁が行く手を塞いでいた。
焦燥する気持ちでロイドは岩壁を叩く。
しかし分厚い壁はビクともする様子はない。
「くそっ開けよ」
「どうやらこれを操作するみたいね。ここは私に任せて」
リフィルが部屋の中央にある操作盤に気づいて歩み寄った。
「先生、早く!」
「せかさないで…これね」
意外なほどすんなりと隔壁が一枚開いた。
しかし、その向こうにはまだ立ちふさがる壁がある。
その時、立っていられないほどの震撼がフロアを襲った。
「きゃあっ」
耐えかねたリフィルの姿が機器の向こうに消える。
どうやら転んでしまったらしい。
「いたた… !」
「姉さん、大丈夫!?」
「来ないで!」
「えっ」
「なんでもありません、ちょっとした操作ミスです」
機器の向こうでまた向き合ってリフィルは操作を始めたようだった。
「…」
ジューダスはロイドの後ろで黙ってその様子をみつめている。
リフィルの口調から、ある種の予感を覚えていたのだろう。
それでも何も言わなかった。
「しっかりしてくれよ」
「もう大丈夫です。次の扉を開けるわよ」
今度はななめに隔壁がスライドする。
更にもう一枚の壁。
「手の込んだ仕掛けね…次、開けるわよ」
「またか!」
今度は震撼はやってこなかったが扉が開くと同時に鈍い振動が音となって伝わっていた。
扉が開く。
一枚、また一枚と。
そして最後の扉が開くと向こう側に光りが見えた。
「先生、もういいよはやくこっちへ…先生!」
再び震撼がフロアを襲う。明らかにいままでの揺れとは違っていた。
天井がはがれて落ちる。
立っていられないほどの揺れ。
「ロイドこの部屋はもうすぐ崩れ落ちるわ。早く行きなさい」
中央と出口とをつないでいた床は崩れ、リフィルのいた場所は既に孤立してしまっている。
助けに行くことも出来ずにロイドたちは地団駄を踏んだ。
「姉さん!」
「先生を置いていけるわけないじゃないか!俺はもう誰にも犠牲になんてなって欲しくないんだよ!」
「犠牲?いつ誰が犠牲になんてなったのかしら?」
なぜか返ってきたのは苦笑。
その様子には後悔と言うものは微塵も感じられなかった。
「私はあなたの理想を信じた。
私たち狭間のものでもあるがままに受け入れてくれる。
そんな世界を作ると言うあなたの理想を信じたのよ」
天井が轟音とともに再び欠けて落ちる。
「それは私にとっての希望。その実現のために私はここまで来たんですもの
悔いはないわ」
「世界を救うことが出来たって先生が死んだら何にもならないだろ!」
「あなたの理想が息づく世界で私の心は生き続けるわ
でもあなたの理想が費えたらそれは私の希望が死ぬとき
希望を失って生き続けるのは死ぬより辛いことではなくて?」
「そんなの…わからないよ!」
「わからないのなら人が生きると言うことがどういうことなのか
これからの人生で学び取りなさい」
一際の大きな揺れにリフィルはよろめいて膝をついた。
しかし上げた顔には笑顔が彩っていた。
「それがあなたの先生としての最後の教えです
さぁ、もう行きなさい。先生の言うことは聞くものよ」
部屋はもう耐えられない。
ジューダスは黙ってロイドの腕を引く。
後ろ髪を惹かれる思いで彼は再び走り出した。
「後は頼んだわよ。私の可愛い生徒…」
轟音は、鳴り止まなかった。
「中からロックされてる。
駄目だ、あかない」
またか、とばかりに苛立つロイドから舌打ちがもれた。
先を塞ぐ扉は大きくない。けれど素材も知れぬそれは頑健で、剣では到底破壊できそうにもなかった。
「あそこから部屋の中には入れるかもしれません。やってみます」
「あっプレセア」
僕が行く、と言うより前にプレセアは頭を通風孔に突っ込んでいた。
あっというまにその体が穴の奥に消える。
それからやや間があって
「きゃあ!」
扉の向こうから悲鳴が聞こえた。
「プレセア!」
「来ちゃ…駄目です。早く、いってください」
開いた扉を駆け抜けるとそこには軋む斧に支えられた天井。
それは通路をふさぐようにもうわずかなところで床に着こうとしていた。
プレセアはといえば、どこから入り込んだのかわからない大樹の根にからまれていた。
辛うじて踏みとどまってはいるが、引き込もうとする力が強いのかじりじりと後退を余儀なくされている。
「できないよ、俺は…俺は…」
「ロイドさんは優しい人です
でも優しさに惑わされて判断を誤るなら…ただの甘い人です。
あなたにはやるべきことがあるはずです。それを忘れないで下さい
行って下さい。
でないと私、あなたのことを軽蔑…します」
「馬鹿か、お前ら!」
ジューダスがシャルティエを振りかざして根に突き立てた。
悲鳴のような軋みを上げて蠢くが思ったより硬く一度で断ち切ることは出来なかった。
「話す暇があったら根を断ち切れ!」
「駄目です!ジューダスさん」
斧の柄が軋む音が無常にも大きく響いた。
引き際は心得ている。
ジューダスから舌打ちがもれた。
「ロイド!」
「俺は…」
「ロイドさん、どんなことがあっても負けちゃ駄目です。
逃げないで、戦ってください。
あなたなら…できるはずです」
「畜生!」
辛うじて3人が潜り抜けるまで斧はもってくれた。
閉ざされてしまった通路を拳で強く叩いても、その向こうからは何の音も漏れては来なかった。
「やれやれ、いい加減にして欲しいものだな」
「何、悠長に構えてんだよ!なんとか脱出しないと」
遂にジーニアス、ジューダスと3人きりになってしまったロイド。
またといわんばかりのジューダスに焦った声を飛ばす。
水面のようにうねる壁が前方を塞いでいた。
「こっちに来るよ!」
「やべぇ、逃げろ!」
一時は退却しても気づいた時には遅い。
四方は壁に挟まれていた。
「こうなったら俺たち三人で同時に攻撃してあの壁をぶち抜くぞ」
「そんなことできるの?」
「ドワーフの誓い第16番
成せばなる!
どうせ失敗したらあの世行きだ全力で行くぞ!」
「あはは、ロイドらしいや。いいよ、やろう!」
ジーニアスもようやくやる気になって前方の壁に向かい合った。
「いちにのさんでいくぞ」
「ロイド」
「なんだよ」
「ううん、なんでもない。ボクの方は準備完了だよ」
「よし、いちにの」
「「さん!」」
ジーニアスの魔法とロイド、ジューダスの魔人剣が透明な壁に穴を穿つ。
「今だ!」
「ほら見ろ、うまくいっただろ?」
自己修復機能があるのかうねるように閉じた穴を抜けてロイドは振り返り驚愕とした。
「ロイドの作戦にしては上出来だったよ。
唯一の誤算はボクの運動神経の鈍さかな」
「ジーニアス!」
「へへっ失敗しちゃった」
ジーニアスは未だ壁の向こう側だ。
精も根も尽きたようにへたりと座り込んでしまう。
「お前、俺を逃がすために…?」
「ち、ちがうよ」
「うそだ!こうなるとわかっていたんだな!?だったらなんで!」
「ロイドだって立場が逆なら同じことをしたんじゃない?
いつだって困ってる人を見ると放っておけなくてさ
後先考えずに飛び出しちゃって」
へへ、とジーニアスは笑った。
「でもそんなロイドがボクの憧れだった。
ボクもロイドみたいになりたかった」
「お前…」
「さぁ早く行ってよ。手遅れにならないうちにさ」
「ふざけるな!お前を置いていけるかよ!そうだ、もう一度三人で…」
「行ってったら!ボクは…ロイドと違って臆病なんだ
いざとなったら体が震えてきちゃって…
最後にかっこ悪いところ見せたくないんだ」
愕然とするロイド。
ジーニアスはもう顔も上げずに拒絶するように腕を降りぬいた。
「行けよ、行けったら!!」
「バ、馬鹿野郎!!」
壁がじりじりとジーニアスに迫っていく。
二人がその後、どうなったかを知る由はなかった。
「何が…誰も犠牲にしたくないだ。くそ!みんな…ごめんな」
「とんだ茶番だな」
「!ジューダス!言うにことかいて何を言いやがる!!」
八つ当たりだ。
ロイドはジューダスの襟をつかんでひねり上げる。
勢いついてジューダスは背中を壁に打ち付けた。
「茶番だといったんだ。どいつもこいつも命を簡単に捨てすぎる」
「お前っ」
しかし。
間近で気づいたのだろう。
彼は怒っているようだった。
感情の波を見せないジューダスが、だ。
まっすぐに見返す瞳には確かに確固とした意志と怒りが浮かんでいた。
「…お前、怒って…?」
「ロイド、お前も簡単に諦めすぎる。あいつがいたら何人かは救えていたぞ」
「あいつって…」
のことだろう。
力の抜けた腕から逃れてジューダスは乱れた襟を正した。
「いいか、ロイド。僕は命を簡単に捨てたりしない。例え仲間を逃すためでも、だ」
「ジューダス…」
それはつまり、ロイドを一人にはしないと言うことだ。
何があっても諦めないと言うこと。
それは仲間たちを失ってきたロイドには何よりも心強いことだった。
「へへっ」
「なんだ」
「なんでもねー」
ロイドの様子に眉を寄せるジューダス。
それでも先に歩き出したロイドについて再び彼らは歩き出した。
「ありがとな」
